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197. 暴食の籠手

 遂にこの時が来た……盾、体術、隠密のスキル70。つまり、技巧師に成る為の条件の1つ目をクリアしたのだ。

 掛かった期間は12日間で、これは今の私の総スキル数で考えるとかなり速いペースだ。けれどそれは、残された時間が分からない身からすると、少し焦ってしまう期間だった。


 ――よし! 早速、技巧師のパッシブバフを手に入れる為の試験を受けに行こう!


 技巧師のパッシブバフを手に入れる為には盾、体術、隠密の3つのスキルを70まで上げて、その後に『阿吽道場』というダンジョンで技巧師専用の試練を受けてクリアする必要がある。

 業血の合戦場でスキル上げをしていた私はすぐに阿吽道場へと向かおうとしたが、そこで盾スキルが70に成ったらルビィさんから新しい盾装備を受け取る事になっていたのを思い出す。

 私は今、様々な成長促進バフによってスキルが上がりやすくなっていて、スキル適正値の盾を一々買っていたら大変なので初心者用の木の丸盾を使い続けていたのだ。

 なので、私はまずルビィさんにメールで連絡して、お店へと向かった。


「ナツ、いらっしゃい! 盾の用意は出来てるわよ♪」


 ――あぁ、フルスロットル状態のルビィさんだ……。と言う事は、今から出て来る盾は普通の盾じゃないんだろうな~。


 ルビィさんは普段、クールでちょっとボーイッシュな頼れるお姉さんという感じなのだが、時々こういうフルスロットル状態になり、何処からともなく奇抜な装備が飛び出してくるのだ。

 

「はい、これが私渾身の力作『暴食の籠手』よ!」

「籠手?」

「そう、籠手。でも装備カテゴリ的には盾に分類される物で、これでも盾の技能は問題なく発動するわ」


 それは黒い金属製のちょっと厳つい見た目の籠手だった。手の甲の部分には、濃い紫色の光を灯す丸い水晶の様な物が取り付けられている。

 籠手型の盾なんて物があるのかと一瞬驚いたけれど、ミシャさんと初めて会った日に訓練場で模擬戦をした時、ミシャさんが籠手で私の攻撃を弾いていた事を思い出した。


「普通の盾が来ると思ってたのでちょっとビックリしましたけど、籠手の形でも盾技能が使えるんですね。でも、私グローブを既に装備してるんですが、こっちは外さないと駄目ですか?」

「いや、これはあくまで盾装備であって手用の装備じゃないから両方着ける事が出来るわ。……そして、この『暴食の籠手』にはある特殊な効果が付いているのよ。と言う事で、早速着けてみて!」


 ルビィさんに急かされながら、私はその籠手を左腕に装備する。

 最初見た時は金属製で少し重そうだなと思っていたけれど、着けてみると意外と軽く、これなら普段装備していても全く戦闘に支障は無さそうだった。

 今までは盾を使う時だけ丸盾をインベントリから出して装備していたので、それが少々手間だったのだ。


「うん、やっぱりナツにピッタリね! ……それじゃあ、今からダンジョンに向かいましょうか!」

「……え?」


 ……

 

 …………


 ………………


「お、丁度良いスケルトン発見! さぁ、ナツ。バシバシとパリィしちゃって!」

「は、はい!」


 フルスロットルなルビィさんに押されて、グレートソードを持つスケルトンウォリアーの前に出る。

 スケルトンウォリアーはレベル40前後で機動力も低く、はっきり言うとかなり弱いモンスターだ。けれど、大振りで攻撃モーションが分かりやすいので、最初のパリィ練習にはもってこいな相手だったりする。


 敵として私を視認したスケルトンウォリアーは、その手に持つ大きなグレートソードを構えて攻撃してきた。今まで業血の合戦場に居る攻撃速度のそこそこ速いモンスターや、高い機動力を誇る悪鬼を相手にしてきた為、そのスケルトンウォリアーの攻撃がえらくのんびりした物に見てた。


「シールドバッシュ! ……ふぇっ!?」

 

 私はスケルトンウォリアーの攻撃をしっかりと見極め、タイミングを合わせて盾技能であるシールドバッシュで迎え撃った。

 シールドバッシュのタイミングはバッチリで、パキィンという小気味良い音がパリィ成功を私に告げる。……それと同時に、手の甲に付いている水晶の輝きが増し、私のHPに(+20)という謎の数値が表示された。


「ふっふっふ、驚いた? それがその籠手の持つ特殊効果。パリィが成功すると物理攻撃の場合はHPを、魔法攻撃の場合はMPをスタックとして溜めて置く事が出来るの」


 パリィに成功した時に限り発動する効果ではあるが、その攻撃のダメージ量に比例した量をHPかMPとしてスタックする事が出来る。そして、スタックされた物は、ダメージを受けたり魔法を使ったりした際に自動的に供給されて回復する仕様らしい。

 尚、1回のパリィで溜められるスタック量も、溜めて置ける最大スタック量も上限がしっかりと存在する。


「しかも、パリィ出来るダメージ上限が増加するバフも付く優れもの! ……ただ、この籠手はパリィに成功する事が前提の装備になっててね。籠手自体の耐久力も低いし、パリィ出来ずに普通に攻撃を籠手で受けるとスタック値が大きく減少するわ」


 ――確かに使いこなすには凄く技術が必要な装備だけど……。私の目指す『敵を倒すまで絶対に負けない戦闘スタイル』と、凄く相性が良い。


 きっと私の話を聞いて、私に一番合う装備を作ってくれたのだろう。

 私はその事に思い至り、この籠手の能力以上に強い力を感じながら左手をぎゅっと握り込んだ。


「ルビィさん、ありがとうございます! 私、この籠手を使いこなせるように頑張ります!」

「喜んでもらえた様で良かったわ。でも、無理はしちゃ駄目だからね」


 その後、阿吽道場へ向かうのは明日に延期し、今日はこの新装備の練習に費やす事にした。

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