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189. 胸を張ってレキと会うために

 地面で蠢く巨大なモグラの群れに放心状態になってしまったが、天井から降り注ぐ光が小さくなっている事に気が付き、すぐさま天井の穴から地上に脱出しようと試みる。


「エアウォーク! 間に合え、間に合え、間に合え、間に合えぇぇえええ!!!」


 エアウォークで加速しながら天井の穴へと迫る。……けれど、それは無情にもあと少しという所で完全に塞がってしまい、地下空間は完全に闇に覆われてしまった。


「くっ! コーリング ライト! コーリング スターダスト!」


 このままでは碌に戦えないと、私は深淵魔法であるコーリング ライトとコーリング スターダストを使用する。コーリング ライトは空中に光球を発生させ照明とする魔法で、コーリング スターダストは使用者の周りに光の粒子を発生させる魔法だ。

 元々はハイテイマーズ戦で使うデモンズ ピラーを使えるスキルレベルまで育てるためだけに覚えた魔法だったが、思わぬところで役に立ってしまった。


 光源を確保した私はすぐにファイさんへと連絡を試みたが、何故か通信が繋がらない。ロコさんやギンジさんにも試してみたけれど、同様だった。


 ――どうしよう。データ保護アイテムの有効時間は1時間しかない。一番の安全策は有効時間が切れる前に自分から倒されに行く事だけど……正直負けたくない!!


 ペットの命と意地を天秤に掛ける気は無い。けれど私は、バグモンスターを前に何の抵抗もなく負けてやるつもりもさらさら無かった。

 せめてギリギリまで、勝機を探し続ける。レキを復活させた後、こんなに頑張ったんだよって胸を張ってレキが居なかった間の事を話せるように。


「これはピンチじゃなくて、レキへの土産話……私の武勇伝だ!」


 残り1時間弱で全て倒す。力が足りないのなら今強くなる。出来るか出来ないかは普段の積み重ねと、最終的な根性論なのだ。私は偉大な師匠にそう教わった。


「瞳術壱ノ型<暗闇>! スタミナ レジリエンスアップ! ウルフ シャウト!『アオーン!』 シャドウ ラピッドラッシュ!」


 暗視バフとスタミナ自然回復量上昇のバフを付加し、私の武勇伝を作るための戦いが始まった。


 クリスタルモールは1体1体がバス程の大きさがあるモンスターで、体の表面は様々な色合い鉱石で覆われており、それらがクリスタルモールに高い防御性能を与えていた。けれど、それもクロのシャドウ ラピッドラッシュを使えば防御性能を無視してダメージを与える事が出来る。

 私はウルフ シャウトで機動力と反応速度を底上げし、クリスタルモールへの攻撃を開始した。


 まずは最初の一体に狙いを定めて強襲する。クリスタルモール自体は事前の情報通りの動きのようで、魔法を放つだけで物理攻撃をしてくる様子はない。けれど、その魔法が面倒だった。

 まずは石の礫が四方八方から飛んでくる。勿論、その攻撃は周囲のクリスタルモールにも当たるが、高い防御性能によってほぼダメージは通っておらず、味方に当たろうが構わないとばかりにやりたい放題だ。

 他にも私を拘束しようと飛んで来る泥に、地面から真っすぐ伸びて来る岩の柱。ここは土に囲まれた地下空間なので、もしかすると上空に退避しても天井からその岩の柱が伸びて来るかもしれない。

 

 私は攻撃の飛んでくる範囲を減らすために、1体のクリスタルモールの体に張り付くように飛びながらコンボを重ねていく。

 魔法の弾幕を回避しながらコンボを重ね、やっとの事で1体目を倒したのは戦闘を開始して8分程経過した時だった。


 ――このペースじゃ全然間に合わない。茨の短剣や、モカさんのカウントアップ効果で攻撃力はどんどん上がっていくとは思うけど、それでも間に合うかどうか……。あっ、しまった!?


 先行きの不安から思考を鈍らせてしまった所為で、注意を怠っていた方向から飛んできた石の礫に被弾してしまった。そしてその一瞬の硬直を逃さないとばかりに、下から伸びて来た岩の柱が私を突き上げる。


「かはっ! ……こんっのぉおおお!!」


 思いっきり突き飛ばされてしまったが、私はすぐに柱の射線から逃れた。けれど私はすでに上空に投げ飛ばされていて、下には私を狙い撃ちするために多くのクリスタルモールが魔法を発動しようとしていた。


 ――もう……終わり? ……いや、まだだ!!


 自分が弱気になってしまった所為で起きたあまりの逆境に思考が止まりそうになったが、私はそれを気合でねじ伏せる。こんなんじゃ、まだまだ武勇伝には程遠いのだ。


「インカ―ネイション!!」


 私は咄嗟にインカ―ネイションで自身をシャドウタイプに切り替え、集中力を極限まで高めて急降下した。

 シャドウタイプの効果は2つ。1つはMPを消費して影の中に隠れる事。そしてもう1つは体の一部を影化して攻撃を透過する事。

 ただ、この影化は体全体を影にする事は出来ず、尚且つ攻撃を受ける際に自動でその部分が影化する訳でもない。自分で影化する部分をピンポイントで選択し、避けなければいけないのだ。

 私は極限まで高めた集中力で、多方向から飛んでくる礫を急降下しながら躱し、躱す事が出来ない物は射線を見極めて体の一部を影化して避けた。

 脳が焼き切れそうな程に集中して避け続ける。そしてやっとの事で1体のクリスタルモールの体へと張り付いた。


「ここからはもう弱気にならない! 神化! 毘沙門天!! 気合いだぁぁああああ!!!」


 私は私の持つ全てを振り絞ってこの戦いに挑む。だからお前達は私の武勇伝に成れ。

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