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13. ロコお母さんの手料理

 翌日、ロコさんに料理のことで相談したいとメールを送ると、今日の夕方なら会えると返事が来たので、ロコさんを私のプライベートエリアに招くことにした。


「なんじゃお主、料理に手を出したのかえ?」

「今飼ってるのもレキだけなので、私とレキの二人分だけなら作れるかなと思って。……その、節約にもなりますし」

「まぁ、最初は金策手段が限られとるから金欠は仕方がないの」

「ですです!」


 ロコさんは自身も経験があるのか、深々と頷いて理解を示してくれた。


「それで、レシピ買うお金も無かったので手作りでやろうと思ったんですが、それが失敗しちゃって。料理に何かコツとかあるんでしょうか?」

「コツは無いのう。このゲームでの手料理はリアルとほぼ同じじゃ。いや、それどころかリアルに存在しない食材で作らねばならぬから、より難しいとも言えるのう」

「そ、そんなぁ~」

「そもそも、お主は普段料理などはするのかえ?」

「いえ、全く」

「……なんでそれで上手く行くと思ったのじゃ?」

「……ゲームだから適当に切って混ぜて炒めたら上手く行くかと思って」


 その刹那、二人の間に微妙な空気が流れた。そしてそんな私達を見てレキが首を傾げている。レキ、こんな私を見ないで!


「ま、まぁ、チャレンジ精神は大切じゃからの。ただ、お主は鑑定スキルを持っておらんじゃろ?」

「えっと、確かアイテムとかモンスターの情報を調べるスキルですよね? はい、優先して買いたい物が色々あったので、鑑定には手を出してないですね」

「食材の中には毒物も存在するからの。無暗に焼いて食わそうとすると、麻痺やら毒やらの状態異常を受けるぞ」

「えっ! そんな危ない物があるんですか!? 今まで何も考えずに木の実をレキに上げちゃってました!」

「お主が今狩場にしているあたりならまだ安全じゃ。じゃが更に奥へと入ると毒物もちらほら出てくる故、これからも料理をするのであれば持っておいた方が良いぞ」


 鑑定スキルの技能『鑑定』は、スキル値が低い状態だとアイテム名ぐらいしか分からないが、スキル値が育っていくとアイテムの詳細情報や、モンスターの詳細情報を取得することが出来るそうだ。

 ちなみに私のインベントリの中身一覧には『きのこ』『木の実』『兎肉』といった大雑把な表記しかされておらず、鑑定スキルが上がると自動で一覧に表示される名前の表記も本来のアイテム名になるとのこと。

 

 ロコさんはレキのレベルが10になってからそのことを説明するつもりだったらしいが、まさか私が木の実やペットフードではなく料理を始めるとは思っていなかったらしい。

 私は引きこもりだが『先走り』と『猪突猛進』という特性を併せ持つ稀有な引きこもりのため、ロコさんの予想を上回ったようだ……誇れることではないけどね。

 

「ひとまず今日は、わっちが何か作ろう。そのあとでナツに作り方を教えるから、それをお気に入り登録しておくと良い」


 そういうとロコさんは森から採取した食材やモンスターの肉を私から受け取ると、ササッと料理を始めた。


「凄い手際の良さですね! ロコさんの料理スキルって、どのくらいあるんですか?」

「料理スキルを上げても主に扱える食材と調理道具が増えるぐらいじゃから、手際とはあんまり関係ないんじゃがな。料理スキルは一応カンストしとるよ」

「カンストしてるんですか!? あ、いえ、ロコさんなら料理にも詳しそうだなと思ったので相談させてもらったんですが、まさかカンストしてるとは思ってませんでした」

「わっちも最初は節約のために始めたんじゃよ。ペットが増えてきてからは全員分の食事を用意するのが難しくなってきてしもうて、店売りのペットフードになってしもうたがの。それでもペット用に効果の高いバフ料理は作っておったから自然とカンストしたんじゃ」

「効果の高いバフ料理……。節約以外にもテイマーとして料理って重要なんですね」

「う~ん、そこはなんとも言えんな。金は掛かるが料理をメインにやっておる生産職に頼んだ方が総スキル値を抑えて、他のスキルを育てやすい。わっちの場合は単純に料理が好きだっただけじゃな」


 そんな雑談を交えながらも、ロコさんは手を止めることなく何品か作り上げていった。同じ材料でこんなに品数を用意出来るなんて魔法みたいだ。


「さぁ、たんとおあがりなのじゃ」

「お、美味しい! 同じ食材で作ったはずなのに私が作ったのと全然違う!!」

「ワフッ♪」


 レキと二人でロコさんの手料理に舌鼓を打っていると、ロコさんが呆れた顔でため息をついた。


「まさか調理器具だけ買って調味料を何も持っておらんとは思わんかったよ。念のため持ってきておいて良かったのじゃ」

「あ、あはは……色んな食材を入れれば味はいっぱいあるから、追加で調味料は必要無いかなと思って……」

「お主はまずリアルで料理を学べ。話はそれからじゃ」

「は、はぁ~い。……ご馳走様でした、ロコお母さん」

「誰がお母さんか! わっちはまだ独身じゃ!!」


 その日の料理実習では、森で集められる食材を使ったレシピをいくつか教えて貰い、ロコさんが持ってきていた調味料まで貰ってしまった。本当にロコさんには頭が上がりません。

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