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114. 成長した私達

 私のメインスキルはスキル上げ専用ダンジョンで大きく成長している。けれど、本来この森『猛威の樹海』で探索するにはまだスキル値が足りていないのが実情だ。

 そんな私がこの森で出現する大型モンスターを1人で対処する方法、それは……。


「マインドフォーカス! アクセラレーション! エニグマエッジ!」


 まず私は白魔法で反応速度と機動力を向上させるバフを自分に掛ける。次に短剣スキル60で新たに使えるようになった技能『エニグマエッジ』を使った。

 エニグマエッジの効果はデバフを与える消費アイテムを使う事で、そのデバフを与える効果を一定時間だけ短剣に付与する技能だ。そして今回はその技能を使い、麻痺デバフを与える料理を消費して短剣に付与した。


「ガァア˝ア˝ア˝!」

「ひゃっ! 怖いから至近距離で雄たけびを上げないで! ラピッドラッシュ!」


 ゲームでも巨大肉食獣が目の前に居ると普通に怖い。それでも何とか戦えているのは多少姿がデフォルメされているのと、この巨大肉食獣より怖い半裸のおじさんを知っているからだろう。

 

 私はその巨大な鉤爪で襲って来るメナスタイガーを前に、ラピッドラッシュを発動しながら冷静に避ける。このラピッドラッシュには2つに意味がある。

 1つは避けながら短剣を滑らせる当てるだけで機動力が上がるので、相手の攻撃を更に避けやすくなること。避けながら短剣を滑らせるのはフロッグスターで一番身に付いた技術かもしれない。

 もう1つはエニグマエッジを最大限生かす為だ。実はこのゲーム、ソロプレイヤーにとってデバフの地位はあまり高くない。と言うのも、基本的にモンスターは強くなっていく程デバフ耐性が高くなっていくので、耐性低下など何かしらの効果と掛け合わせないと強モンスターに通用しないのである。

 

 ――ロコさんみたいにデバッファーペットや耐性低下手段を持っていない私が出来る事……手数でごり押す!!


 メナスタイガーの攻撃を避けつつコンボ数を稼いで機動力を上げ、攻撃後の隙を狙い一気に切り刻む。デバフ耐性が高くてもデバフが全く効かなくなる訳じゃない。あくまでデバフが入る確率が低くなるだけなのだ。であれば、低い確率でも確実に当たりを引けるだけ斬撃を与えればいい。


 避けては切り刻み、避けては切り刻みの繰り返しによって遂に麻痺のデバフが入った。麻痺ったメナスタイガーの動きは明らかに鈍くなっており、攻撃の狙いも散漫になって更に避けやすくなった。

 上位モンスター相手にこれだけ立ち回れる要因は成長したスキルだけでない。シュン君の訓練によって動きに緩急を付ける技術を習得し、ギンジさんの訓練によって体の使い方を洗練させたために私は今まで以上に自分のステータスを十全に使えるようになったのだ。


「ほんに強くなったのぅ。それだけ動ければタンクとしての役割は十分に熟せるの。……ではステップ2じゃ。パルを遠距離アタッカーとして戦闘に参加させるのじゃ。ただし、パルはあくまで遠距離アタッカーとして使い、行動阻害系の魔法使用を禁ずる」


 その指示を聞いて私はすぐに次の戦闘準備へと入る。


「パル、来て! 私が敵の攻撃を引き付けている間に、エレメンタルブレスでの攻撃をお願い! 他の魔法は一先ず無しで!」

「パルゥ!」


 パルのレベルはダンジョンによって急成長し、現在レベル56となった。そして覚えた新たな技『エレメンタルブレス』。これはドラゴン系のペットが全員覚える技で、自身の属性に合わせた強力なブレスを吐き、その属性によって追加効果を持っている。そしてパルの放つ氷属性のブレスには相手を凍結させる効果を持っている。


 先ほどと同じようにメナスタイガーの攻撃を避けつつ短剣で攻撃し敵からのヘイトを溜める。その間にパルはエレメンタルブレスのチャージをはじめ、パルの口の前に白い粒子が集まるのが見えた。エレメンタルブレスは攻撃力も追加効果も強力な技だが、溜めに時間が掛かるのが唯一の弱点なのだ。


「パルゥゥウ!!」

「了解! 何時でもいいよ!」


 パルから合図が入り、私は回避行動を取る。通常エリアではフレンドリーファイアは起きないが、攻撃を受ける際のノックバックは普通に受けるし、実は追加効果の凍結は通常通り発生してしまうから間違っても戦闘中に巻き添えにはなれない。

 

「ガァア˝ア˝ア˝!?」

「うわぁ、今まではイビルカースツリー相手だったから効果をあんまり実感出来なかったけど、普通のモンスター相手だと中々にえげつないなぁ」


 パルのエレメンタルブレスをもろに受けたメナスタイガーは、攻撃を受けた右肩あたりを中心に凍り付いていた。事前に受けていた麻痺も合わせてその機動力はもはや死んでいるとっても過言ではないだろう。

 エレメンタルブレスの威力に一瞬呆気に取られていた私だったが、何時までもぼーっとはしていられない。エレメンタルブレスが強力な攻撃ということはそれだけ敵からのヘイトを奪ってしまうという事だからだ。

 私は急いでメナスタイガーの背後へと回り込み、攻撃を仕掛ける。


「バックスタブ!」

「ガァア˝ッ!!」

「うむ、現状でのパルの火力であれば十分ヘイトの奪い合いに勝てるようじゃの。ではステップ3じゃ。レキも戦闘に参加させるのじゃ」


 順番にペットを導入するのは私がヘイトをどこまで対応できるのか確かめる為だったらしい。私もダンジョンで強くなったが、それ以上にレキやパルは強力な技を身に着けて強くなった。その為、ヘイト管理が今まで通り上手く行かず、レキやパルが攻撃対象になってしまう可能性があったのだ。

 ここ最近はイビルカースツリーでしかレキ達と戦っていなかったので、ヘイト管理の懸念点に気が付かなかった。


「レキ、来て! レキはクールタイムが終わるタイミングで私にフェアリーハウルを掛け続けて!」

「ワフッ!」


 レキのレベルは63となり、新しい技『フェアリーハウル』を覚えた。

 フェアリーハウルとはイタズラ好きの妖精にちなんだ技で、味方に掛けるとランダムで何かのバフが掛かり、敵に掛けるとランダムで何かのデバフが掛かる。何が起きるか分からないが、上振れると強力なバフ・デバフが連続で発動する凄い技なのだ。


「ワオーン!!」

「……打撃ダメージ強化(低)……まぁ、こういう事もあるよね」

「ワフゥ……」

 

 その後もレキとパルを導入した戦闘は続き、それぞれの役割が上手くハマった戦いを繰り広げた。……そして遂に最終段階へと入る。


「次が最後のステップじゃ。モカさんを呼び出し最高火力のダメージで止めをさすのじゃ」

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