0,プロローグ
多くの戦車は数多の戦地で朽ち果て棄てられ英雄となった。
多くの戦車は蒼き清純なる世界とともに人知れず葬られた。
しかして戦士たる資質は平等に、全ての戦車は
ワーゲミングにより選別され、その魂はヲットの館に誘われる。
いつ何時にも戦ができる様に、きたるクランヲォーに備えよ
千夜の星空も今宵が最後と、狂乱の饗宴を執り行えよ
いつ何時にも最後の刻まで怒りを歌え、休まず踊れ。
「ワーゲミングよ、全てのタンカーへ従え統べよ
その手綱を放さぬよう絶えることのないスペクタクルを。
まだ見ぬ兄弟のために道を築け、さもなければ誰も戦車には乗れない。
老いて死ぬ戦馬を語り継げ、でなければ誰も戦車には乗らない。
タンカーよ、私には夢がある。あなたが心より望むことの実現こそ終わりなき私の夢
結束をアメリカ戦車に、正見をフランス戦車に、潔白をイギリス戦車に、
鎮守を日本戦車に、自由をソヴェエト戦車に、覆轍を中華戦車に、
来る欧州戦車に連綿たる祝福を、そして栄光なるドイツ戦車にロマンあれ・・・」
今は昔、たった一発の砲弾は連鎖を引き起こし、戦車世界は火の海と化した。
なぜ、なんのために戦うのか。戦車たちはただただ駆り出され、
農業用トラクターの無垢な疑問に答えられずに戦った。
クリスマスまでには終わるだろう、早くガレージに帰ろう。
みながそう思ったであろう。
しかし、目には目を、砲弾には砲弾を。
憎悪と復讐の坩堝は混沌として深まるばかり……。
“戦争を終わらせる戦争”は疲弊と荒廃した国土を残して終わった。
そんな熾烈を極めた争い、勝者は敗者に何を下すだろうか。
今や群雄割拠の騒乱は復讐劇の調印を一目見ようと賑わう。
戦勝こそ正義、正義の下にこそ平和がある。
戦争と平和の狭間、心を映す鏡は心を留めるイコンを映したか?
旧支配者たちが残したもの。
ヴェルサイユ体制はドイツ軍戦車の野心を滾らせるに、知恵の限りをつくした有効な施策であった。国家の威信とばかりに膨大な手間隙をかけ造り上げられた大洋艦隊は、貝になりたい巨人を叩き起こし、獅子身中の虫へと不完全変態を成し遂げ、敗戦の荒波に飲まれ沈むならばと革命の引き波をドイツ中に捲き起こした。
英国菱形女王マザーの孫に当たるドイツ皇帝ライヒターカンプフヴァーゲン2世はスウェーデンへ亡命。それによりドイツ王室A7V家は途絶え―――戦勝国によるドイツに対する制裁のなか、ソ連とラパロ条約を結びドイツ復興の礎を築くのである。
緊迫した情勢、失われた時代の埋め合わせが刻一刻迫り、性急のうちに生れ落ちた戦車がいる。
この物語はその戦車がtierの長へと歩む道程を追想する戯れである。