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第43話 狂気に濁った眼

「【ガン・スピアー】!!」


 静月が、銃と化した「アモルファス」でシールドバードを撃ち落とした。


「【風翼加速ウィング・アクセラレーション】!!」


 ロロも、高速でもう1体のシールドバードを片付ける。

 ただ1人ララだけは、「つまんない~」という顔をしていた。

 現われた2体のモンスターを、あっという間に2人が片付けてしまったので、防御担当の出番は無かったのだ。


「柏森のスキルもすごいが、あの2人もなかなかにぶっ壊れだよな。」


 先に進む3人を追いながら、藤塚さんが言った。


「基礎のステータスがまだ低い分、スキルや武器の持ち味を活かし切れていないが、このまま成長していけば大化けするぞ。」

「やっぱり、ベテラン探索者の目にもそう映ります?」

「俺の見立てに間違いはないぜ。まあ、一番の化け物はお前だけどな。柏森。」


 四桜さんも藤塚さんも、今までは雲の上の人だと思っていた探索者たちだ。

 その人たちに、俺らの力を認めてもらえるのはすごく嬉しい。


「お、またモンスターが出てきやがったな。今度は、ポイズンホークスか。」


 俺らの先頭を行く浅川さんが、そう言って立ち止まった。

 静月たちが戦闘を始めたので、俺たちは後ろから見守る。


 ちなみに今の俺たちは、静月やモンスターから認知できないようになっている。

 俺のスキル、【擬態】の効果だ。

 この【擬態】は、フライングカメレオンというモンスターからコピペしたもので、周りの環境に合わせて色を変え、景色に溶け込むことができる。


 一時期俺は、このスキルを使って、ダンジョンの土壁に擬態したまま進み、モンスターを奇襲するということにはまっていた。

 その結果スキルのレベルが上がり、はじめは俺しか擬態できなかったところを、周りにいる人も擬態させることができるようになった。

 このスキルを活かして、俺たちはダンジョンの土壁に成りすましている。


「順調、順調。3人のコンビネーションも、上がってきてるわね。」


 四桜さんの言う通り、3人の動きに無駄がなくなってきている。

 初めて一緒に戦ってからまだ間もないが、お互いの動きを確認しつつ効率的に戦えているようだ。


「最後のは任せて!!【ライトニング・リップ】!!」


 ロロが、ラスト1体のポイズンホークスを稲妻型に切り裂いた。


「ロロちゃんナイス!!」

「にゃはは~。ここまでは余裕だね!!」

「油断しちゃだめだよ、お姉ちゃん。」


 声を掛け合いながら、3人は奥へ奥へと進んでいく。

 それに合わせて、俺たち土壁組も再び歩き始めた。


 1回目の調査に続き、ダンジョンに異常が起きることのないままボス部屋の前までたどり着いた。

 ボス部屋のドアの先にギガントイーグルがいれば、今回も何も起きなかったということになるのだが…


「じゃあ、開けるよ。」


 ララが後ろの2人に声をかけ、盾を構えながらドアをゆっくりと開けた。

 ぎしぎしという音がして、扉が開く。

 俺たちも、3人の後ろから部屋の中を覗き込んだ。


 部屋の中央に鎮座しているのは…ギガントイーグルだ。

 大きく広げられた翼が見える。


「ギガントイーグルだな。今回も異常はなしか。」


 石狩さんがぼそっと呟いた。

 今回の目的は、囮を使って犯人をおびき出すことだ。

 何の異常もないということは、犯人などいなかったということだろうか。

 あるいは、よっぽど警戒心の強いやつなのかもしれない。


 状況を確認して、四桜さんが言った。


「もう、変装は解いていいのかしら?」

「いや、一応このままでいよう。ギガントイーグルは本来のボスだし、彼女たちに任せて大丈夫なはずだ。」


 浅川さんがそう答えたので、俺たちは土壁に擬態したままボス部屋に入っていく。

 ギガントイーグルが動き出し、ララが前に出て盾を構え直した。

 …と、その時。


「待て!!ララ動くな!!」


 浅川さんが大声を出した。

 その声に、ララがぱっと振り向く。

 しかし、ギガントイーグルは止まることなくララたちに向けて突っ込んできた。


「危ない!!」


 俺が思わず駆けだそうとした瞬間…


「グガァァァァ!!!」


 けたたましい咆哮とともに、翼で風を切る音がする。

 突風に思わず目をつむった俺が再び目を開けた時、そこにギガントイーグルはいなかった。


「どこに⁉」

「上だ。」


 俺の横に立っていた藤塚さんが、静かに言った。


「上⁉」


 天井を見上げると…トパーズドラゴン⁉


「来やがったぜ。間違いなく十二竜の一角、トパーズドラゴンだ。」


 トパーズドラゴンが、何か口にくわえている。

 よく見れば、口元でじたばたしているのはギガントイーグルだ。


「モンスターがモンスターを食うなんて聞いたことねぇ。しかもあのトパーズドラゴン、目がイっちゃってるぞ。」


 剣を抜きながら、石狩さんが言う。

 こちらをぎろっとにらんだトパーズドラゴンの目は、確かに「イっちゃって」いた。

 ルビードラゴンの、恐ろしいながらも宝石のように美しい目とは違う。

 狂気に満ち、汚く濁った眼だ。


「やっとつかめた尻尾だ。ここは逃さねぇぞ。」


 石狩さんの声で、全員が戦闘態勢に入った。

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