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第42話 天使のギルド

「じゃあ、頑張ってな。」

「麻央たちが守ってくれるなら安心だよ。」


 静月が、「アモルファス」の入ったケースを持って笑った。

 いよいよ、村花大臣が考えた囮作戦実行の日。

 ボロアパートの前で、俺と早倉さんが静月を送り出す。


「いってきます。」


 静月が手を振って、バス停の方へ歩き出した。

 表向きでは、今回の作戦に俺と早倉さんは関与しないことになっている。

 管理局に向かうのも、静月とは別々だ。


「では、いったん部屋に戻りましょうか。」

「ですね。」


 村花大臣から言われた時間までは、まだ時間がある。

 石狩さんたち4人は、もう元の拠点に帰ったことになっている。

 だが実際には、用意されたホテルで待機中だ。

 さて、作戦に備えて朝ごはんを食べるかな。


「ん、電話か。」


 相手は…四桜さんか。

 俺のオリジナルスキルに感動したと言って、連絡先の交換をお願いされたんだっけ。


「はい、もしもし。」

「柏森くん?今大丈夫?」

「はい。大丈夫ですよ。」


 どうでもいい話だが、「ダンジョンの天使」四桜乃依の連絡先っていうのは超激レアものだ。

 世の中の男は特に欲しがることだろう。


「静月ちゃんは、もう出発したの?」

「ええ、ちょうど今。」

「そう。すごいよね、彼女。あの状況で、自分から手を挙げるなんて。」

「はい。俺もびっくりしました。」


 幼い頃からずっと知っているけど、俺もあそこで静月が手を挙げるとは思わなかった。

 立ち上がった静月が、これまでになく真剣な表情をしていたので、俺も早倉さんも止めようとは思えなかった。


「柏森くんと静月ちゃんは幼馴染なんだっけ?」

「そうですよ。」

「早倉さんとも、小さい頃からの知り合い?」

「早倉さんは、静月のいとこです。俺が知り合ったのは、探索者になってからですね。」

「あ、そうなんだ。随分と仲がよさそうだったし、妹ちゃんたちも含めてみんな小さい頃から一緒にいるんだと思ったよ。」


 妹ちゃん?

 ああ、ララとロロのことか…。

 別に妹じゃないんだよな。

 でも、説明するのめんどくさい…。


「ははは。仲がいいのは確かですね。」


 俺は訂正することなく、苦笑いでごまかした。

 きっと今の俺は、めちゃくちゃひきつった笑いを浮かべていることだろう。


「仲はいいけど、ギルドは組んでないんだよね?」

「まあ、レベル差がかなりありますから。BランクからSランクまでばらついてるんで、ギルド組むメリットが薄いかなぁと思ったんです。」

「あぁ~、なるほどね。確かに、レベル差は大きな問題だよね。人数も少ないし。」

「そうなんですよね。」


 電話をしながら、俺は朝食の準備を始める。

 大事な日だし、パンにチーズめっちゃ載せちゃえ。

 うわ、贅沢。

 チーズの山ができた食パンを焼きながら、四桜さんと話を続ける。


「ちょっと提案なんだけど。」

「何です?」

「私のギルドは知ってる?」

「もちろんです。」


 四桜さんがギルドマスターを務めるのは、「BLOOM」という名前のギルド。

 最強メンバー4人はそれぞれのギルドでギルマスを務めていて、それぞれの実力は互角だ。

「BLOOM」のギルドホームは、4つのギルドの中で一番近いところにある。


「あのさ、柏森くんと早倉さん、それに静月ちゃんとララちゃんとロロちゃんも、みんなまとめて私のギルドに来ない?」

「え?」

「今、どこにも所属してないんでしょ?だったら、私のところに来てほしいなぁって。」

「いやでも、さっきも言ったようにレベル差がかなりありますし…。」

「そこなら心配ないよ。私のギルドは、いろんなランク帯の人がいるから。大事なのは、将来性だよ。今はランクが低くても、これから伸びてくると思ったら、私はスカウトすることにしてるんだ。」


 そういえば「BLOOM」は、将来性を大事にするって聞いたことがあるな。


「私は、柏森くんたちに将来性があると思ったんだよ。まあ、早倉さんと柏森くんに関しては、かなり完成されてる感じがあるけどね。」

「素直に嬉しいですけど…。」


 嬉しいし、大人数になることでレベル差の問題も解決されるんだろう。

 でも、いきなりの話だしなあ。

 それに、いつかギルドを作るってララやロロと約束したし。

 でもそれまでの間、「BLOOM」でお世話になるっていう手もあるのか。


「取りあえず、お返事はまた今度でいいですか?静月たちの考えもあるでしょうし、今はまだはっきり答えられないというか。」

「うん、もちろんだよ。いい返事が聞けるといいな。」


 電話越しに「ふふっ」という笑いが聞こえた。

 危ない危ない。

 面と向かっていたら、心が揺れに揺れてるところだったぞ。


「まずは、今日の作戦よろしくね。」

「はい。よろしくお願いします。」


 そうだ。

 まずは今日、静月たちを守らなきゃ。

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