表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/54

第41話 可能性と囮

 [ボスモンスター討伐を確認しました。ダンジョン攻略成功です。]


《BD-120ダンジョン》本来のボスであるギガントイーグルが倒れ、攻略成功を告げる声がボス部屋に響く。


「何にも出てきやなしないな。」


 部屋全体を見回しながら、石狩さんが言った。


「このギガントイーグルも、特に異常はなさそうよ。」


 モンスターの死体を調べながら、四桜さんも言う。

 早倉さんの奇術トリックで凍らせられた挙句、俺と石狩さんに溶かされ燃やされたギガントイーグル。


「これは、捨てちゃってよさそうね。」


 四桜さんに抱えられ、BOXの中に放り込まれた。


「2人が以前ここへ来た時は、ギガントイーグルは出現せず、グリーンエアツリーとルビードラゴンだけが現われたんだよな。」

「そうです。」

「それで、今回は何も出てこない…。妙だな。」


 浅川さんはそう言うと、ボス部屋を壁伝いに歩き始めた。

 SSクラスの4人があれやこれや調査をしているので、俺もそれとなく部屋の中を歩き回ってみる。


 ボスモンスターを倒すとすぐにボス部屋を出ていたため、こういう風に長い時間滞在するのは初めてだ。

 それにしても、この部屋でルビードラゴンを倒したとはいまだに信じられないな。


 しばらく部屋を調査した後、石狩さんがみんなに声をかけた。


「どうだ?もう少し調査したいという人はいるか?」


 誰も声を上げない。

 俺も一通り調べてみたが、やはり手がかりらしい手がかりは見つからなかった。


「よし、じゃあ出るか。」


 石狩さんに続き、全員がダンジョンを出る。

 そのまま、管理局へ戻った。


 管理局の3階、大きな部屋に戻ると、静月たちが待っていた。


「麻央お帰り~。」

「おう。ただいま。」


 軽く会話を交わして椅子に座ると、モニターに再び村花大臣が映る。


「お疲れ様でした。幸か不幸か、何も起きませんでしたね。」


 異常事態が起きなかったのは、普通に考えれば幸い。

 ただそれによって、手がかりがつかめなかったのは不幸とも言えるだろう。


「みなさんが探索しているライブ映像を拝見しつつ、柏森さんたちの調書を読み返してみました。それにより、一つの可能性に至ることができました。」


 村花大臣の声の調子がやや低くなる。

 モニター越しの眼光は、今までで一番鋭かった。


「この異常事態が偶発的に発生したものではなく、人為的なもので、この事件を引き起こした犯人がいるということです。」


 犯人…か。

 前回はたまたま、俺や早倉さんが遭遇したからよかったものの、もしこれで死亡者が出ていたら、その犯人とやらは殺人犯だ。

 本当に犯人がいるのなら、野放しにしておく訳にはいかない。


「その可能性に至った理由は何ですか?」


 四桜さんが聞くと、村花大臣は一つ頷いて話し始めた。


「いくつか理由はあります。ですが一番の理由として、グリーンエアツリーが倒れかけた時に、ルビードラゴンが現われたということが挙げられます。」


 確かに、ルビードラゴンが現われたのは、俺が【ガスコントロール】を使いグリーンエアツリーが不利になった直後だった。

 犯人が追い込まれてルビードラゴンを…と、考えることもできる。


「方法に関しては皆目見当がつきません。ですが、ルビードラゴンがグリーンエアツリーを助けにダンジョンへやってきたというより、誰かが柏森さんたちを倒すために解き放ったという方が、筋が通っていると思います。」


 筋は通っているが、方法が分からないことには、この説を実証することができない。

 だが、現時点で最も可能性が高いのはこの考えかも。


「もちろん、あくまでこれは可能性に過ぎません。他の可能性も検証していく必要があります。しかし、もしこれが人災であるなら、犯人を見つけることが最優先となります。」


 他の線も追いつつ、犯人を捜していくという訳か。

 ダンジョン内に証拠がなかった以上、断定はできないもんな。


「犯人を見つけるといっても、手がかりは0に等しい。どうやって探すんです?」


 浅川さんが聞いた。

 村花大臣が、自信ありげに答える。


「ある方法で、犯人をあぶり出します。」

「あぶり出す?」

「ええ。私が思うに、これほどの事件を起こすからには、犯人には何らかの目的があるはずです。それが何か思想に基づくものなのか、ただの自己顕示欲なのかは分かりませんが、このまま沈黙したままではいないでしょう。餌をまけば、きっと食いついてくるはずです。」

「餌って、何をまくんです?」


 村花大臣が、少し間をおいて口を開く。


「人と情報です。みなさんほどの力はない、そこそこの探索者が調査に乗り出すという情報を流し、実際に彼らをダンジョンに送り込みます。」

「で?その餌になった探索者はどうする?」

「もちろん、見殺しにはしません。極秘で、みなさんに護衛していただきます。」

「つまり、情報では弱い探索者が調査をするが、実は俺たちがバックにいるってことか。」

「そうです。」


 囮を使うということだな。

 ベーシックだが、確実性の高い方法だ。


「その囮役は誰がやるんです?」

「そこはまだ。これから検討を…」

「やらせてください。」


 村班大臣の言葉をさえぎって、声が上がった。


「私にやらせてください。その囮役を。」


 椅子から立ち手を挙げているのは、静月だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ