第3話 うさぎはかわいい、でも熱い
「こんなもんかな。」
記念すべき初のダンジョン攻略を成功させ、ボロアパートに帰った俺は、現状のデータを分析して今後の目標を立てた。
目標その1:レベルアップ
当然のことだが、とても大事なことだ。
いくらモンスターのスキルが手に入っても、俺のステータスの数値が低ければ効果は薄まってしまう。
目標その2:遠距離系の攻撃スキルを習得
【体当たり】では、相手が棘だらけだったり毒を持っていたりしたらこちらがダメージを受けてしまう。
遠目の安全圏から、確実にダメージを与えられるスキルが欲しい。
目標その3:ノーマルスキル【鑑定眼】を習得
【鑑定眼】は、相手のステータスや所持しているスキルを確認できるスキルだ。
モンスターの中には、稀にユニークなスキルを持つものもいる。
【鑑定眼】があれば、その特殊なモンスターを見つけてユニークなスキルをコピペ出来るという訳だ。
【鑑定眼】取得に必要なスキル習得ポイントは、8000。
ダンジョンの攻略報酬を地道に貯めていくしかない。
目標その4:ボロアパート脱出!!
今日も帰ってきて興奮のあまり「よっしゃぁぁ!!」とか言ってたら、お隣さんにめちゃくちゃ怒られてしまった。
もうとにかく壁の厚い部屋に引っ越したい…。
Dランクダンジョンの攻略報酬で貰えるのは良くて1000円くらいだが、高ランクのダンジョンをクリアすればもっとたくさんのお金が貰える。
4つの目標を紙に書いて部屋の壁に貼ると、俺は1人で大きく頷いた。
そしてD-GUIDEを開き、近くにある手頃なダンジョンを探す。
ランクはもちろんDランクで、効率よくレベルが上げられるダンジョンがいい。
スマホの画面をスクロールしていると、《DD-187ダンジョン》が目に留まった。
出現するモンスターは、スライムと、うさぎのような姿をしたアミュンラビット。
アミュンラビットという名前は、このモンスターを最初に発見したアミュンさんによるらしい。
アミュンラビットが所持するスキルは、【跳躍】と【ジグザグジャンプ】でどちらも回避系のスキルだ。
肝心なのはスライムの方。
この《DD-187ダンジョン》に住むスライムには、稀に進化してシルバースライムになっている個体がいて、攻略中にそれを倒すと通常より多くの経験値が貰えるらしい。
「レベル上げにはおすすめのダンジョン」と書かれていた。
「よし、ここに行くか。」
俺は念のために剣を持つと、再びボロアパートを出た。
「【複製転写《コピー&ペースト》】ぉぉ!!」
《DD-187ダンジョン》に入り、早速アミュンラビットが出現した。
1体のみで、土の地面をぴょんぴょん跳ね回っている。
「【跳躍】!!」
俺はアミュンラビットに向けて手をかざし、スキル名を叫んだ。
[スキル【跳躍】を複製しました。転写しますか?]
「Yes」を選択する。
[スキル【跳躍】を転写しました。]
[スキル【跳躍】を習得しました。]
「早速使ってみるか。【跳躍】!!」
そう言うと、俺は足に力を入れて思いっきり飛んだ。
すると、まるで足にバネが備わったかのように体が宙に浮く。
そのまま俺の体は飛び上がって飛び上がって飛び上がって…。
「いいいい痛ぇぇぇぇ!!」
ダンジョンの天井に激突した。
体力が10減る。
考えてみれば、体長60cmのアミュンラビットが120cmくらいまで飛び上がっているのだ。
それを身長180cmの俺が思いっきり飛んだら単純計算で360cm。
3mも飛べばそりゃ天井にぶつかりますよね、はい。
「複製するべきは【ジグザグジャンプ】だったか…。」
自分の選択を後悔しつつ、俺はアミュンラビットに【体当たり】をお見舞いした。
アミュンラビット2体と普通のスライム5体を撃破してボス部屋まで辿り着いたが、結局シルバースライムは出現しなかった。
【ジグザグジャンプ】は無事習得することが出来た。
この《DD-187ダンジョン 》のボスは、アミュンラビットの亜種であるファイヤーアミュンラビット。
高く飛び上がってから、【ラビットファイヤー】というスキルで火の玉を撃ってくるモンスターらしい。
「貫通攻撃…ではないから【粘膜シールド】使えるよな?」
ぶつぶつ呟きながら、俺はボス部屋に入った。
部屋の中央に、ファイヤーアミュンラビットが鎮座している。
普通のアミュンラビットに比べて、体つきも一回り大きい感じだ。
ファイヤーアミュンラビットが、高く飛んだ。
ボス部屋はダンジョン内に比べて天井が高い。
「うわ!意外と高え!!」
その跳躍に驚きながらも、俺は防御態勢に入った。
「【粘膜シールド】!!」
俺の全身を粘液の膜が覆う。
そこに向けて、ファイヤーアミュンラビットが火の玉を噴射した。
なんとびっくり、うさぎの顔の形をした火の玉だ。
「いや、かわいいな!」
が、かわいいのは見た目だけ。
火の玉がぶつかった場所から、「ジュー」と粘液が蒸発する音がする。
やばい。何発も食らって耐えられるような余裕は無さそうだ。
俺は粘液でベトベトの手を伸ばし、叫んだ。
「【複製転写《コピー&ペースト》】ぉぉ!!」
もちろん、複製するスキルは決まっている。
「【ラビットファイヤー】!!」
[スキル【ラビットファイヤー】を複製しました。転写しますか?]
「Yes!!」
[スキル【ラビットファイヤー】を転写しました。]
[スキル【ラビットファイヤー】を習得しました。]
ファイヤーアミュンラビットが、もう一度飛び上がって2発目の火の玉を撃つ。
何とかそれを防ぐと、俺は空中のファイヤーアミュンラビットに向けて【ラビットファイヤー】を使った。
「【ラビットファイヤー】ぁぁ!!」
いくら回避系スキル持ちでも、空中ではどうにも出来ない。
まともにうさぎ型火の玉を食らったファイヤーアミュンラビットが、地面に落下した。
しかし、まだ体力は削りきれていない。
ファイヤーアミュンラビットは体を起こすと、飛び上がることなく連続で【ラビットファイヤー】を使う。
「【ジグザグジャンプ】!!」
俺はそれを左右に飛び跳ねながら避け、距離を詰めた。
「【跳躍】!!」
最後の火の玉を高く飛んで避けると、空中からまた火の玉を撃つ。
「【ラビットファイヤー】!!」
クリティカルヒット。
ノックバックが発生し、ファイヤーアミュンラビットがよろけて後ずさりした。
「とどめだぁぁ!!」
俺は全身に力を込めると、空中から一気にファイヤーアミュンラビットへぶつかった。
「【体当たり】!!」
「きゅぅぅぅ!!」
ファイヤーアミュンラビット、討伐完了である。
俺はファイヤーアミュンラビットの体を持ち上げると、部屋の隅にある「モンスター処理BOX」に入れた。
スライムのように弾け飛んでしまうものならいいが、こうしてご遺体が残るモンスターもいるので、その場合はこのBOXに入れるのだ。
[ボスモンスター討伐を確認しました。ダンジョン攻略成功です。]
さあ、今回はどんな報酬が貰えるだろうか。
[攻略報酬として経験値を獲得しました。]
[攻略報酬としてスキル習得ポイントを獲得しました。]
[攻略報酬として670円を獲得しました。]
[攻略報酬としてアイテム《アミュンラビットの毛皮》を獲得しました。]
[レベルが1上昇しました。レベルが3になりました。各ステータスの数値が上昇しました。]
[スキル【粘膜シールド】のレベルが1上昇しました。スキル【粘膜シールド】がLv.2になりました。]
順調にレベルが上がった。
シルバースライムを倒せばもっと上がったのだが、現れなかったものは仕方がない。
また、再挑戦すればいいことだ。
俺はスマホを取り出すと、D-GUIDEで新スキルを確認した。
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【跳躍】Lv.1
効果:跳躍力が向上し、高く飛ぶことが出来る。
跳躍可能高度:自身の体長×2
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【ジグザグジャンプ】Lv.1
効果:左右に素早く飛び、攻撃を回避する。
跳躍可能幅:左右に4mずつ
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【ラビットファイヤー】Lv.1
効果:うさぎ型の火の玉を発射しダメージを与える。
与ダメージ:自身の攻撃力×10%
射程範囲:25m
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離れた位置から攻撃出来る【ラビットファイヤー】が手に入ったのは、素直に嬉しい。
【跳躍】はもう少し広いダンジョンでなければ使えないが、【ジグザグジャンプ】は回避においてかなり有能だ。
「ふう、もう1回いくか!!」
俺は腕をぶんぶん回しながら、ダンジョンを出た。
そしてすぐに、また《DD-187ダンジョン》に入る。
ゲームでいう「周回」が始まった。
頼むぞ、シルバースライム。
現れてくれ。
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氏名:柏森麻央
年齢:18
《STATUSES》
レベル:3
攻撃力:145
防御力:145
速 度:145
幸 運:145
体 力:145
《SKILLS》
〈オリジナルスキル〉
【複製転写】Lv.1
【体当たり】Lv.2
【粘膜シールド】Lv.2
【分身】Lv.1
【跳躍】Lv.1
【ジグザグジャンプ】Lv.1
【ラビットファイヤー】Lv.1
〈ノーマルスキル〉
未所持
スキル習得ポイント:500
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