表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/54

第38話 最強パーティーのメンバー

「はい、もしもし。」

「おはようございます。」


 珍しく、スマホに知らない番号から着信があったかと思えば、つい昨日に聞いた低く太い声。


「村花大臣…ですか?」

「はい。柏森さんでよろしいですか?」

「は、はい。」


 電話の相手が大臣だと分かった途端、めちゃくちゃ緊張してくる。

 昨日は5人同時で会ったけど、今は1対1の対話だ。


「朝早くからすみません。今、お時間よろしいですか?」

「はい。大丈夫です。」


 村花大臣からは、今日から当分の間の予定を空けておいてほしいと頼まれていた。

 ダンジョンに潜るくらいしか、予定という予定はなかったんだけど。


「本日の予定は、空けていただけているでしょうか?」

「はい、もちろんです。」

「ありがとうございます。それでは、午前8時に昨日の第24支部へ向かってください。探索に普段使っている装備を、全て整えた上でよろしくお願いします。」

「分かりました。」

「何か質問はございますか?」

「いえ、特にはないです。」

「では、改めてよろしくお願いします。他の方にも連絡しなければならないので、これで失礼しますね。」


 村花大臣は、口早に言って電話を切った。

 かなり忙しそうだ。

 多分、昨日から寝てないんだろうな。


 対して俺は、昨日の夜ぐっすりと眠った。

 無神経という訳ではなく、万が一にでも調査の実戦担当に選ばれた時のためだ。

「トップクラスの探索者」に、俺のようなAランクダンジョンを拠点にする探索者が入っていないことは確か。

 それでも、俺は事件の当事者だし、【サイレンス・レッドアイズ】もゲットしたし、パーティーに入る可能性はあるんじゃないだろうか。


 そんなことを考えながら準備をして、俺はアパートの部屋を出た。

 すると、早倉さんと静月も部屋を出てくる。


「おはようございます、柏森さん。」

「おはようございます。静月もおはよう。」

「おはよう。」


 早倉さんはいつもの弓、静月はケースに入った「アモルファス」を持っていた。

 2人とも、村花大臣からお声がかかったようだ。


「麻央も、今から管理局でしょ?」

「そう。一緒に行こうか。」

「そうだね。行こう。」


 3人でバスに乗り、管理局に向かう。

 会社へ出勤するサラリーマンや通学する学生はいるが、武器らしきものを持っているのは俺たちだけだ。

 それもそのはず。

 昨日の夜、村花大臣が会見をし、当分の間は一般の探索者がダンジョンに出入りすることを禁止したのだ。

 事件の詳細な内容は話されなかったものの、命に関わるということは強調された。

 それで国民が納得したのは、ひとえに村花大臣の人望による。


 探索の一時的中止は大きなニュースになり、国民のほとんどが知るところとなっている。

 武器を持っている俺たちは、好奇の目で見られながら、管理局までバスに揺られていた。


 バスを降りると、バス停から少し歩いたところにララとロロが立っていた。


「あ、お兄ちゃんたちおはよ~。」

「おはようございます。」


 俺たちに気付き、ララとロロが手を振る。


「ララとロロも呼ばれてたんだな。」


 俺が言うと、ララが笑顔で頷いた。


「正直、私たちのレベルじゃ調査の助けにはなれないけどね。でも、大臣さんから電話がかかってきたから。」


 大臣は、関係者みんなに自ら電話をかけていたのか。

 さすがだな。


「入りましょうか、そろそろ時間です。」


 早倉さんに続いて、俺たちは管理局の中に入った。

 職員さんが出迎えてくれる。


「3階にご案内します。他の方は、もうすでに到着されていますよ。」


 他の方…

 事件に遭遇した俺たち5人は今ここにいる。

 ということは、調査のために選ばれた探索者たちだろう。

 どんなメンバーがいるのだろうか。


 3階に上がると、エレベーターの手前にある大きな部屋に案内された。


「こちらの部屋です。」


 職員さんがドアを開け、俺たちは部屋の中に入った。

 部屋の中には、4人の男女がいる。

 そしてその全員を、俺は知っていた。


 とはいっても、別に知り合いだった訳ではない。

 単に、彼らがめちゃくちゃ有名なだけだ。

 確かに早倉さんは、「トップクラスの探索者を集め、パーティーを組んで調査するのがいい」と言ったけど、このメンツはえぐすぎないか?


「お待たせいたしました。本日の調査で、実戦を担当していただく探索者の方々をご紹介いたします。」


 職員さんの紹介を聞きながら、俺は考えた。

 これは…俺の出番ないんじゃないだろうか。

 それぐらい、ここにいる探索者たちが猛者ばかりなのだ。


 最強の剣士と言われ、「聖剣」の二つ名を持つ石狩裕いしかり ゆう

 ダメージを受けたことがないという噂もある、「絶壁」浅川冬獅郎あさかわ とうしろう

 本気のスピードは誰も目で追えない、「超光速」藤塚ふじつかレイヴィン。

 死者以外救えないものはいないとされる回復のスペシャリスト、「ダンジョンの天使」四桜乃依しざくら のい


 全員がSSランクダンジョンを拠点にしている。

 このパーティー、探索者ヲタクが見たら卒倒するレベルだぞ。


「そして最後に。」


 紹介を続けてきた職員さんが、俺の方を見て言った。


「そして、実戦担当を当事者の方からもうお2人。柏森麻央さん。早倉奈菜さん。」


 え?

 俺、この人たちとパーティー組むの…?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ