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第36話 管理局も大慌て

「あれ、なんかすごいレベルが上がったんだけど…。」


 ララが、ダンジョン攻略の報酬を伝える声を聴いて呟いた。

 そうか。

 早倉さんが【シニアズ・ヘルプ】を使ったから、俺以外の3人に早倉さんの攻略報酬が共有されてるんだ。

 早倉さんの【成長爆発グロウアップ・バースト】で得られる経験値が、静月、ララ、ロロにも与えられている。


「本当なら、時間を取ってゆっくり説明したいところなんですが。」


 早倉さんは、【奇術コントロール・イグニッション】でグリーンエアツリーを焼き払いながら言った。


「他のダンジョンにも異変が起きている可能性を考えると、一刻も早く管理局に向かいたいところです。落ち着いたらきちんと説明しますので、待っていただいてもいいですか?」


 ララが頷いた。


「では、ダンジョンを出て管理局へ急ぎましょう。」


 先陣を切って、早倉さんがダンジョンを出ていく。

 俺たちも、そのあとに続いた。


 近くのバス停からバスに乗り、管理局に向かう。

 向かう管理局は探索者管理局 第24支部。

 俺が、探索者としての登録をしたところだ。


「すでに、電話で管理局に簡易的な報告をしてあります。さらに、撮影したルビードラゴンの画像も送ってあります。」


 早倉さんが、車中で現在の状況を説明してくれた。

 というか、写真なんかいつの間に取ったんだ?


「管理局も、未曽有の事態に大慌てだそうです。とにかく詳細を確認したいとのことで、一人一人から話を聞きたいと言われました。」


 やっぱり事情聴取されるのか。

 別に悪いことをした訳じゃないし、堂々としてればいいんだけど。


「柏森さんのスキルのことも、話して問題ありませんよね?」

「もちろんです。」


 特に隠すことはない。

 そういえば、スキルの詳細が分かったら報告して欲しいって言われてたのを忘れてたな。


「そういうことですので、各自、あったことをありのままに話してください。」


 早倉さんの言葉に、俺たちは頷いた。


 自分が大変な状況に直面したのだなと実感し、胸がどきどきしてくる。

 戦っている時は「ありえない!!」で済んでいたけど、落ち着いて考えてみたら相当な事件に直面したのかもしれない。

 自然と、車中での口数が少なくなった。


 管理局に着くと、玄関のところでスーツ姿の職員が数名待っていた。

 俺たちのことを見るや否や、ばたばたと動き出す。

 俺たちは管理局の3階、普段は職員しか入れないスペースに通され、待機するよう言われた。


 職員たちの顔にも、異常事態からくる焦りが見てとれる。

 何度も電話をかけている人や、パソコンに向き合ってすごいスピードでタイピングしている人、ホワイトボードに何か書いては頭をかかえている人など。

 みんな必死だ。


「お待たせしました。こちらへお願いします。」


 男性職員が、俺たちを3階の奥の方へ案内する。

 5つの部屋があり、それぞれドアが開けられていた。


「一人ずつ、指定の部屋にお入りください。中にそれぞれ職員が待機しています。ここからは、彼らの指示に従っていただきますようお願い致します。」


 俺は、指示されたドアから部屋に入った。


「あっ。」

「どうも。柏森さんは、私が担当させていただきます。」


 俺が探索者になる時、手続きをしてくれた職員さんだ。


「どうぞ、お座りください。」


 俺が椅子に座ると、職員さんは早速本題に入った。


「それでは、早速本題に入ります。ダンジョン内であったことを全て、順番に教えてください。普通のBランクダンジョンと変わらなかったところも、おかしかったところも、抜かすことなくお願いします。」

「分かりました。」


 えっと、最初は早倉さんが【シニアズ・ヘルプ】を使ったんだったよな…。

 俺はダンジョンに入ったところから、時系列順に詳しく話した。


「なるほど…。」


 一通り俺が話し終わると、職員さんはずっとパソコンでメモを取っていた手を止めた。

 興味深げにつぶやいた後、俺の方を見て言った。


「ありがとうございました。お聞きしたことは、私の方でまとめて報告書にしておきます。」

「よろしくお願いします。」

「いえいえ、仕事ですから。」


「仕事ですから」と言いつつ、職員さんの顔はげんなりしている。


「やっぱり、管理局も大騒ぎですか?」


 俺が聞くと、職員さんは深く頷いて言った。


「前代未聞の事態ですしね。上層部もかなり慌てているようです。管理局は国の機関ですから、政府クラスの事態になりそうですよ。もしかしたら、今の話を総理大臣の前ですることになるかもしれません。」


 そ、そ、総理大臣ですと!?


「さすがに大げさかもしれませんが、それくらいの大ごとであることは間違いないです。」


 やっぱり、とんでもない事件なんだよな…。

 と、職員さんのスマホに着信。


「はい。…えっ?はい。分かりました。」


 職員さんが時折驚きの声を上げながら応答し、電話が終わると俺に言った。


「管理局を担当する大臣が、こちらに向かっているそうです。」


 …え?

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