表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/54

第29話 お姉さま奇術ショー

 お姉さまモード早倉さんが、シールドバードに向けて矢を放った。


「私の奇術トリックの前に、シールドバードはひざまずくことになりますの!!」


 う~ん。

 今日の早倉さん、テンション高いし声大きいな~。

 お姉さま効果だろうけど。


 俺が早倉さんと戦った時に目にしたのは、【奇術トリック・ディビジョン】と【奇術トリック・コントロール】だった。

 ただ、スキルセットというからには2つだけということはないだろう。

 さあ、今回はどんな奇術が見られるのか。


「キエェェ!!」


 シールドバードが甲高い鳴き声を上げた。


 シールドバードがシールドバードと呼ばれるのは、その名の通り自らの前にシールドを出して攻撃を防ぐからだ。

 ちなみにシールドバードには3色のパターンがあり、赤色なら炎のシールド、水色なら水のシールド、茶色なら土のシールドを出す。

 目の前のシールドバードは水色、つまり水のシールドを出すシールドバードだ。


奇術トリック…」


 早倉さんが伸ばした右手に、俺たちの視線が集中した。


「フローズン!!」


 放たれた矢が水のシールドに触れた途端、シールドが凍り付く。

 カチコチになった氷のシールドに、早倉さんの矢が突き刺さった状態だ。


「あれ?余計に相手の守りを強くしてない?」


 ララが呟いた。

 確かに、一見すればシールドがより強化されたように感じる。


 だが、水のシールドの強みはその柔軟さだ。

 相手の攻撃の威力をうまく吸収し、時には弾き返す。

 カチコチに凍ってしまった今、その強みは皆無になった。

 次の早倉さんの攻撃で、氷の盾はバキバキに砕かれるはずだ。


「柏森さん。」


 右手を伸ばしたまま、早倉さんが俺の名を呼んだ。


「何ですか?」

「あなたなら、ここからどうしますか?」

「そりゃ、もう一発矢を放って氷のシールドを砕くしかないんじゃないですか?」


 俺の答えに、早倉さんが「ふふっ」と笑いをこぼした。


「やはり、柏森さんはお兄ちゃんですね。お兄様にはなれませんの。」


 モンスターを前にして何言ってんだ、この人。


「お姉さまは、そんな誰でも考えつくような戦い方はしませんのよ。」


 早倉さんは、伸ばした右手により力を込めた。

 2本目の矢を放つ素振りは見せていない。


奇術トリック・イグニッション!!」


 早倉さんの声と共に、凍ったシールドに突き刺さっていた矢が発火した。

 当然のごとく、炎に包まれた氷は溶け落ちる。

 シールドバードが作り出した水のシールドは、跡形もなくなった。


 なるほど…。

 そう来ましたか。

 あえて矢を突き刺しておき、それを発火させるとは恐れ入りました。


 とはいっても、まだシールドが破壊されただけでシールドバード本体には傷一つ付いていない。

 自らを守るものを失ったシールドバードが、今度は攻撃に転じた。


「キエェェ!!」


 シールドバードが大きく羽ばたき、水の弾丸を放つ。

 しかし、もともとが防御に特化したモンスターなだけに威力がしょぼい。


「ウォータールーム。」


 早倉さんが、自らを球状の水の壁で覆った。

 水の弾丸の威力が、水の壁に完全に殺される。


 普通なら相性の良い防御スキルで防御するところを、同じ水系の防御スキルで守るあたり早倉さんの絶対的な自信と余裕が見て取れる。


「さて、お姉さまの奇術トリックショーもそろそろ終わりにしますのよ!!」


 早倉さんは、水の壁を解除して再び弓矢を構えた。

 シールドバードが再びシールドを作り出そうとする。

 シールドが完全な状態になる前に、早倉さんが矢を放った。


奇術トリック・アクセラレーション!!」


 早倉さんの声と共に矢が加速し、不完全なシールドを突き破り、その奥で空中にとどまっていたシールドバードに突き刺さる。


 それでも矢の勢いはとどまるところを知らず、そのままシールドバードの体を貫いてダンジョンの奥へ飛び去った。


「キエェェェェ!!」


 体を貫かれたシールドバードは、大きな鳴き声を上げて地面に落ちる。

 しかし、まだ息絶えてはいない。

 もちろん、早倉さんはとどめを刺すのを忘れてはいなかった。


奇術トリック・コントロール!!」


 早倉さんが、伸ばした右手の拳を握り、自分の方へゆっくりと引き戻す。

 その動きに合わせて、ダンジョンの奥へ飛び去った矢が戻ってきた。

 早倉さんが右手を止めると、矢も空中で静止する。

 矢が止まった場所は、ちょうど地面でじたばたしていたシールドバードの上だ。


「これで終わりですの。」


 早倉さんが、軽く右手の手首を捻った。

 矢が回転し、鋭い矢先がシールドバードに向く。

 そのまま、早倉さんが勢いよく右手を振り下ろした。


「キエェェェェェェ!!」


 一際甲高い鳴き声と共に、シールドバードがバサバサと翼を動かす。

 しかし、矢で完璧に地面に釘付けにされたその体は動かない。

 やがて、翼の動きもぴたりと止まった。


「こんなものですかね。いかがでしたの?お姉さまの戦い方は。」


 俺たちの方へ振り返り、早倉さんが言った。


「「「カッコよかったですの!!」」」


 静月、ララ、そしてロロまでもが声をそろえて言った。

 何なの?その、「ですの」症候群。


「さあ、奥に進みますの!!」

「「「はい!!お姉さま!!」」」


 一人テンションが置いてけぼりの俺を気にもせず、4人が先に進む。


 いや、そりゃ早倉さんの戦いはすごかったんだけどさ。

 みんなテンションどうしちゃったんだよ…。


「まあ、いっか。」


「魔王」様は、細かいことは気にしない方がいい。

 俺も、4人を追って奥へ進む。


 …さすがに、次にモンスターが出てきた時は俺の番だよね?

お読みいただきありがとうございます!!

「ブックマークへの登録」と「★★★★★の評価」をぜひよろしくお願いします!!


「面白かった」など一言でもいいので、ぜひ感想も聞かせてください!!

レビューでおすすめしてもらえると、さらに嬉しいです!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ