第26話 金髪の残像
【シニアズ・ヘルプ】。
聞いたことはあるけど、どんなスキルだったっけ。
「今使ったのは、【シニアズ・ヘルプ】というスキル。詳細はこんな感じです。」
早倉さんが、自分のスマホからD-GUIDEを開いて見せてくれた。
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【シニアズ・ヘルプ】Lv.1
効果:パーティーを組んでダンジョンを攻略する自身の2分の1以下のレベルの探索者と、攻略報酬を共有する。
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「えっとつまり…?」
俺が聞くと、早倉さんが説明してくれる。
「私がこのダンジョン攻略成功時に獲得する経験点などの攻略報酬を、私の半分以下のレベル、つまりララさんとロロさんと静月が同じように獲得出来るということです。もちろん、各自が獲得する報酬もそのまま獲得出来るため、基本的なイメージとしては報酬が2倍になるということですね。」
なるほど。
大体は分かった。
つまり、レベル254の俺には何ら関係がないという訳だ。
早倉さんが「基本的」という言葉を使ったのは、【成長爆発】の効果で獲得出来る報酬が2倍以上になるからだろう。
ただ早倉さん自身が【成長爆発】に触れていないため、俺がわざわざ口を出す必要もない。
「さて、準備は整いました。進みましょうか。」
早倉さんがダンジョンの奥へ歩き出す。
俺たちも、そのあとに続いた。
この《BD-120ダンジョン》には、鳥の姿をしたモンスターが出現する。
その中でも一番出現数が多いのが、ポイズンホークスという鷹の姿のモンスターだ。
「ポイズン」という名そのままに、毒を武器とする。
【ジェットウィング】というスキルで高速飛行しながら、【ミクロポイズン】で微細な毒の粒子をまき散らし攻撃してくるのが基本的なスタイル。
【ミクロポイズン】で散布される毒の粒子は非常に細かく、広範囲に漂うため、避けるなどということは不可能だ。
通常は、毒耐性のスキルかアイテムを使った戦うことが多い。
もし俺が戦うとすれば、【アンチポイズン】があるため毒を気にせず突っ込めるだろう。
さてさて、少し歩いたところでポイズンホークスの登場である。
相手は1体。
対してこちらは5人だから、全員でかかっていくことはない。
「ここは、ララさんかロロさんにお願いできますか?」
「じゃあ、鳥だしロロにお願いできる?」
「うん。では、私が戦います。」
【風翼加速】があるロロは、高速で飛行するポイズンホークスと相性がいい。
Bランクダンジョンに対してはレベルの高い俺と早倉さんを除けば、ベストな人選だ。
ロロが、ポイズンホークスを見つめて深呼吸する。
剣を抜き、初めて一緒に戦った時と同じく大声で言った。
「【風翼加速】!!」
瞬間、金色の残像を残してロロの姿が消える。
俺は何度か見ているためもう慣れたが、初めて見る2人、特に静月はロロの速度についていけず驚いていた。
これもまた、初めて一緒に戦った時と同じ。
ロロに集まっていた視線がポイズンホークスのいた方に移るころには、もうポイズンホークスの体が斬られている。
高速で飛びまわる隙も、毒をばら撒く隙も与えなかった。
鮮やかな戦闘である。
ちなみにロロの最大の武器は【風翼加速】だが、一瞬でモンスターを斬り捨てる剣のスキルも見事だ。
ララがスキルやアイテムを最大限防御に振っているため、ロロは攻撃に振りまくっているのだという。
「お待たせしました。」
ロロが剣を収めて戻ってくる。
「お待たせ」するほど時間はかかっていないんだけどな。
「お見事でした。今のは、ロロさんのオリジナルスキルですか?」
「はい。【風翼加速】というスキルです。」
「非常に速かったです。突然のことで、目で追うのもギリギリでしたよ。一撃で仕留めたのも素晴らしかったですね。」
【風翼加速】のことを知っていた俺ならまだしも、初見でロロの速度を目で追えたというのはさすが上級の探索者だ。
おそらく、Sランクダンジョンにはもっと速いモンスターもうじゃうじゃいるのだろう。
「ありがとうございます。上手くいって良かったです。」
褒められたことに照れて頬を赤くしながら、ロロが答えた。
その隣で、何もしていないララも得意気である。
ロロがご遺体の処理を済ませたのを確認して、早倉さんがみんなに声をかけた。
「それでは、さらに進みましょうか。」
早倉さんを先頭に、俺たちは再び歩き出す。
しばらく進んだところで、再びモンスターが出てくる。
今度は、パワーキッカーという名前のモンスターだ。
飛べない鳥だが、ただの鳥ではない。
足の筋力が異常に強く、【ガトリングキック】、【ローリングキック】、【スタンプキック】と、人様を足蹴にしてくるモンスターだ。
今回は一度に2体出現している。
さて、誰が戦うか。
「奈菜姉、ここは私に任せて。」
口を開いたのは、静月だった。
黒光りする槍を力強く握り、闘志をみなぎらせている。
早倉さんが、笑顔で頷いて応じた。
当然ながら、静月の戦闘をこの目で見るのは初めてだ。
それも一度に2体。
俺は、わくわくした気持ちでパワーキッカーに向かっていく静月の背中を見つめた。
静月とパワーキッカー2体が対峙する。
静月は槍を頭上に掲げ、ぶんぶん回しながらスキルを発動した。
「【ダブルエッジ】!!」
槍の回る速度がどんどん速くなり、ある程度に達したところで静月が槍をぴたりと止めた。
相変わらず黒光りする槍に、大きく変化が起きている。
片方向のみに刃がついていた槍だが、左右両端に白い刃が光っていたのだ。
両端に刃のついた槍を構え、静月が駆け出した。
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