第13話 3人兄妹、出陣
「それで、ロロのオリジナルスキルはどんなスキルなんだ?」
ダンジョンを歩きながら俺が聞くと、ララが喜び勇んで説明を始めようとした。
と、そこへエレクトリック・アースワームがやってくる。
「来たよ!!」
「モンスターです!!エレクトリック・アースワームです!!」
いかにも「よし、戦うぞ!!」という感じの声を出して、ララとロロが俺の後ろに下がる。
「戦う気、無いのな。」
「ほら、エレクトリック・アースワームじゃなかったら戦うよ?でもビリビリはやだもん。」
「本当にすいません…。」
ララは悪びれる様子もなく隠れてるし、ロロも申し訳なさそうだがやっぱり戦おうとはしないらしい。
「全く。」
まあ、一緒に行くといったのは俺だ。
仕方ない。
「そこで待ってろ。」
俺は、1人でエレクトリック・アースワームに向かい合った。
ぶよぶよした細長い体は、確かにミミズそのもの。
だが大きさは1.5mくらいあり、間違いなくモンスターだ。
「取りあえず、スキルを貰っときますかね。」
俺は、エレクトリック・アースワームに向けて右手を伸ばした。
「【複製転写《コピ-アンドペースト》】ぉぉ!!」
エレクトリック・アースワームは1体だから、ゲットできるスキルは1つ。
まずは【帯電】かな。
「コピーアンド…なんて言った?」
「コピーアンドペーストじゃないかな。ほら、コピペって略すやつ。」
「ああ、あれね。って、それでどうやって攻撃するの?というか、そんなスキルあったっけ?」
「分かんない…。」
後ろから、何やらこそこそしゃべってる声が聞こえる。
俺は気にせず、手を伸ばしたまま叫んだ。
「【帯電】!!」
[スキル【帯電】を複製しました。転写しますか?]
「Yes!!」
[スキル【帯電】を転写しました。]
[スキル【帯電】を習得しました。]
さてと、電気持ってる相手に電気の攻撃って有効なんだろうか。
有効なら、即【帯電】の即【体当たり】で試してみるんだけど。
「ねえ、お兄ちゃん戦う気あるのかな。スキルの名前叫んでるだけだよ。」
おい、ララ。
すでに撤退してる奴が何を言う。
ここで【帯電】からの【体当たり】が失敗すれば、後々からかわれるのは目に見えている。
確実な方法を取っておくか。
「【ラビットファイヤー】!!」
毎度お馴染み、うさちゃん火の玉が飛んでいく。
待てよ?
電気の相手に火を点けても大丈夫なのか?
爆発とかしないか?
一瞬不安になったが、もう火の玉は止まらない。
「ララ、ロロ!!ちょっと下がっとけ!!」
2人に指示を出し、俺も少し後ろに下がる。
しかし、俺が心配したような爆発は起きなかった。
エレクトリック・アースワームの体の周りで軽くポンポンいったものの、ドッカーンという感じでもない。
ただただ、巨大ミミズが炎に包まれて倒れただけだった。
「にゃははは!!マジ顔で『ちょっと下がっとけ!!』だって!!」
後ろから、ララが爆笑する声が聞こえてくる。
くそっ!!確実な方法を取ったはずなのに、結局笑われた!!
「お、お姉ちゃん。私たちの代わりに戦ってくれたんだから。」
ロロがララをたしなめた。
「分かってるよぉ。ちょっと、からかっただけ。」
ララは前に出てくると、笑顔で言った。
「お兄ちゃん、ありがとう。」
「お、おう。」
ちょっと面食らった俺は、戸惑いながら答える。
「一旦、片付けだけしてくる。」
俺は、燃えて縮んだエレクトリック・アースワームのご遺体を近くのBOXに入れた。
そして、2人の元に戻る。
「お待たせ。さ、進むか。」
俺の言葉に頷き、2人とも歩き出した。
「で、お兄ちゃんは何をコピペしてたの?」
ララが、興味津々という様子で聞いてくる。
「実はな、俺もオリジナルスキルを持ってるんだ。」
俺は、これ以上ないドヤ顔で言った。
「え?お兄ちゃんも?」
「私と同じですね。」
俺はダンジョンの奥に進みながら、【複製転写】のことを簡単に説明した。
「へぇ~。面白いスキルだね。」
「当たり前ですが、名前も内容も聞いたことないスキルです。」
ララが「あっ」と手を叩いた。
「さっきの火の玉に見覚えあると思ったけど、あれってファイヤーアミュンラビットのスキルじゃない?」
気付いたか。
「その通り。他にも、スライムやらスニーズフラワーやらのスキルも持ってるぞ。」
「【粘膜シールド】とかも?」
「持ってる。」
「わ~。あのベトベトの膜は気持ち悪いよね。」
おい。
結構使ってるんだぞ、使えるんだぞ、【粘膜シールド】。
「さっきはエレクトリック・アースワームに邪魔されちゃったけど、ロロのオリジナルスキルがどんなのか聞いてなかったな。」
俺が言うやいなや、またしても邪魔するようにモンスターが出てきた。
今度は、エレクトリック・アースワームじゃない。
アカヅメモグラという日本固有のモンスターで、鋭い爪と素早く地面に潜って攻撃を回避することが特徴だ。
「ほら、今度はビリビリしないぞ。」
俺は、2人を振り返って言った。
「だね。ここは、私たちに戦わせて。」
ララが、真剣な顔で盾を構える。
その目つきと雰囲気は、まるで人が変わったかのようにピンと張りつめていた。
「お兄ちゃんは、下がって見てていいよ。私たちの戦いと、ロロのオリジナルスキルを見せてあげる。」
有無を言わせぬオーラに飲まれ、俺は2人の後ろへ下がった。
ララは雰囲気が変わったが、ロロは何も変わらない。
まあ、ロロはもともと真面目そうだし、あんまり変わらないのかもな。
「ロロ、準備はいい?」
「大丈夫だよ、お姉ちゃん。」
アカヅメモグラは、地面からその爪と顔だけを出してじっとこっちを見ている。
「じゃあロロ、あれを使って!!」
そう言うと、ララは一気にアカヅメモグラへ走り出した。
動きはなかなか機敏だし、低い姿勢でしっかり走れている。
だてに、レベル51まで来てはいない。
ロロはというと、その場から動かずに大きく深呼吸した。
目を閉じて何か呟いてから、その目をカッと見開く。
そして、今までのロロからは想像もつかない大きな声で言った。
「風翼加速!!」
刹那、ダンジョン内に一迅の風が吹く。
その瞬間、俺の視界からロロの姿が消えた。
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氏名:柏森麻央
年齢:18
《STATUSES》
レベル:56
攻撃力:680
防御力:680
速 度:680
幸 運:680
体 力:680
《SKILLS》
〈オリジナルスキル〉
【複製転写】Lv.1
【体当たり】Lv.2
【粘膜シールド】Lv.3
【分身】Lv.2
【跳躍】Lv.1
【ジグザグジャンプ】Lv.2
【ラビットファイヤー】Lv.4
【催涙花粉】Lv.1
【ステムバレット】Lv.1
【進化】Lv.2
【成長爆発】Lv.4
【帯電】Lv.1
〈ノーマルスキル〉
【鑑定眼】Lv.1
【ウィンドアロー】Lv.1
スキル習得ポイント:2650
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