第10話 奇術は爆発だ!!
「ウォータールーム。」
早倉さんを中心とした半径5mくらいに、球状の水の壁が出現する。
うさちゃん火の玉はあっさり鎮火されてしまった。
「「まだまだ!!【跳躍】!!」」
天井のないフィールドで、俺と俺は出来るだけ高く飛び上がった。
「「【ラビットファイヤー】!!【ウィンドアロー】!!」」
高い位置から、攻撃スキルを乱射する。
当然のことながら、【ステムバレット】だけは使わない。
というより、使えない。
「高さを出そうと、結果は変わりません。」
俺の攻撃は、一切ダメージを与えられない。
それもそうだろう。
俺の今の攻撃力は570。
それに対し、早倉さんの防御力はレベルから推定するに4000近いはず。
スキルで補正がかかっている可能性もあるし、俺の攻撃が効くはずがない。
「こちらもいかせていただきます。」
早倉さんが弓矢を構える。
【粘膜シールド】では防げない以上、【ジグザグジャンプ】と【跳躍】での回避がベストだ。
どこだ。どこに撃ってくる。
俺は地面に着地し、早倉さんの狙いを見極めることにする。
早倉さんは立っているその場から、矢を一本放った。
高速だが、避けられる。
「【ジグザグジャンプ】!!」
俺は、まず右に飛ぶ。
完璧に矢は避けきった…はずだった。
しかし…
「【奇術・ディビジョン】。」
早倉さんが声を出すと、矢が2つに分裂した。
片方の矢は完全に逆方向に飛んでいくものの、もう一方の矢は俺へと飛んでくる。
これが、早倉さんのスキルか。
どうする!?
ジグザグジャンプを続ければ、逆方向の矢に当たってしまう。
ただ、このままでは確定で被ダメだ。
「【跳躍】!!」
強引にジグザグジャンプをキャンセルし、思いっきり飛び上がる。
これで、避けきれる!!
矢が、俺の足の下を通り抜けていった。
しかし、レベル315の探索者はこの程度では終わらない。
「【奇術・コントロール】。」
「何!?」
通り過ぎたはずの2本の矢が、俺に向って進路を変え戻ってくる。
俺が今いるのは空中。
もはや、回避は不可能にも思える。
矢が2つに分かれたときも、進路が変わった時も、早倉さんは「奇術」という言葉を発していた。
多分あれは、「スキルセット」というやつだ。
スキルセットとは、いくつかのスキルを一つのセットとして習得できるもの。
セットごとに名前が付けられていて、一つのセットを習得するのに100000近くのスキル習得ポイントを必要とするらしい。
早倉さんの言っていた【奇術】というスキルセットも、聞いたことがある。
1回のダンジョン攻略で数百のスキル習得ポイントを稼ぐのがやっとな俺にとっては、スキルセットなど夢のまた夢だ。
まあ、このままモンスターのスキルを習得し続けるならスキルセット獲得の重要度はかなり低くなるんだけど。
などと考えてる場合じゃない。
何とか、矢を避けるなり軌道をそらすなりしないと。
どうする!?
【粘膜シールド】はだめだ。
効果が半減しては、ダメージを防げない。
【分身】は?
だめだ。両方の体をそれぞれ追いかけられて、撃ち抜かれるのが目に見えている。
【ラビットファイヤー】で矢を焼き払うってのはどうだ?
これもないな。
攻撃スキル同士なら、攻撃力の高い方が威力が高くなるに決まっている。
くそっ、せめて地面があればっ!!
そうすれば、【体当たり】で早倉さんのところまで突進して移動できるのにっ!!
ここまで考えていると、矢はもう目の前。
だめだ…。
ふと思う。
ここであきらめたら、果たして俺は【成長爆発】と静月を任せられる奴って言えるのか?
言える訳ない。
俺の本気度は、こんなものじゃない!!
【成長爆発】があれば、爆発的に成長して高いレベルまで飛んでいける…ん?
爆発?高く飛ぶ?
俺は、ふとある考えを思いついた。
矢はすぐそこ。
上手くいくかなんて考えている暇は無い。
よくもまあ、ほんの一瞬のうちにこれだけ思考が巡ったものだとかそういうことは後にして、とにかく今は体を動かす。
「【粘膜シールド】!!」
俺の全身を、いつものように粘液の膜が覆った。
これで矢が防げないことは分かっている。
今回の【粘膜シールド】は、矢を防ぐためのものじゃない。
「【催涙花粉】!!」
俺は相次いでスキルを発動する。
【催涙花粉】なんて、実戦で使うのはほぼ初めてだ。
ただこれも、早倉さんをくしゃみ地獄に追い込むためのものじゃない。
花粉が、辺りにまき散らされた。
準備が、整った。
「【ラビットファイヤー】ぁぁ!!」
もうもうと舞う花粉に向けて、俺は渾身のうさちゃん火の玉を放つ。
めちゃくちゃに粉が舞っているところに火を付けたらどうなるか。
結果は目に見えている。
空気中で飽和状態となった花粉に連鎖的に火が点き、爆発が起こる。
粉塵爆発だ。
その反動で、ベトベトな俺の体は高く吹き飛んだ。
【奇術・コントロール】ではおそらく、早倉さんが矢の方向を操作している。
大量の花粉と爆発による火炎、煙で俺の姿が見えない今、早倉さんが正確に俺を狙うことは不可能だ。
「反撃だ。」
そう呟くと、俺は空中から一気に地面に着地する。
「【体当たり】ぃぃ!!」
わずかな煙の切れ目から早倉さんの姿を捉えた俺は、ベトベトな体のまま一気に突っ込んだ。
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氏名:柏森麻央
年齢:18
《STATUSES》
レベル:45
攻撃力:570
防御力:570
速 度:570
幸 運:570
体 力:570
《SKILLS》
〈オリジナルスキル〉
【複製転写】Lv.1
【体当たり】Lv.2
【粘膜シールド】Lv.2
【分身】Lv.2
【跳躍】Lv.1
【ジグザグジャンプ】Lv.2
【ラビットファイヤー】Lv.3
【催涙花粉】Lv.1
【ステムバレット】Lv.1
【進化】Lv.1
〈ノーマルスキル〉
【鑑定眼】Lv.1
【ウィンドアロー】Lv.1
スキル習得ポイント:2650
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