過激派
ガイの家に戻り、カインと、後いつの間にか混ざっていた村の子供達と遊んだ俺は、ガイの家で夕飯をご馳走になった。
「悪いな、寝床の用意だけでなく夕飯まで馳走になっちまって」
「ハハハ、気にするな。……リードから話は聞いたのだろう?」
「経緯だけは、な。俺に何をやらせたいのかは聞いていない、ガイに聞けと言われただけだ。」
「そうか……カイン、先に寝ていなさい。父さんは村長としてラメール殿と話がある」
「……分かった。おやすみ、父ちゃん。」
「あぁ、おやすみカイン。いい夢を」
「ラメールもお休み! 」
そういうとカインは広間を出ていった。……利口な子だ。 幼くとも村長の息子だという事なのだろう。
「……待たせたな。まずは……今の村の現状は聞いているか?」
「いや、聞いていないな。」
「一週間程前の事だ。過激派の一派がやってきて、1ヶ月後、まだ亜人を受け入れ続けていたのなら村を攻め落とすと警告してきたのだ」
「……ほう、それで?」
「この村は規模はでかいが、大半が争いから逃れた亜人と女子供や老人、成人したての若い連中で構成されている。若い連中はやる気だが……」
「練度が低い、か?」
「そうだ。昼間の連中を見ただろう? 彼らはやる気だけで戦いの経験などなく、レベルも 低い。受け入れている亜人達も身体能力は高いが、争いから逃げた者達だ。練度も士気も低く、戦力には数えられない。過激派は亜人に比べ非力な人族だけで構成されているからこそ、練度が高く全員が戦闘慣れしている。生半可な力では被害を大きくするだけなのだ」
力で劣るからこそ、技術で対抗するか……なら、俺が来なければガイはどうするつもりだったんだ?
「それで俺に過激派と戦えと? ……偶然俺が海岸に打ち上げられていなかったらどうするつもりだったんだ? 言われた通りに亜人を排他するか?お前は人族だろう?」
「それは有り得ん! 排他派の連中に下るくらいならば、出来るだけ多く道連れにして死んでくれる! …………すまない。ついカッとなってしまった」
「謝るのはこちらの方だ。踏み込み過ぎたようだな、申し訳ない」
「いや、構わん。……息子がいるのに、この家に母親が居ないのを可笑しいとは思わなかったか?……あいつの母親は……俺の妻は、森妖精だったのだ」
「……何だと?魔力はさほど感じなかったが……」
森妖精はエルフの始祖の一族であり、非常に強い魔力を持つ。つまりカインは上級森半妖……ハイエルフだったのか?……それにしては魔力が……
「……人族の子供達と変わらぬ生活が出来るよう、サリアが封印したんだ。……だがあいつは俺と結婚したせいで、融和派の戦力として駆り出され、それで……! あんたが最後のチャンスなんだ! 融和派も過激派も信用ならない、俺に争いを終わらせる力を貸してくれ……!」
……過激派は森妖精を殺せるほどの戦力を持つのか?……戦場は陸の上だ、手加減を、なんて言ってられんかもな。 範囲攻撃で纏めて殲滅するか。
「……そうか。……たとえ、その結末が過激派が全員死ぬことでついたとしても……いや、愚問だな。良いだろう、力を貸してやる」
「本当か! ありがとう……我々も出来る限りの支援を約束する、よろしく頼む……! 」
……援軍とか出されちゃうと広範囲殲滅スキルや魔法を使えないんだよな……いや、ガイだけは連れて行くか。全てを見届ける責任があるだろう。
「いや、支援は必要ない。その代わり……ガイには来てもらうぞ」
「……分かった。カインの事はリードに任せ、必ず同行しよう」
「それでいい。明日の朝出発する。」
「……明日の朝か? 準備とかは……いや、何も持っていなかったな。過激派はまだこちらに出兵していないはずだ。奴らの集まる村は……」
話し終えた後、俺は客室に戻り、数十年ぶりに感じる眠気に意識を落とす……そう思ったが。
「……別に眠くならねぇのなこの身体」
昔みたく目を瞑って大人しくしてるか……待てよ……そういえば、人間って殺したら経験値手に入るのか……?
『相変わらず君という奴は……色々と台無しだよ! ……ちゃんと手に入ったはずだよ』
ちょっとした礼のつもりだったが、これは予想以上に美味しい展開かもな。俄然としてやる気出てきたぞ。
一言:アールヴが魔族と交わるとハイダークエルフが産まれます。獣人、亜人との場合は種として強い方が優先されますが、例外も……