地球の神様
今回は説明会です。
一人暮らしのはずなのに、声が聞こえる……もう朝か……? ん?知らない声……?泥棒か!
慌ててガバリと起き上がると、そこは真っ白な空間だった。
なんだ夢か……それにしてはハッキリしてるな、明晰夢ってやつか? ったく人騒がせな……にしても眠いな、夢の中で寝れるのか?あ、なんかいけそう…………
「ちょっとちょっと! やっと起きたのにまた寝ようとしないでくれよ! 」
「うぉっ! やっぱり泥棒か! ……あ?子供?何の用だ坊主、お兄さんもう寝たいんだけど」
「ここは現実! 僕は神様! 君は死んでここに呼ばれたの! 」
「……死んだ? 神様? そういうごっこ遊びなら後にしてく……って、手足が透けてやがる! ……マジ?」
そう言われると、確かに色々おかしい気がするが……確かに俺は最後家で寝たはずだ、どうやって死んだんだ?心臓麻痺とかか?
「死因は後で説明するから、今はとりあえず話を聞いてくれないかな」
「うぉ! 心が読めるのか? ……まぁいい、夢ならそのうち覚めるだろうしとりあえず聞こうか」
「うん、ありがとう。君はこれから転生するんだけど、そこがちょっと特殊な場所でね……それで転生するにあたって僕からお願いがあるんだ」
「特殊?異世界にでも転生するのか?というかお願いって記憶保ったまま転生すんのかよ……」
「うん、君の転生先は地球のファンタジーの元になった世界でね…………が………で……」
こうして俺は自称神から説明を受けた。……ファンタジー談議をしながら。
それを纏めると
1.行先はファンタジーの元となった世界である
2.自称神が介入しなくても元々転生するはずだった。
3.自称神はファンタジーものが大好きであり、俺を通して異世界をビデオのように眺めたい。
4.対価として、自称神は俺にできる範囲の力を与える。
「こんなものかな、何か質問はあるかい?」
「まず1つ、なんで俺なんだ?」
「それは君の死因が関わってるんだ。君、ファンタジー好きだろう? 夢に見るくらい」
「あぁ、確かに好きだな。夢で見ることもあったがそれと何が関係あるんだ?」
「ごく稀に産まれた世界よりも別の世界に適合した魂を持つ子がいてね、魂が肉体を離れてその世界に行きたがるんだ。普通はそれを夢という形で見るだけなんだけど、君の場合魂が強靭すぎてホントに肉体を離れちゃったって訳だ。だから僕が何もしなくても君は向こうに転生したんだよ。」
俺の死因幽体離脱なのかよ!調べてもわかりっこないし、適当に変死として処理されてそうだな……
「なるほどねぇ……でも結局お前が介入するなら俺じゃなくても良かったんじゃないか?」
「それがそうもいかなくってね……魂だけで世界を渡るような離れ業、相当に強靭な魂を持たないと出来ないし、あの世界、強固に隔離されてるから君みたいに適合率が高くないと渡れないんだよね」
「隔離?なんかやばいものでもあったのか?」
「あるとしたら世界自体かな……あの世界、時間の進みが恐ろしく遅くてまだ出来て数百年くらいなんだけど、出来て百年くらいの時に孤立してたその世界が他の世界と繋がってね」
「ふむふむ、それで?」
「その世界には神がいなかったから、信仰を求めて数え切れない程の神が流れ込んだんだけど……逆にその世界の【ステータスシステム】と【スキルシステム】に縛られた挙句、予想以上にその世界の住民が強くて力で信仰させようとした神が返り討ちにあってね」
ステータスとかがあるとは聞いたけど、神ですらその範疇に入るのか……
「それどころか逆に攻め込まれそうになったから、慌てて神々は逃げ帰ってその世界を隔離したんだ。今では逃げ遅れたり、封印されたり、隠れてたり、全うに動いて信仰されたりした数百の神だけがそこに残ってるんだよ」
「そんな危なっかしい世界に俺を放り込んでもすぐ死ぬんじゃないか?」
「死なない為に僕が力を与えるんじゃないか。それで、まだ質問はあるかい?」
「俺の行動を見るって話だが……ほら、色々見られたくない物とかあるだろう? そこら辺は大丈夫なのか?」
「うん、そこは任せておいてよ。そっちの都合が悪い時は任意でoffに出来るようにするからさ」
生中継みたいなもんか?便利なもんだな。
「ならいいんだ、とりあえず思い付くのはこれくらいだな」
「そうか、じゃあ次は転生の為の準備だけど、どんな能力がいいかい?地球の神なのに地球に干渉出来ないせいで力だけは有り余ってるから色々出来るよ」
「うーん……向こうの世界には進化があるんだったな、なら魔物にして、進化を沢山出来るように出来るか?」
人恋しくなってもどうせ人化の術、とかありそうだしな。
「うーん…大丈夫そうだね。他にはあるかい?」
「いや、後はよくあるテンプレくらいしか浮かばないな。そっちは言われなくても付けてくれるんだろう?」
「もちろんさ!ええと……【鑑定】【言語翻訳】と……【取得経験値上昇】【取得熟練度上昇】【ステータス上昇率二倍】……【系*樹無*】?読めないな、1つに神力込めすぎたかな……無茶振りされると思ってたからまだ力余ってるんだけど……【進化条件緩和】……よし、後は〚地球神の加護〛もあげちゃおう」
おいおい、なんかやらかしてたみたいだけど大丈夫なのか?
「大丈夫大丈夫、特に悪いものじゃないはずだから……あ、プライバシーの為に【神眼遮断】も付けとかないとね」
offの為のスイッチそれかよ!やたら物騒な名前してんな……
「よし!こんなものかな、何に産まれても生きていけるだけの力はあるはずだから、向こうでも頑張ってくれ!」
自称神がそう言うと、俺の体が一瞬光った後更に透けていく……もうこいつともお別れか。神って言う割には愛嬌のある奴だったな。
「あぁ……短い間だけど世話になったな。また会えるかは知らないが……いや、強くなって必ず会いに来るよ」
「あ、〚地球神の加護〛で神託を通して会話出来るからね」
「おい!俺の感動を返せ____」
自称……いや、地球の神様となんとも締まらない別れ方をした俺は、再び光に呑まれ消えていき……そこで俺の意識は途切れた。
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「行った……か。おかしな子だったな、神だって言ってるのに頑なに態度を変えようとしないし、心の中は不安でいっぱいだったのに、それをおくびにも出さないし、好きな事を話す時の目が凄く綺麗だった。…………今度、こっちから神託を送ってみようかな」
そういうと神……否、女神はいつも通り真っ白な空間で、世界を見守り始めた。
後何話か投稿した後は、毎日22時投稿になります。