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逃亡代行  作者: 横瀬 旭
第一章
3/43

3

https://note.com/yokoze_asahi/n/n6ea63ff22142

 日が沈んで水平線が赤くなっている。たそがれ時、私はコンビニで買った缶ビールを飲みながら、崖でキラキラと光っている建物を目指して歩いている。


 建物に到着すると、キラキラ光っていたのは灯台だということがわかった。管理人と思われる男が門に鍵をかけている。塔の頂上で大きなレンズがゆっくり回っている。とても幻想的だ。


 それに見とれてしばらく眺めていると


「のぼってみる?」


と、門に鍵をかけていた男に声をかけられた。


「いいの?」


「うん、特別だよ」


鍵をかけた門を開けて敷地に入る。男がコソコソしている気がしたので、私もコソコソした。灯台の扉を開け、螺旋階段をのぼり、頂上の扉を開けて外に出た。レンズが頭の上で回っている。風がとても気持ちいい。


 「どうだい?」と男が声をかける。


「月がまぶしいな」


「はは、都会から来たのか?月の明るさを知らないなんて」


「そうだよ。都会から逃げてきた」


でも月の明るさは知っている。私がまだ幼い頃に田舎の祖母の家に行った際、夜に灯りを持って犬の散歩に出ようとすると「今夜は満月だから灯りいらないよ」と祖母に言われたことがある。外に出ると本当に明るかった。街灯とは違って、空からそのまま下りてきたような優しい灯りだったことをよく覚えている。


 「月が明るくない日に来てみてよ、星がいっぱい見えるから。好きな星座とかある?」


「オリオン座かな」


「それしか知らないんだろ」


「そんなことないよ」


意地になって明るい空の中から見える星をなぞると、男が「なんていう星座だ」と聞いてきた。


「これはギョー座っていうんだ」


ニ人で失笑した。ビールを飲んでからなんとなくギョーザが食べたいなと思っていた。


 下を向くと、ピンク色の建物が目に入った。


「あれは何?」


「水族館だよ。もう廃業したけど」


へえ、行ってみたかったな。


「二年くらい前に閉館したんだ。閉館の二日前くらいに急にやめるって言い出して、あんまり急だったからイルカなんかまだ中のプールにいるぞ。早く引き取り先が見つかるといいけど」


 色々としゃべって灯台を降り、男と別れ、私は再び歩き出した。

犬吠埼灯台


水族館は犬吠埼マリンパーク


イルカは数年放置されて亡くなった。

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