桟橋
https://note.com/yokoze_asahi/n/na0f439c24cb3
早朝、私は桟橋のある砂浜にやってきた。
駅に貼ってあったポスターの場所だ。この桟橋の写真と、短いポエムが書いてあるポスターだった。
砂浜から海に向かって一本だけ長い道がのびていて、橋に沿って立っている電柱に取り付けられた裸電球が、その道を照らしている。
桟橋の向こう側に目を向けると、港へ入港するコンテナ船が見えた。さらにその向こう側には、海の向こうの陸地にそびえる高い山が見える。
しばらくその景色に見とれていた。鞄からスマートフォンを取り出し、その景色を写真におさめた。
ふと左に目を向けると、倒木に座っている制服姿の女学生がいることに気が付いた。
長い前髪で顔はよく見えなかったが、どことなく物憂げな姿に誘惑されて、写真を撮っていいかと声をかけた。
彼女は無言でこちらを向いた。風で髪がなびいて、少しだけ目が見えた。
そして私は、シャッターを切った。
写真を確認すると、何故か白飛びしていた。景色だけを撮影した写真は、しっかり綺麗に撮れているのに。
もう一枚撮ろうと声をかけようとしたが、彼女はいなくなっていた。
とても美しくて、絵に描いたような女の子だった。
しかし一瞬の出来事だったため、彼女の目が何色だったかも覚えていない。
緑色、青色、灰色。
彼女のような人は見たことがない。
彼女のような人には会ったことがない。
本当に彼女は存在したのだろうか。
私は彼女に声をかけたのだろうか。
「不思議なこともあるんだな」
そうつぶやいて、私は砂浜を歩き続けた。
原岡海岸
岡本桟橋