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逃亡代行  作者: 横瀬 旭
第三章(一)
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遅延

https://note.com/yokoze_asahi/n/n196893bb5dd6

 私はプラットホームに止まっている列車に乗り込んだ。


平日の昼間だからか、列車に人はほとんど乗っていなかった。


 ロングシートの端の席に腰を掛けると、隣の座席に一円玉が落ちているのに気が付いた。


持っていくか持っていかないか、少し迷っている。


落ちている金というのは、一円玉であれその他の硬貨であれ、気味の悪いものだ。


持ち主が稼いだ金ではなく、子供が親からもらった小遣い銭だったかもしれない。しかし、元々は誰かが考えた仕事で得た金なのだ。それから、その考えた仕事で作業をした人間がもらった金でもある。


人々が苦労して得た物を拾得するというのは、ばち当たりな気がする。さらに言えば現金というのは、非常に多くの人間が触れたもので、もしかしたら変なウイルスなどが付着しているかもしれない。


 しかしこの先、一円で困ることがあるかもしれない。


人の努力がどうとか、ウイルスがどうだとか、細かいことを言っていられない場面がやってくるかもしれない。


私は落ちている一円玉を持っていくことにした。


 なかなか列車が発車しないことに気がついた。


窓の外を見ると、降っていた雨が雪に変わっていた。この地域で、この季節には珍しい雪が降っていた。


車内に入った車掌のアナウンスでは、十分ほど遅れて発車するとのこと。


一円玉を拾った。そしてこの列車は遅延している。


急いでいるわけではないが、早速ばちが当たった気がした。


ドアが開けっ放しのとても寒い車内で、私は列車の発車を待っていた。

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