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逃亡代行  作者: 横瀬 旭
第三章(一)
12/43

公園駅上の口

https://note.com/yokoze_asahi/n/n5a2d0d7e8d4e

 逃亡初日、小雨が降っていた。


私は通りかかったタクシーに傘を持っていない方の手を挙げて止め、開いたドアから乗り込んだ。


「公園駅までお願いします」


そう告げると運転手は


「入口はどちらになさいますか?」


と聞いてきた。


公園駅には出入口がいくつかある。蓮の花がたくさん咲いている公園の正面にある『蓮公園改札口』。駅の二階にひっそりとある『上の改札口』。そして、一番大きな出入口の『中央改札口』。


あまり人と会いたくない私は、上の改札口を運転手に申し付けると、車は動き出した。


 車窓に流れる見慣れた町並み。


世間では治安の悪い町と言われているが、店の物や自転車などを盗むという、小さな犯罪が時折起こっているだけだ。


この地で生まれ育った若者は、自転車を盗んだことがあれば、盗まれたこともあるという。私は移民なので、どちらも経験はない。


 そんなことを考えながら車窓からの景色をずっと眺めていると、目的地に到着した。


「四百二十円です」


運転手が言った明らかに安い料金に耳を疑った。


「そんなに走ってない?」と聞くと運転手は気味の悪い笑みを浮かべ


「うちは初乗りいってんぜろごーにじゃなくて、せんごじゅうになんですよ〜」


と言った。


意味はわからなかったが安いのは良いことだと思い運転手の気が変わる前に言われた料金を支払い車を降りた。


「ありがとうございます!お気をつけて!」


そう言って運転手が閉めた扉の窓に書かれている運賃を見ると


"初乗 1,052km ¥420"


小数点を示す「.(ピリオド)」ではなく、数字の単位を区切る「,(カンマ)」になっていた。


「これで国の端まで行けば良いんじゃないか?」


と思ったが、タクシーは走り去ってしまった。


車内に傘を置き忘れたことにも気づいたが、もう遅かった。


 公園駅上の口


私の逃亡が、再び始まる。

JR上野駅公園口

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