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休日、家でテレビを見ながら一日が過ぎるのを待っている。
ルールをよく知らないラグビーやアメリカンフットボールを見て、お互い似たような競技だと思っていたが全然違うことに気づくなど、新たな発見もあった。
突然電話が鳴って驚いた。久々に受けた電話の発信者は川崎だった。
前に所属していた会社で仲の良かった上司だ。私が逃亡する前に退職された方で、味方になってくれるかもしれないと思い、新しい電話番号を教えておいたのだ。
電話に出ると『元気か?』という偉そうで、懐かしい声が聞こえてきた。
私の近況など、聞かれたことに笑いを交えながら答えていると、彼は声色を変えて
『お前の親方が昔怖い組織の幹部だったことは知ってるか?』
と聞いてきた。
「ああ、一緒に飲んだ時に自分で喋ってたよ」
『舎弟がお前の家を探してる。逃げた方が良い』
電話の本題はこれか。
「そういう人たちって、普通の人には手を出さないんじゃないの?」
『やった相手が相手だもんなあ。俺もお前の行方聞かれたんだよ。なんとかお茶濁しといたけど』
「なぜ今更家に来る」
『よくわからないが、あいつらはお前がずっと今まで外で逃げ回ってると思ってたらしい』
彼との通話を切った私は、アルバイト先で唯一連絡先を知っている国分さんに電話をかけ「やめる」と連絡を入れて、再び逃げる準備を始めた。
しかしもう夜遅い。電車の走ってない中、夜に駆けるというわけにもいかず、次の朝から逃げることにした。