第8話 レッドドラゴンの母と子
「みんな、伏せて!」
「え!」
突然、ルキルが警告、空から何かが降ってくる?
それは急激に大きくなりホバリング
風で樹木の葉っぱが吹き飛び、草をつかんで耐えた。
ルキルが長剣を抜き放ち前に立つ。
「そのほう、キロファイを使ったな」
「なにを!」
「待て、ルキル、オレが話す」
「え、ええ」
「使ったのはオレだ」
「ピピピ!ピ~」
検索で年を経たドラゴンは人間の言葉を理解し話すとあった。
「むむむ!その子はどうしたのだ?」
「盗まれた卵が孵化したのだと思う、ミリアとミャミが捉えられた盗賊の牢獄に居たので救い出した。火の国に返す旅の途中だ」
「そうか、わかったぞ、まず礼を言おう。母親が狂乱しておってな、我らも手分けして捜索しておったのだ。わしが連れ帰ろう」
「直接母親に渡したい。疑ってすまないが」
「ううむ、尤もだ・・・それならお主も背に乗るが良い」
「四人はムリかな?」
「年寄りだぞ」
「あ!そうだ、カルカルを使えば良いか?」
「なるほど魔導師だったな」
「魔導戦士オーマと申します、この戦士はルキル」
「わしは、レッドドラゴン族、第三長老のメラミンダルじゃ、さ、乗りなさい」
背中は畳二枚ほど、ウロコに捕まればなんとかなりそうだ。
『メガカルカル・ゼンイン』
「ふわふわする~」×3
「体重が十二分の一になってるから下手にジャンプするなよ」
「はあい」
ピピは大きくなって袋に入らないのでウロコにつかまらせ、抑えた。
「飛んでいいよ」
「しっかりつかまれ、ほう軽い」
ーーーーーーーーーー
羽ばたき、空に舞い上がる。
「凄いニャー」
「速いわ~」
「これでも超遅いぞ、落としたくないからな」
「うん、この速度なら息もできる」
「ルキル、顔が青いよ」
「高いところ苦手、忘れてた」
「よしよし、つかまれ」
「あん、オーマ様」
「ずる~い」×2
「うふん、うふん」
九日の旅程をひとっ飛び、二時間ほどで火の国、さらに火山地帯の生息地へ、岩山の一つにレッドドラゴンが群れをなし、中央のレッドドラゴンは数匹掛かりで押さえつけられていた。
「メロコンパクは力が強いメスのなかのメス、ワシの孫じゃ」
「この子はピピと名付けてしまったのですが」
「それは良い名前じゃ、真名は母親しか知らない」
「あ、そういうことですね」
近くに着地、ピピは背中からパタパタ羽ばたき、まっしぐらに飛んでいった。
「あ!まだ・・・ま、いいか」
母親の胸に飛び込んだタイミングで全員の魔法を解いた。
「ドラゴンも泣くんだ」
「泣かずにおれないときもあるわい」
「よかったわ、なんかスゴクしあわせ~~」×3
メラミンダルがドラゴンの言葉で説明するとみんなこちらに目を向け頭を下げ、開放されたメロコンパクがピピを抱き近づいてきた。
「ガウガウガウ~~ガウ」
「まだ人間の言葉は話せない、礼を言っておるのだ」
「ピピは賢い子です。オレは心が通っていたと思う。ピピ、良かったな」
「ピピーピピピー」
「別れは辛いけど、お前の居場所だ。お母さんに孝行をしなさい」
「ピ!」
「ほう、確かにわかっておるようじゃ、オーマ殿、どんな御礼をしたらいいか」
「火の国の太守が気を揉んでいるでしょう、噂が広まっていて・・・」
ルキルが聞いた話もして、手を打った方が良いと提案した。
「わかりもうした、太守にはわしから言おう、それとこれを・・・わしの抜けた牙じゃ、ドラゴンの牙を持つ者は勇者、出会ったドラゴンはオーマ殿の頼みを聞いてくれよう」
「・・・お気持ち、いただきます」
嫁達もピピとハグハグ別れの挨拶。
再びメラミンダルの背に乗り、火の国の太守の居城に飛んだ。
別れを惜しむレッドドラゴンの大群が火山地帯の縁まで並走した。