第3話 逃亡
『プリサーチ』
最後の牢にも何かが居た。
「なんでございますか?」
「寝てる・・・レッドドラゴンの子どもだ」
「まさか、このようなところに」
「火の国で卵が盗まれたという噂を聞いたニャ」
『キーレスキ』
「どうなさるんですか?」
「こんな不幸な状況を見逃せるか、家に帰してあげなきゃ」
「おやさしいわ」
「ピーピー」
「お、目を醒ましたか、悪者じゃないから安心しろよ、おいで」
「ピピ」
両手で持てば、股間も隠れる。
「大勢居るみたいだニャ」
「ここを通らないと外には出られない構造か、ふむふむ、日の光が漏れているあれが外へのドアらしい」
石段の途中に倉庫部屋があり、モノサーチの呪文で服と布靴を見つけ、着用、二人の服や装身具、装備や荷物も取り返し、ピピと名付けたレッドドラゴンを入れる肩掛け袋と武器のナイフを失敬した。
「ここは、メガステルスで切り抜けよう」
「え!オーマ様はそのような上位魔法までお使いになられるのですか?」
「まあね、鏡はないかな」
「さっきの部屋に手鏡がございましたよ」
「戻ろう」
ステータス表示が無いので不安、鏡に表示する裏技を思いだした。
「コレならもってこいだ」
『ミルステー・オーマ』
・・・わ!アイテムはこのナイフだけ、お金ゼロ!
トホホホ、ワープやセーブは機能そのものがないのかよ。しかたなね~
『メガステルス・ゼンイン』
「わあ!」
「みんなが虹色に見えるニャ」
「匂いも声も気配も消す魔法でもお互いはわかる。盗賊が入ってくるタイミングでドアをすり抜けるぞ、ぶつかっても気にせず駆け抜けろ。外に出て一番近くの森の中に逃げ込むんだ」
「わかりました」
「アイアイサーニャン」
「ミャミから行け、今だ!」
ミャミもミリアも成功した。オレは三人組をすり抜け、8mほどのトンネル通路で一人とすれ違いヒヤッとした。山道を少し下り手を振る二人を見つけた。
「最後のは魔導師っぽい。すぐ騒ぎになるだろう、ミャミ、案内してくれ」
「わかったニャン、あれがルサ山だから、こっちを突き抜ければ大きな道に出るはずニャ」
「ふう、道を外れてやり過ごして正解だったな」
「怖かったニャー」
「どこか休めるところはない?」
「だいたいの位置はわかるニャン、いつもの薬草の山はあっちニャ」
「じゃあ、気を配りながら・・・あ、そうだ」
『キロダーレ・敵』
手鏡に半径徒歩一時間程度の円表示、赤い点は敵の盗賊、結構きわどい。
「最初はこっちに行って、途中から右だ」
「凄いニャー」
身体は絶好調、ステータスが低いころ戦士ギルドで鍛えたのを思いだした。
「そういうことかな・・・」
ピピは感覚的に15キロほど重さだが問題なく運べる。
頭を袋から出し話しかけてくる。お腹が空いているのかもしれない。
「ちょっとストップ・・・ええと」
『検索・レッドドラゴン』
検索機能で調べ、エサは火と手鏡に表示された。
『プリファイ』
「ピピピ、ピー」
ピピは小さな火球をパクリと美味しそう、三つほどで目を閉じた。
「お前達の腹具合はどう?」
「オニギリ、あたしの荷物に、あった、二つしかないけど」
オニギリは携行食の通称で蒸しパンに具を挟んだモノだった。
「それじゃあ、ミリアとミャミで食べて」
「オーマ様が食べてくださいませ」
「オレはフルHPだからまだ大丈夫だよ」
「HPとはなんですか?」
「あ、いや、たぶん食べたばかりだ、さあ、ミャミに御礼を言って」
「はい、ミャミ、ありがとう」
「そこの倒木に腰を掛けて、水はある?」
「コップはあるけど、沢は遠いニャン」
『プリアクア』
水球が出現、コップで掬って飲ませた。
「凄いニャ、美味しいニャ」
「本当に美味しいわ、ありがとうございます、オーマ様」
「いやいや、なかなか・・・」
初めて味わう魔法の水は確かに美味い。
「ごちそうさまでした。美味しかった」
「ニャハハ、ママは料理が上手ニャ」