第25話 トルキア
「オーマ様、キョロキョロしすぎ」
「爆乳女がうようよですものね」
「よかった、あたしたち五十歩百歩だもん」
「・・・アルナはまだ五十歩ね」
「こら~ミリア~」
「ニャハハハ」
世界を往復するのも慣れてきた。
トルキア国は天然の要塞で守られている国、関所も主要な街道に一個所、もっとも主要な都市は三個所だけだ。王は居らず議会で民主的に運営している。
東のギザル、西のポルトに地下運河の出口で緑溢れる中央都チェニ、東西に運河を廻らし街道筋それぞれ七つの宿場町も栄えている。
ルキルの故郷は東一番目の宿場町トリポ。
チェニは二時間歩いてもまだ市街地、相当に大きな都市だ。
「ここなら露天風呂付き、やだ、エッチ」
「おいおい」
さっそくお風呂とはいってもそれほど熱くはなく、旅の疲れがとろける。
トルキア料理はうどんのような麺に様々なスープをかけるのが主食、変わっていていて美味かった。腹を満たした後はまったり。
あちこちから大人の儀式の音が聞こえていた。
「さすが、トルキア人は激しいみたいだね」
「なんですか?」
「いや・・・大人の・・・」
「チューしてモミモミして~~」
「うう、チュチュ」
まあ、大人の儀式じゃ無くても、嫁達をかわいがることは出来る。
夜空が綺麗だった。
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「む!」
「暴漢?、怖い~」
「みんな、下がって・・・」
「あ、ルキル」
大男が長剣を振り回して襲ってきた。
ルキアが長剣を抜きあわせ、火花が散る。
「オーマとはどいつだ!」
「オーマ様と言え、クソオヤジ!」
「あんだと~」
「な、なんだ、お父さんか・・・」
「すげ~」
「あ、お母さんかな」
「こら!あんた!」
「なんだよ!ヒデブ!!」
お父さんは飛び回し蹴りを喰らって地響きを立てて昏倒、ピクピク。
「かあちゃん、ただいま」
「見違えたよ、オッパイ揉んでもらってるんだね」
母娘はしっかり抱きあった。
「うん、オーマ様に、母ちゃんです」
「ど、どうも・・・あの、お父さん大丈夫ですか・・・生きてるみたいだけど」
「バカ亭主で恥ずかしいよ、さ、みなさん、家はこっち」
「・・・だから」
どの民家も平屋で広い庭があり、子ども達が格闘技や剣術稽古に取り組んでいる。
「わあ~ルキル」
「おかえり~~」
「うわ~い」
「ガハハハ、よしよし」
「これみんな、兄弟姉妹?」
「めっちゃ多い」
「もっと居るけどみんなあちこちで雇われてるよ、ここらじゃ有名な戦士一家なのさ、オーマ様にはルキルの妹五人全部も嫁にしてもらいたいねえ」
「い、いや・・・」
庭の長テーブルに座ってお茶を振る舞われた。緑茶の風習があるらしい。
お父さんは木陰に放り込まれて寝ている。
お母さんが軽々と引きずり運んで相当な力持ちだ。
「風の国から戻るギザの戦士を見かけたのですが、なにかあったのですか?」
「へえ、やっぱあの噂かね」
「なんです?」
「ポルトから出発した交易船がグリーンドラゴンに襲われているって」
「え~」
「まさか」
「二十年前から行方不明が増えて、どうも原因はそうらしいって」
「デマでしょう」
「漂着した水夫が船が沈んだときにグリーンドラゴンを見たって」
「う~む」
「ふわ~よく寝た、お~い、ルキルは遅いなあ」
「あんたが寝てる間に帰ってきたよ」
「え、お、おお~ルキル」
「こちらが、オーマ様」
「なんだ、ちっちゃい小僧じゃねえか。ヒデブ!」
「お、おい」
今度はルキルが跳び回し蹴り一閃、お父さんはまた横になった。
「・・・丈夫だなあ」
お母さんの手料理も美味しかった。
ルキルがちょっと涙ぐんでいた。母の味だからと。
そうだよね、うんうん。