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ライアース  作者: 日川文月
23/36

第23話 現実世界4

 現実世界に戻っていて三回目のデート、美亜は大人だけど大切にしたいから、一線は越えていない。

「綺麗に保ってるね・・・大丈夫?」

「うん、ありがとう」

「チュ」

「あん、あのさあ」

「夕方まで時間があるなら遊園地に行こうか、あまり遊んだりしないだろ?」

「うう~カラオケぐらいかな」

「妹を呼ぶから」

「え~~」

「いじめられてるって、目に余るようだったらオレが守る。友達が欲しいんだ」

「・・・わかった、あたしもいじめられたからわかる」

「優位に立とうとして獣人族を貶める人族も居る、互いに尊重して生きなくてはまっとうではないと思うんだ」

「獣人族?」

「わ、あ、いや、電話するね」


「橫浜の遊園地って日本丸じゃん」

「コスモワールドの近くだしいいだろ、な、瑠奈」

「うん、楽しい」

「メリーズ号と同じ四本マストだけど細長いな、いいかい、三角帆と四角帆は風向きによって張り方が違うんだよ」

「わあ、お兄ちゃん博学~」

「なんかな~」

「お姉ちゃん、手を繫いで」

「うん、瑠奈ちゃん可愛い」

「わあい」


 コスモワールドの遊具でも遊んだ。

「やっぱ、観覧車もいいね」

「高いね~」

「よく見えるな・・・うん、あれれ」

「なに?」

「あれは、美亜の妹の真美ちゃんじゃない?」

「どこどこ?」

「あの建物のバルコニーみたいなレストランかな、奥から二つ目のテーブルで男と・・・なんか泣いてるぞ」

「点にしか見えないよ」

「写真見せて貰っただろ」

「どんだけ~」

「電話してみたら?」


「いいけど・・・モシモシ」

「う、う、お姉ちゃん?」

「あんた泣いてるの?」

「う、う」

「前にいるのはだれ?」

「え、え、あの・・・」

「泣かされたの?」

「だって・・・別れるならお金だって言うの・・・」

「そこに居て!」

「金?許せんな、どうしてそんな?」

「どうして?」

「SNSで拡散させるって・・・裸」

「とにかく引き延ばせ・・・オレがなんとかする」

「そこにいて」

「う、う、お姉ちゃん・・・」


「おい!何電話してんだよ、マナー悪いぞ」

「だって・・・」

「三十万ぐらい貯金あるだろ」

「将来のためだもん」

「なんだよ、お前みたいなカス看護婦と付き合ってやったんだぞ、貢げよな」

「やめて!」

「こいつでハメ撮りして、顔もばっちりわかるんだ、スケベ女ですって」

「うう、気持ちよくなかったもん」

「なんだと!」

「お願い、消して」

「だから、三十万よこせ、そしたら消してやる」

「酷い・・・酔わせて・・・」

「バーカ」


「おい!」

「ん?」

「それだな」

「な、何をする」

「ええと・・・面倒だ!」

「わ!」

 憤怒にかられてスマホを奪いばきばき、メモリカードを粉々にした。

 ライアースのオレは強くなっているんだぞ!

「ま、まじか!」

「おまえ、女を泣かすのは悪い男だぞ、謝れ」

「ひいい~~」


 片手で胸ぐらをつかんで持ち上げると、廻りの客がサーと引いていく。

「た、た、たすけて~~」

「マサ君、やめて、ハア、ハア、ハア、速い~」

「お姉ちゃん!」

「お兄ちゃん、かっこいい、ハア、ハア、ハア、フ~」

「おい、土下座して真美に謝れ、バカモノ!」

「は、はい・・・ううう、すみませんでした!」


 男は脱兎のごとく逃げていった。

「ったく」

「・・・お客様、なにか」

「いや、すみません、汚してしまった・・・掃除します」

「い、いえ、こちらで」

「あの男が恐喝しこの娘を泣かせていた現場を押さえました。警察を呼んでいただけますか」

「え、え、いや、あの、その・・・」


 面倒を避けたい店側が穏便にと、廻りの客が拍手するなか堂々と出て行った。

「あ、伝票・・・」

「いいわよ、早く出ていって貰いたかったんでしょ」

「ありがとう、マサ君」

「いや、まだ怒りが納まらないな」

「でも、どこから見ていたの?」

「観覧車に乗ってたの」

「・・・マジ?」


「男は選べよ」

「酔わされて・・・連れ込まれたの」

「・・・」

「顔コワイ、気をつけて」

「しかし・・・」

「どうどう・・・相手は?」

「インターンの板家栄一」

「証拠もないが、上司や親に釘を刺そうか」

「あたしが悪者にされるわ」

「すまない・・・」

「いいの、お姉ちゃんのマサ君が本当にいい人だってわかった」

「なにかあったらオレに言え、なんとかする」

「もう、キューンとしちゃう」

「あたしも~」

「ええと、妹の瑠奈と友達になって欲しい」

「わかった、遊ぼうね」

「やった~」


 ーーーーーーーーーー

 母が妊娠と聞いて素直に喜んだ。瑠奈も同じ思い、良い子だ。和也さんも泣いて喜んだ。

「母さん、不安かも知れないけどオレが守る」

「おいおい、オレの妻はオレが守る!」

「やん、あなた・・・ありがとう、マサちゃんもありがとう・・・嬉しい」

「うんうん」


「あたし、お兄ちゃんに守って貰いたい」

「対決するか?」

「うん、勇気を出す」

「いじめっ子かい」

「いじめる子なりの暗い理由がある、オレは人を信じたい、わかるかな瑠璃」

「よくわからないけど・・・漊瑠華ちゃんはいつもつまらなそうにしている」

「今のうちに治してやろうか、瑠奈」

「うん、そうか・・・お医者さんみたいね、お兄ちゃん」

「よしよし」

「マサちゃんのほうがお父さんみたいね」

「え~」

「あなた、やだ、すねちゃった」

「アハハハ、好きですよ、お父さん」

「え、今・・・」

「あ、そうか、お父さんか・・・お祝いにビールでも飲みますか?」

「うん、うん」


 瑠華ちゃんは対決で詫び、瑠奈が許したことで親友になった。

 理由は名前が似ていて気にくわないことだった。

 それだけではないこともわかるが、子どもはそんな些細なことで関係性を良くも悪くもしてしまう。

 看護婦姉妹との交流だって。

 女を慈しむのは何処の世界でも男の役目だと思う。

 あの男については憐れなヤツだと思うだけだ。暗い理由があるのだろうか。


 現実世界とライアース、恋しく思うと翌朝はそっちの世界に戻っていくようだ。

 ちょっと混乱するけど・・・どっちも大切に思う。

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