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ライアース  作者: 日川文月
21/36

第21話 水門の問題

「・・・各水路の門が勝手に開けられたり閉められたりというわけなんだね」

「はい、オーマ様、その通りでございます。

 大湿地帯は大小八十もの湖沼で形成され、最終的には、両国共に五湖から始まる河川や水路に導かれて平野を潤します。

 各湖沼間の水門を操作すれば八割まで偏らせることが出来ます」

「豊富な水量とはいえ半分以下まで減ったら不作になるのは目に見えています」

「水門があると船の交通は?」

「高低差のある場所では水門が必要になります。この二十個所は」

「あ、そうか、でもその他は?」

「交通費を払って通ります」

「面倒だね」

「しかし、維持費がありますし・・・」

「両国あわせて四百ほどもあって大変だね」

「はあ、広くてとても管理できません、暗闇に紛れて賊が・・・」

「空から見てみたいなあ」

「そんな、ブルードラゴンに頼まない限り」

「あ、そ」


 空き時間で各代官所を訪問、湖沼間の水路を船で移動するのは歩くよりも楽で、それぞれの領土にある代官所へは便利、一日で廻れた。

「南端の街はパルだったね」

「へい、すぐ行けますです」

「水門が閉まってなければだろ」

「へい、通行料も取られますでさあ」

「この水門ってかなり古いよね」

「あっしが産まれる前でさあ、慣れてしまえばコレと言って不便はありませんや」

「だよね~」

「船って速い、船頭さん凄いニャ」

「いやあ、オーマ様が魔法をかけてくれたおかげでさあ」

 キロカルカルなら船頭さんが操船に慣れるのに丁度良かった。

 全員乗って呪文を唱えると凄い速度、和船の艪も面白かった。


「こりゃ、約束の倍ですが?」

「あちこち行って遠くに来ちゃったから、夜でも帰れる?」

「水門次第で、まあ、慣れてますし下りが多いんで」

「ありがとう」

「気をつけてね」

「へい、ありがとうござんした」

 

一緒に旅をすると情が移る、手を振って見送った。近くの船宿に宿泊する。

「オーマ様、明日は?」

「図書館があるらしいから」

「え~~」

「ここの水路や水門の歴史を学びたい」

「ええと~」

「お前達は釣りをしてこい。ここの亭主がパル沼では超でかい竜魚があがると言っていた」

「オレがあげるぜ」

「釣りは運不運あるのよ、みんなの運次第」

「じゃあ、あたし~」

「みんな運はいいわよ、ね~」

「そのとおおり、さあ、みんなでチュー」

「わ、わ、おお、うう、チュチュチュ」


 ーーーーーーーーーー

「この文献をご覧ください」

 気がついたのは表音文字、アルファベットじゃなくカタカナが変化した物だと気がついて読めるようになった。

 神聖文字も漢字が変化しているようなでなんとなく読めた。

「なるほど、五十年戦争前の水路に水門が出来たのか」

「はい、水路を塞いだり破壊したりの争乱がありました。五十年戦争後はそこに水門を設け管理してきたという歴史がございます」


「ふうむ・・・水門を全部無くしたら?」

「それは考えたこともありません」

「五十年戦争前はそうだったんじゃないの?」

「それはそうですが・・・高低差もございます」

「うん、二十個所はそうだってね」

「・・・我らの理解の範疇にはございませんです」

「すまん、ま、こういう図書館があること自体、ランス国の文化を感じるね」

「ありがとうございます、オーマ様、わたくしも不安は感じております。獣人どもの陰謀と聞いておりますが」


「あまり思い詰めるな、そういうデマをまいているやからがおるのだよ」

「え、それは・・・」

「今はまだわからないが、獣人にそんなに悪いことができると思う?」

「いえ、わたしはそう思いません、友人も心を痛めております」

「わたくしも」

「その気持ちを大切にしよう、交流がこの頃盛んでは無いと聞いている」


「はあ、オーマ様、では・・・」

「わたしは嫁五人で精一杯、今日は本当に勉強になった。これで今夜は友人達とパーティを開いてくれ」

「そ、それは・・・」

「友情を大切にね」

 五人に金貨五枚を残して宿に帰った。


「ちっちゃ」

「やだ~」

「ルキルが力任せに引っ張ってテグスが切れたんだから~」

「うう、すまん」

「でも沢山釣れたね、楽しかった」

「そういう時間も大切だよ、スープにして貰おうか」

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