第20話 ジャイラ工房
買うか作るか時間はかかるのでお薦めの宿に三連泊、高いが資金は潤沢だ。
「わあ、広いバルコニーもあるニャ」
「夕日が綺麗だよ~」
「素敵~」
「テーブルもございますから夕食はこちらにお持ちしましょう」
「うん、頼む、とっておきたまえ、明日はジャイラ工房への案内も頼む」
「かしこまりました」
銀貨のチップは効き目抜群だ。
ライアースに電気はないが、どの街にも魔法ランプ屋のレンタルで夜間の灯りに困ることはない。
トイレはくみ取り式だが魔法で匂いもなく清潔、近隣の農家が堆肥用に利用している超省エネ世界、都市は上水道網も発達している。
宿の魚料理はどれも旨く、微炭酸の爽やかな白葡萄の飲み物も良かった。
「ルキルはお酒じゃなくて良かったの?」
「いいの、チューモミモミの前に眠くなったらやだ」
「キャハハ、連泊だからね~」
「うん、お前達が大好きだ、癒されるよ」
「あん、何かがきゅう~ってなった」
「あたしも~」×4
五人ぐらいが丁度良い、考えてみればヤポン以外の各地の女達、なにかあるのだろうか。
風に乗って大人達の儀式の音が聞こえてきている。まだ。みんな大人じゃ無いのか?
ーーーーーーーーーー
「へえ、旦那、これには客十人乗れるけどね、操船二人にこぎ手八人だよ」
「あ、そうかどうりで・・・帆船は?」
「一本マストなら水夫が四人で動かせるよ」
「基礎的な知識が欠けているみたいだ、コレで少し教えてくれ」
「あ、すんませんね、お茶でも飲むかい」
「ありがとう」
嫁達はすぐに飽きて観光に行ってしまった。
「親方、お客から難しい注文なんでさあ」
「え、あ、うん、行くよ」
奥から恰幅の良い壮年の男が来た。
「工房の主人、ジャイラ親方でさあ」
「どうも、ジャイラです」
「オーマと申します、よろしく」
「オーマさん、難しい注文と聞きましたが」
「ええ、実は・・・」
「・・・魔法には疎いもので・・・その魔法で本当に重さが十二分の一に?」
「もっと軽くなる魔法もあるけど、その程度が一番使いやすいかな、見せましょうか、何か重くて困ってる物ありますか?」
「ええ、ええと、ポポス、なにかあったっけ」
「場所を考えずに作っちゃって湖まで運べない船がありますぜ、親方」
「ううう」
「それじゃ何人か集めて」
「へい」
ーーーーーーーーーー
ドックより陸に大きな船、塗装がすんでいるのに埃まみれだ。台座の下に丸太のコロを入れて動かそうとした跡があるが、土が柔らかくめり込んでいてコロが折れていた。
「後先考えずに注文受けちゃうから、ぶつぶつ・・・」
「ドックが空けば運べると思ったの!オーガが手配できなかっただけ」
「それじゃあ、そこの上に運べばいいんだね」
「へえ、後はマストを立てて仕上げるんでさあ」
「重さは?」
「七トンぐらいです」
「六百キロか、八人じゃ難しいか」
「一人百キロぐらいはいけますぜ」
「距離もそんなにないからいいか、台座に丸太を四個所渡してくくりつけて、持ちやすくしよう、それから、どの方向にどう運ぶか打ち合わせて」
「は、はいな」
半信半疑でも言うとおりにした職人達だった。
『メガカルカル・一時間』
手を触れれば名前がわからなくても軽くなる。
「い、いいんですか」
「うん、せーので持ち上げて」
「せーの、わあ、本当だ」
「軽い~」
「慎重に運んで~~」
いざというときのために上位魔法をかける用意もする。
心配はいらず職人達は筋骨隆々、普段から重たい物を運び慣れている。
「はい、設置終わりましたぜ」
「じゃあ、魔法を解くよ」
手を触れて解の魔法、船はギシギシと音を立てた。
「持ってみようぜ、せーの・・・うう、ムリ」
「すげえ!」
「魔法はどれくらい保つのですか、オーマ様」
「指定すればMP次第だが、指定しなければ一日」
「よくわかりました。あと、オーマ様、翼についてお教え願えますか?」
「うん、揚力というのはだね・・・」
ジャイラの物言いが丁寧になって様付け、店に戻った。ポポスは職人達を指図して早速マストを立てる作業に取りかかっていた。




