第19話 イタル大湿地帯へ
「ふう、やっぱ、堅苦しいのは苦手だなあ」
「すみません」
「いや、アルナもミリアも使命が果たせてほっとしたろ?」
「はい」×2
「これからはなんの心配もなくオーマ様にお仕えできるわね」
「そうだニャ、恩賞も凄いことになったニャ」
「本当にトルキアに?」
「ルキルを貰えるか聞かなきゃ」
「手紙には親とも思えぬ酷いことが書いてあった、お前女だったっけだって」
「キャハハハ」
「もう一つはイタル大湿地帯だ。問題が大きくなりはじめたのが二十年前、きな臭いだろ?」
「さすがオーマ様」
「また五十年戦争なんてことはあるのでしょうか」
「悪意を感じるよ、シルバードラゴンのことも気に掛かる」
「そうですね」
ランス国の首都パリスから南方への街道は十六日の旅程でイタル大湿地帯入り口の都市マルセに到着する。
ランス国は工芸美術品が発展して多くのギルドが魔法工芸士を育成、武器・武具・硝子器・陶芸品・木彫品・布など原料を輸入して加工商品として輸出、したがって商人も多く、大きな両替商もあった。
金貨銀貨銅貨の実物は軽量合金でランスの魔法造幣局で魔法工芸士が製造。
もっと大きな金額を動かすことが多い商人は両替商の取引手形を利用、手数料を払ってもメリットが大きい。
ゲームでは考えもしなかった実学になるほどと思った。
経済活動にたずさわるのも大きく考えれば人を救う職業だ。
平和な世は武器・武具は実用品から美術品に成り下がり、魔法もメガ止まり、宮廷魔導師長も更に上級魔法があることは知っていた。
勇者オサマオトスの時代のほうがゲームに近いかも知れない。
盗賊団の被害は全方位的で増加、商人は隊商を組みトルキアの戦士を雇う。
街道沿いは見所も多く、魔法は使わず普通に歩いて各宿場に泊まった。
安宿のほうが気楽だが、大きなベッドのある星付き宿、毎日五人とチューしてモミモミ、HPはアゲアゲ状態だ。
もしかしたらエッチポイントかも。
「オーマ様ボーっとして、まさか前を行くトルキア人達に?」
「ちゃうよ・・・いつのまに」
「風の国への街道からきましたよ、次の宿場町ジュネーで停まるでしょう」
「水夫にも多かったな」
「過酷な環境に耐えてきた歴史、強くなるのね」
「そーかなー」
「そういえば、アルナは背が伸びてオッパイも膨らんできたね」
「えへえへ、みんなのおかげ~」
ロリ萌えもあるが根は巨乳好き。
揉み放題の世界なんて良いなあとムクムク。
「やっぱ、モッコリじゃん」
「ち、ちがう、ううう」
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「高名な戦士ルキル殿とお見受けいたす」
「いかにもルキルだが、オメーは」
「オレは、ギザルの戦士カート、お見知りおきを」
「知らんな」
「・・・失礼した」
食堂で夕食中、同じ宿に投宿したトルキア人が声をかけてきて、お辞儀してテーブルに戻った。
「おいおい、そんなにつっけんどんな」
「トルキアの男はドM、いじめられると喜ぶ体質だ」
「ひ~」
「三人も女戦士を引き連れてるじゃん」
「尻の青い連中さ」
「蒙古斑かよ」
「なんですか?オーマ様」
「い、いや、なんでもない」
「オリハルコンのプロテクターなんて、金回りがいいんだな」
「なぜ風の国から?」
「問題が起きている噂はないよね」
「情報が集まるパリスでも聞かなかったな」
「気にすることはないです・・・ギザルはオリハルコンの産地だから」
「あ、そういうこと」
「宿場はあと四つか、ちょっと歩くのに飽きてきたかな」
「急ぎますか?」
「いや、ベッドで話すよ」
「まさか、新しい嫁とか」
「ちゃう」
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ベッドでの寝物語はいつもしている。
「船?」
「メガカルカルで軽くして翼をつければ、風魔法で飛ばせることができる」
「空飛ぶ船・・・もしや伝説の」
「え?」
「勇者オサマオトスの船は何処にでも飛んで行けると文献にありました。ベルンに一艘、朽ち果てていて普通のボートでしたけど」
「それじゃあ間違いはないだろう、なんだ、ことごとく・・・」
「いいえ、さすがオーマ様、普通では考えも及びませんわ」
「そうですわ」
「まったくです、オーマ様は本当にご立派」
「そう?ナハハハ」
「立ちなおったところでチューして~」
「う!」
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翌朝出発前、宿の主人にボートのことを聞いた。
「ここら辺でも川にボートを浮かべますよ、マルセのジャイラ工房が有名で二人乗りから二十人乗りまでいろいろな種類があって評判がいいです」
「良いことを聞いた、とっておきたまえ」
「は、ありがとうございます。宿泊なら『ミサキ亭』が最高ですよ」
プリカルカルで二日後はマルセに到着、湖畔の美しい街並みは城壁も立派だ。
「マルセ湖はユーロで十番目に大きい湖なんですよ」
「ドリア湖以外は五十歩百歩って聞いてるわ」
「それは十一番目からですわよ、漁獲量も多く、魚料理は自慢ですの」
「楽しみにしてるよ」
「では、湖がよく見える最上階の最上のお部屋へご案内します」
「うん、ありがとう」