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私は席から立ち上がって、坂本さんの耳に囁いた。
「さあ、行きましょう」
くすぐったかったのか、彼はビクッと震えた。
戸惑った表情で私を見る。
「行くって…どこに?」
「楽しいところよ」
私は彼にウィンクした。
真っ暗な闇の中、無数の青いレーザーが、きらめき走る。
ブースには、リズムに乗るDJ。
スモークの漂う広いフロア中に、たくさんの男女が、ひしめき合って踊ってる。
「凜さん!!」
坂本さんが大声で私を呼んだけど、ほとんど聞こえない。
私は坂本さんに抱きついて、彼の耳元に口を近づけた。
「どうしたの!?」
「い、いや…」
坂本さんは、口をパクパクしてる。
顔色も少し青ざめちゃってるわね。
「ど、どうしたらいいのか…」
「クラブは初めて?」
「は、はい」
「かわいい」
私は坂本さんのアゴを撫でた。
「難しく考えないで。あなたは自由なの。さあ、楽しみましょ」