7/15
7
それでも、これが人生最後の恋と意気込んでる坂本さんは食い下がった。
そこで開き直って本性を現した悠美さんが、坂本さんにトドメを刺すべく出してきたのが。
「取引先の大手企業社長の、ご子息との結婚話です」
坂本さんは、とても苦しそうに言ったわ。
私は優しく彼の手を撫でてあげた。
それにしても…どこかで聞いたような話ね。
企業社長の子供同士の結婚か…。
「まだ、お互いの写真をやり取りした段階ですが…彼女が言うには親同士が、とても乗り気なので間違いなく結婚することになると」
坂本さんの声が震えてる。
また涙が、こぼれ始めた。
「そう」
それきり黙った坂本さんに、私は声をかけた。
「それは本当に、つらかったわね」
「すみません…自分がバカだって…女々しいとは分かってるんです。彼女の幸せを願ってあげるくらいの度量があれば…でも、どうしても彼女が…悠美さんが忘れられなくて」
「そりゃそうよね。すぐに忘れられたら、そもそも好きじゃなかったってことですもの」
「はあ」
坂本さんは、ため息をついて、ジントニックの残りを飲み干したわ。