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「そ、そんな…」
悠美の右手が、だらりと下がった。
私はウィッグを着け直して、坂本さんのそばに戻った。
「さあ、行きましょ」
「あ…ああ」
横を通り過ぎるとき、悠美が私をにらんだ。
「あんたの父親にバラしてやるから!!」
私は悠美をにらみ返した。
「やってみたら?そうなったら、あなたの遊びも暴露されるわよ」
悠美は唇を噛んで黙った。
私と坂本さんは手を繋ぎ合って、クラブを後にした。
夜の公園のベンチに、私は1人で座ってた。
「はい、これ」
坂本さんがベンチ前にある自動販売機で買ったスポーツドリンクのペットボトルを私に差し出した。
私がキャップをひねって口をつけると、坂本さんはベンチに座った。
私のすぐ隣。
「説明してもらえるかな?」と彼。
「うーん」
私は顔をしかめた。
「簡単に言うとね。男のときも女のときも、どちらも私なの」
私がそれきり黙ってると坂本さんが口を開いた。
「それだけ?」
「そうよ。シンプルでしょ」