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トイレの鏡で口紅を塗り直す。
自分の顔を鏡でチェックする。
「はあ」
ため息が出た。
私、何してるんだろ?
あんなことして。
坂本さんを余計に混乱させるだけ。
彼が私を受け入れてくれるかどうか、全然、分からないのに。
何て軽率なんだろう。
「はあ」
もう一度、ため息。
仕方ない。
時間は戻せない。
身支度を整えて、私は坂本さんの居る場所に歩いた。
「悠美さん!!」
坂本さんの声。
何事?
坂本さんの前に2人の男女が立ってる。
1人は軽薄そうな男。
そして、もう1人は。
若くて、キレイな女。
私、この人、見たことあるわ。
「悠美さん!!」
坂本さんが、もう一回、女の名前を呼んだ。
そう。
彼女が悠美なのね。
「うるさいわね!!いい加減にしなさいよ!!」
悠美が怒鳴った。
「誰?」と軽薄そうな男。
「パパの会社の社員よ。仕事が出来るっていうから、ちょっと遊んでみたら、クソつまんないおっさんだった。それで、もう終わりって言ってるのに、しつこくてしつこくて」