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彼を壁に立たせて、正面から抱きつく。
そして、彼の胸に唇をつけた。
「ちょ…凜さん!!」
坂本さんの慌てた声。
私はそれを無視して、今度は彼の首筋にキスした。
「何を…」
「ごめんなさい」
私は彼の瞳を至近距離から見つめた。
「たぶん、後で怒られると思うから、先に謝っておくね」
「謝る?何で?凜さんが?」
「うん。でも、今はガマンできないの」
言い終わると同時に、私は彼の唇に自分の唇を重ねた。
濃厚なキス。
ごめんね、坂本さん。
永遠にも思える幸せな時間。
私は彼から唇を離した。
彼の耳元で囁く。
「誰にでも、こんなことしないのよ。それは信じて」
坂本さんは口を開けて、呆然としてる。
そりゃそうだよね。
私たち、ほんの2時間前に出逢ったばかりだもの。
私は彼の口についた口紅を拭ってあげた。
「お化粧、直してくるね。ここで待ってて」
私は、そう言ってから、坂本さんをその場に置いて、トイレに向かった。