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夜11時。
バーのカウンター席。
私は1番端の席で、お気に入りのお酒を楽しんでた。
この店は、お洒落で雰囲気が落ち着いてて好き。
最近は毎週のように来てるわ。
私の他には、まだお客はまばら。
カウンターは私の反対側の席に年配の上品な男女が1組だけ。
このぐらいだと静かに飲めるから、丁度良いよね。
あら?
新客が現れた。
30代前半?
背が高くて、がっしりしてる。
学生時代に何かスポーツをやってたんじゃないかな?
ここに入って来るまでに、頭をかきむしりでもしたのかしら?
ずいぶん髪型が、ぐしゃぐしゃね。
顔はワイルド系。
そこまでイケメンではないわ。
でも、私が好きな顔。
ネクタイはしてない。
ワイシャツのボタンを2つ外してる。
スーツが汚れて…たぶん、この人、どこかで転んだのね。
彼はフラフラとした頼りない足取りで、バーテンの正面のカウンター席に、ドサッと座った。