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緑葉亭の食事風景

逆飯テロ話です。食事前後の方はお気をつけください。

※筆者の胃腸の都合により、ふつうの食材に切り替わることがありますので、あらかじめご了承ください。

 俺は、自然と目を覚ましてボーっとしている。

 朝の木漏れ日が、部屋に差し込んでくるにしたがい、その明るさが俺をじょじょに覚醒させていくかに思われて。

 

 カーン、カーン、カーン、カカカカン、カーン

 

 階下から、なにかをトンカチで叩くような大きな音が響いてきたんだ。

 店内の改装工事でもしているのだろうか? 音はそれくらいに騒がしく響いてきていて、そう思うとにわかに階下に行くのもためらわれていたんだけど。



 グゥゥ


 恥ずかしい話で、音が鳴り止む前に腹が鳴ってしまった。

 トンカチで叩いていた音は、今は少しずつ止んできてるようだし、うん、ちょっと下の階の食堂の様子だけでものぞいてみようかな。

 俺は勢いよくベットから体を起こすと、食堂に向かうため、階段を降りていったんだ。

 店内の片隅にはテーブルが空いていたので、俺はさっそく腰をかけた。

 俺より少し遅いタイミングで、俺のすぐ横のテーブルには新しく年配のお客さんがきたみたいで、慣れた手つきで椅子を引いて座るとなにやら手帳を取り出して確認しだした。なんかサラリーマンみたいな人だな。

 そう思う間もなく、響いてくるこの足音は……。 


 タッタッタッタ


 ソニアちゃんだ。元気よくこちらまで駆けてきた。


「おはよー。おにーちゃん!」

「おはよう。ソニアちゃん、今日も元気だねぇ」

「えへへ。ソニアはね、元気いっぱいなんだからね!」

 

 そう言って、ソニアちゃんは腕に力こぶを作ってみせる。

 うん、今日も平常運転みたいだな。いつでも元気なソニアちゃんは見てるほうも元気にしてくれるから不思議な子だな。


「今、朝ご飯持って来るから、ちょっと待っててねー!」

「おじちゃんもいつのもの持ってくるから少しだけ待っててねー!」


 そう言って、俺と隣の年配の男性のテーブルにお水を置いてくれた。

 隣の男性は少し忙しそうに手帳を見ながらもソニアちゃんのかけた言葉に軽くうなずいた。

 俺も軽くコップに口をつけると水を少しだけ口に含んで喉を潤して。


「ありがとう。待ってるね!」


 改装工事はきっと終わったんだろうな。

 ソニアちゃんは朝食をさっそく持ってきてくれるそうで、俺はその好意に甘えることにする。

 それにしても、バタバタと厨房に入ったりほかのお客さんに食事を持って入ったりお会計したりとてんやわんやのはずなんだけど、おかみさんと、うまいこと連携して次々とお客さんをさばいていってる。

 それはおかみさんとソニアちゃんだけが可能なコンビネーションとでもいえばいいものだろうか。

 なんてことを考えながらの食事を待つ時間もなかなか悪くないもんだ。

 そうこうしているうちに、ソニアちゃんが両手で抱えた大皿に、お皿よりもさらに大きい料理を乗せて持ってきてくれたんだ。

 

「はい。どうぞっ!」

「ありがとう!」

「はーい。ゆっくりしてってねー」


 ソニアちゃんはそう入ってまた厨房に駈け出していく。

 よく焼けているのか食欲をそそる匂いが食欲を刺激する。 


「いただきます」

 

 うん、しかし、なんだろうかこれは?

 俺は目の前を料理を食べようとして、ちょっとよく調理された食材と目があってしまった。

 ほんの少しの見つめ合う時間……。

 だけど、そこから何も生まれることはない。

 相手がどでかいなにかの金属でできたかのような硬質な感じにメタルに光るカニで、しかも羽が生えていたからだった。

 全長40センチは超えているだろうか。ただ、よく焼けているからだろうか、湯気がたつさまはまるで沸騰したヤカンから漏れ出す蒸気のようにも見える。 

 大皿の上には、別の小皿が小さく右下のほうに置かれており、そこには白くきらきらと輝く塩のようなもの盛られている。

 逆に左のほうには、トンカチが置いてあった。

 

 俺はまず、このでかいトンボの食べ方をそもそも理解することができなかった。

 そうこうしているとソニアちゃんが隣の年配の男性の元にも、同じ料理を持ってきてテーブルに配膳した。

 

「はい。おじちゃんもどーぞっ!」

 

 隣のおじさんはこれを果たしてどのように食べるんだろうか。

 ちょっと失礼かな、とは思いながらも、隣の席に着いている男性の食事風景をついついのぞいて見てしまう。

 

 ふむふむ。

 なるほど。

 カニの両羽を手でむしり取ったらテーブルの脇にソッと2枚重ねるように置く。これが第1ステップだ。

 次に、このカニの胴体の甲羅を強くトンカチで上から叩いて、殻を割る。ポイントは力強く! だろうか。

 割れた甲羅の中では、すでにトロトロに溶けたスープが出来上がっていて、すでに匂いからして食欲をそそるんだけど。

 

 年配の男性はさらにそんなスープの中に、ほんの一掴み、白いキラキラ塩? を指でつまむとホカホカに湯気の立った白いスープに振りかけた。

 最後にはスプーンですくって食べる感じで間違いはなさそうだ。

 実に美味しそうにスプーンですくっては食べ、すくっては食べてと、夢中なふうだ。

 そんなに美味しいんだろうか?


 それにしてもそもそもこのキラキラ塩? はなんなのだろうか。

 手で少しだけつまんで、軽く舐めてみたんだけど。

 塩なんだけど、魚介類の風味もあって、不思議な味の塩なんだけど、なんだかこの塩だけでもいくらでも味わえてしまいそうだ。


 まぁ、なにはともあれまずは実践だ。

 俺はさっそく、カニの両羽を手でむしりとってテーブルの脇に置いた。

 

 そして、次がこのトンカチだな。

 俺は強くグッとトンカチを握りしめると、カニの甲羅叩いてみたんだけど、割れる気配がまったくしなかった。


 そう、それは当たり前で、これは力強く叩く必要があるものだからだ。

 俺は隣の年配の男性が握っていたように、今度はトンカチのグリップを腕の力を抜いて柔らかくソッと握った。

 そして、カニの甲羅に向かって叩きつける。トンカチが甲羅に触れそうなその瞬間に、手にスナップを効かせるように力を入れてみた。

 

 カーン


 軽快な音が響くと、少し甲羅にヒビが入った。

 なるほど、この要領で間違いはないらしい。


 カーン、カーン、カカン、カーン


 朝起きたときに聞こえてきた音を今度は俺自身の手で響かせることになった。

 なるほど、あの音は改装工事の音じゃない、ただ食事をすると自然と鳴りだす、そんな食材ならではの音だったんだね。


 そうして、俺は隣のおじさんを見てみたんだけど、むしり取ったカニの羽をうちわにようにしてあおいでいる。

 確かに、この殻を割る作業は、なかなかの重労働で、俺もけっこうな汗をかいてしまったので、カニ羽であおいでみるとわずかに発生するそよ風が気持ちいい。異世界は本当に朝食からしてパワフルなんだ。


 俺は汗が引いたあとで、さっそくトンボから取り出した白い身にキラキラ塩? をかけて食べてみた。


 パクリ


 こ……これは、見た目通りのカニの味でなんだか懐かしい。

 試しに、キラキラ塩? をかけずに食べるといかにも味気ないのは、空を飛んでいるカニだから、塩分を含んでいないせいだろうか。

 ただ、その空を飛ぶカニに塩を振りかけると、劇的に美味しくなって、そうだな、日本ふうにいってみればズワイガニふうの味とでもいえばいいかもしれない。


 結構大きなカニスープだったんだけど。

 うん。完食しました。


「ごちそうさまでした」


 俺が食後に膨れたお腹を抱えながら、少しゆっくり椅子にもたれていると、ソニアちゃんがタタタと駈けてくる。


「今日の飛行カニカニはどうだった? おとーちゃんの得意料理なんだよ!」


 ソニアちゃんは、慎ましい胸を大きく張って自慢げだ。

 得意料理? 

 メタルなカニを丸ごと焼いたか茹でたかしただけなんじゃ?

 もちろんそんなことを口に出して、ソニアちゃんをがっかりさせるようことを俺はしない。


「うん、すごく美味しかったよ。それに、この塩も不思議な味だねぇ」

「うん。この前ね、塩くじらが降ってきたんだよ! だから、大量でいっぱいなんだよ!」


 なるほど。新しいキーワードだな。


「クジラが降ってくるの? 海から?」


「おにーちゃん知らないの? 塩クジラはお空から降ってくるんだよ!」


 ソニアちゃんは小首を少し傾げてキョトンとしている。


「そっか、ごめんね。おにーちゃんは、ちょっと前にカムシンから来たばかりなんだよ!」

「ふーん。カムシンには塩くじらは降ってこないんだねー」

「そうだね。くじらは降ってこないけど、なんかよくわからないことなら、おにーさんの身にいっぱい降りかかってくるかなぁ……」


 いかん。就活失敗でトラックに跳ね飛ばされてからの今までのことをついつい思い出してしまった。

 俺が少し落ち込んで、しんみりとしてしまったんだけど。


「ふーん。色々あるんだよね、でも、おにーさんはいつもご飯をいっぱい食べてるから大丈夫だよ。おとーさんが言ってた。ご飯をいっぱい食べると元気になるんだって!」


 ソニアちゃんはそう言って純真な目で、俺を元気づけてくれる。


「そうだね。大丈夫。いっぱい食べたから、おにーさんは今日も元気だよ!」

「うん、良かった!」


 うん、間違いない。ソニアちゃんの天真爛漫さは周りにも自然と伝わっているみたいで、周りのお客さんもそんなソニアちゃんを見て、ニコニコしている。


「おにーちゃん、これお弁当だよ! うちでお泊まりしてくれてるから特別だよっ! あとで食べてね!」


 そんなソニアちゃんからもらったのは、さっきのカニトンボとは違って、妙に見た目の生々しい、まるで生きてるようにも見える巨大なトンボだった。鬼トンボというんだそうだけど、見た目はもう黒と赤と紫の斑点が入り乱れていて、どこかヌメッとしている。そんな禍々しいトンボをポシェットには入れはしたんだけど、ソニアちゃんには悪いけど、さすがにこれを食べる気もしない。


 俺はそんな内心を隠して、席を立ってソニアちゃんに手を振ってバイバイをした。


「お弁当、ありがとうね!」


 しかし、ソニアちゃんの元気な姿を見ていると不思議と眠気もすっかり覚めてやる気も湧いてくる。

 今日も一日、うん、頑張るかっ!

 


 宿屋『緑葉亭』を後にすると、すぐマリーナさんの魔法薬草店のたたずまいが見えてくる。

 表扉には『休業中』のプレートがかかっている。今ごろは、冒険街ランドパークに向かう馬車の中だろうか。


 雑多な小道を通り抜けて大通りに出ると、行き交う人でごったがえしている。

 俺は大通りに立つどの建物にも負けないくらいに、ズシンとその威容を讃える冒険者ギルドの扉をさっそくくぐると中に入った。


 ギルドの中に入ると、忙しい業務の合間だろうに、受付嬢さんはすぐに俺に気がついてくれて、なんと軽く会釈までしてくれたんだ。

 この前のランクアップ申請のときにも、すぐにそれと察してくれるあたり、すごく気がきく良い人なんだろうな。


 さて、まずは、ワイバーンの納品からだな。


「ハンスさん、おはようございます。さっそくですが、納品に伺いました」

「おはよう、真斗。今日はずいぶんと早いな!」


 ハンスさんは今日はタンクトップを着ているためか、ムキムキの筋肉がふだんより目立って見える。


「で、真斗、今日の納品は薬草か? それともまさかまたゴブリンを殺ったのか?」


 おっさんは俺に大型のある程度大きなバスケットを指し示すとそう言った。


 多分、気をきかしてくれたのだろう。

 薬草、毎回結構な量を持ち込んでるもんな。


 でも、今回は薬草ではないし、もちろんゴブリンでもない。

 ワイバーンの納品だ。

 明らかに、このバスケットには入らないだろう。


「すいません。せっかくのお心遣いだとは思うんですが、そのちょっと大きさが足りなくて、そのワイバーンの納品なんです」

「ワイバーン? ワイバーンの鱗でも拾ったのか? 牙でも拾ってきたってんなら、バスケットの大きさが足りないだろうから、こっちのも使っていいからな!」

「あ、いえ。そのそれでも入りきらないと申しますか」

「うん? なんだ真斗らしくないな。はっきり言わないとわからんぞ!」

「えーと、その……」


 ええい、もう手間だわ、説明が。

 それにふつうワイバーンの納品とは言って見たけど、やっぱり信じられないよね、そりゃあ。

 俺はアイテムポシェットからワイバーンの頭を取り出すと、3分の1ほど、引っ張りだしてハンスさんが見るのを確認したあとで、すぐにまたしまいこんだ。

 ポシェットから、一瞬のぞいたワイバーンの口と牙が覗くは今にもこちらに喰らいついてくるようにも見えたはずだ。

 

「ウオオオオオオ!」



 ハンスさんが、わき目もふらずに後ずさる。


 ドガーン


 ハンスさんは、壁まで思いっきりぶつかると、ようやっと止まった。


「おい、真斗それはなんだ……?」


 おっさんの食い入るように見つめてくる視線だ。


 いや、おっさんにそんなに見つめられても、うれしくはないぞ。

 ただ、そうだな、ハンスさんはいつも俺の納品に気持ちよく対応してくれる。

 さらにいえば、娘さんのフランちゃんのことだって……。

 これは俺がいけないだろうな。


「ハンスさん、急に驚かしてしまってすみませんでした。そのワイバーンを1頭仕留めましたので、その納品なんです!」


「マジか……?」

「はい!」

「……わかった。大物の納品は悪いけど、ここじゃない。ギルドの裏手の倉庫の中で納品になる。まずは、しっかりとワイバーン見せてもらうからな」

「はい、わかりました」


 俺はハンスさんに着いていく。

 ギルドの入り口からずいぶんと奥にある扉を抜けると、そうかからずに、納品用の大きな倉庫が、本館とはまた別に建っていた。


「よし。真斗、ここにワイバーンを出してくれ」

「はい」


 まずは頭からだ。

 俺の体よりもはるかに大きいワイバーンの頭をポシェットから取り出すと倉庫に置いた。

 次は胴体だな。

 俺はハンスさんの指示する場所にズルズルと胴体を引っ張りだすて倉庫に置く。

 さすがに大きな倉庫内には、これだけの巨体をおいてもまだ余裕があるようだ。 


「正直、ワイバーンにも驚いているんだけどな。そのアイテムボックスにはもっとびっくりだよ!」

「真斗は本当はどこかの王族かい? って秘密にしてるのか? なら聞いちゃいけないな」

「まぁ、いろいろありまして」


 俺がそう言って黙り込むと、ハンスさんは1つ大きくうなずいて、それ以上は何も言ってこなかった。


「でな、このワイバーンなんだが、まず状態がすごく良い。首は切断されてるが、鋭すぎる切断面の見える以外はほかの部位に傷は見当たらない。それにまだ腐ってもいない。まるで少し前に死んだばかりみたいに新鮮だ」


 ハンスさんはワイバーンの周りをウロウロしながら、各部位を手にとってずいぶんと興味深げだ。 


「これなら結構な金額で買い取れるよ。ただ、ちっとお願いがあってな。正直、こんだけの大物の納品ってことになるとな、俺1人で報酬を渡して、はい、さよならってわけにはいかないんだよな。悪いんだけどな、ギルドマスターからあとで連絡がいくと思うから、ワイバーンを入手した経緯とかいろいろな。正直に報告して欲しいんだわ」


 ハンスさんの言うことも最もだろうな。

 ただ、入手の経緯と言われても俺が倒して入手したわけで。

 まぁ、普通そんなことは信じられないだろう。

 かく言う俺にも自分のしたことが信じられないしね。

 

「わかりました」

 

 俺がそう言うとハンスさんはホッと一息ついた。

 安心したみたいだ。

 

「それとな、正直これだけの大物は久しぶりでな。これから、検品にかかりきりになったとしても、明日一杯はどしたってかかっちまう。すまないが、明後日にまた訪ねてきてくれるか?」

「はい、もし来れない場合にはどうしたら良いですか?」

「それはそれでもちろん構わないさ。ただ、ワイバーンの素材もなるたけ新鮮なうちに下ろしたいからな。できるだけ早く来てくれると、ギルドとしても助かるし、買取の値段も新鮮な方が高くはなるからな」

 

 ハンスさんはワイバーンの口を両手で思いっきり左右に開くと口内の確認をしだした。

 かと思うと、今度はワイバーンの手を持ち上げて裏面をしげしげと見つめてみたりと。

 心なしか、その目はキラキラと輝いており、実に楽しそうだ。

 

「それと、真斗にもいろいろと都合があるだろうからな、もし、新しくクエストを受けて俺がいない間に納品があるようなら、納品窓口にもう一人いただろ。あいつ、ギースってんだけどな。まだ新人だけど、いろいろ勉強して頑張ってる奴だからな。なんかあったらそいつに聞いてくれな」

 

 ハンスさんは、これから倉庫に張り付きで、ずっと解体作業ってことなんだろうな。

 おっさん頑張れ!

 

「わかりました。では、いったんこれで失礼しますね」

 

 倉庫を出た俺はギルドの裏口から本館の中に入ると、さっそくギルドのEランクのクエストボードに向かった。

 Eランクのクエストボードの内容は、基本そんなにはFランクのクエストとそんなには変わらなかった。

 ただ、ちょっと目を引いたのがこれ。

 

『クムクム草の納品依頼。品数不足のため、大量募集中! 』


 ふむふむ。クムクム草か。

 新しい薬草にも少し興味があるし、ギルドの資料室で調べたあとで採取に行くのも楽しそうだ。

 悪くなさそうだなと思いながら、何気なくすぐ右に貼られていたクエストを見て、その内容がもっと興味深かった。


『モモトの森の調査依頼。ウェアウルフの存在が報告されているため、深入り注意! 』


 あ、マルシィさんとアイルちゃんと出会ったあの森か!

 マルシィさんが先日冒険者ギルドに報告していた件がこのクエストになっているんだろうな。


 少し前の俺だったら、正直怖くもあるので、調査のために森に入るのも嫌だったけれど。

 今の俺は、少しだけスキルについて自信を持っているし、なによりも、素手じゃない。

 メイアさん特製の剣と皮鎧と、皮の籠手がある。

 そう思っていつもより強気になってしまった俺は……。

 よし、今日はこれに決めた! なんて思ってさっそくモモトの森まで向かうことにした。


 俺は少し混雑してきたギルドをさっそく出ることにして、大通りまで出ると、そのまままっすぐ街を出るための門に向かった。

 大通りには、まばらに串焼きの屋台だろうか、すごく良い匂いも漂ってきたんだけど。

 朝に美味しいカニトンボを完食していたこともあって、屋台に浮気する気もなくまっすぐ門まで向かうことができた。

 俺は門番さんにギルドカードを提示すると、そのまま街道をすぐ左にそれて、さっそくモモトの森に足を踏み入れることになった。

 

 うん、あれからまだそんなに日は経ってはいないはずなんだけど。

 妙に密度の濃い人たちと毎日を過ごしたからだろうか。

 なんとなく、森林から香り立つ緑の匂いを懐かしく感じてしまう俺がいた。

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