12 不思議な現象
あけましておめでとう!
今年もいせこのを
よろしくお願いします!
「…ん……ん?……ん!?」
「起きましたかお客そ様。」
「えっえ!? メリアル…おま…って
まてまて今 何て言った!? お客そ様だと?」
「五月蝿いですよ。てか重いんですが」
メリアルはおぶっていた良明を急に手放す。
もちろん良明は空へと投げ出されるのだが
「フルー!!…っと危ねぇ」
良明は間一髪でダメージを失くす。
「そうか…俺 あの変なのに柵にぶち込まれて
死にそうになってなんとか抜け出して…
そこで記憶が飛んでるな。倒れたのか俺」
「ええそれがお客様の最期でした。」
「いや死んでないからね!?
あぁちくしょうおぶってくれてありがとう」
「いえいえどういたしまして。
死人を運ぶってなかなかない経験でした。」
[いやだから死んでないって…あれ
こっち王城の方向じゃないよね」
良明は自分らが王城とは違う方向。
ー広場のバルジオらのいた方と逆の方向へ
向かっていることに気がついた。
それと同時に自分の身体が思いのほかボロボロ
(主に打撲だが)なのを脳が認識したためか
全身に痛みがじんじわと広がっていく。
「王城?何言ってるんですか 今 向かってるのはコール様の選抜試験会場ですが」
「いや 俺の傷の手当の方が優先じゃない?」
「いやその手当も兼ねて向かってるのですよ」
「?」
頭の整理が追いつかぬまま
とりあえずコールの選抜試験会場へと
向かうこと数十分 ようやく選抜試験会場の
目印的なものである櫓が見えた。
「さて…そろそろコール様も察してくれても
良い頃ですが…」
メリアルが良明には聞き取れない声で
言ったその直後だった。
「もう気づいておりますよ。
どうせバルジオがやったのだろう?
まったくお客様に対してなんてことを」
「!?」
突然どこからか声が聞こえた。
良明はあたりを見渡すも向こうに櫓があるだけで他には一切 何も無い。隣にいるメリアルは
なんかボソボソ言ってるけどあいつの声じゃ
ない。ただ聞き覚えのある声だった。
「あぁすいません。良明殿。
驚かせてしまったようで…」
「殿……!? 俺を殿っていうのは
そうだコールか!!どこいるんだ?
姿が見えないんだが」
「いや僕ならあなたの目先の櫓の下にいますが
まぁそこからは判別出来ないでしょうね」
「いや そんなとこからどうやって…
こんなはっきりと声を?」
「それをストロンに尋ねるのは野暮ですよ。
まぁそちらももうすぐ着くでしょうし
その時にはわかると思いますが。
とりあえず処置はしといたので 」
「え?処置って?」
何が何だかさっぱりわからん。
物理学的にあの距離で声をとばすなんて
無理な話なのに。あとなんだ処置って
「お客様。傷」
「え?傷?それがどうしーー治ってる!?」
青々としていた打撲痕もちょっとした
擦り傷もいつの間にかなくなっていたことに
驚く良明。…いつ手当てされたんだ?
そんなことを疑問に思いながら歩いていくこと
十数分で紫髪の青年
コールと会うことが出来た。
「やぁ良明殿。お疲れ様です。
バルジオがなんかすいません。」
眼鏡の位置を直しながらこちらに
笑みを浮かべるコール。
…いやまぁ死ぬかと思ったんだけど
「まぁいいんだよ それより傷ありがとう」
「いえいえ メリアルの判断は正しかった。
王城で治療するより僕が治す方が断然
正確ですので。ありがとうメリアル」
「まぁメイドとして当然のことを
したに過ぎませんが。」
「いやお前がそれいうの」
「相変わらず良明殿は
メリアルに弄ばれてますね」
「なぁコールさん メリアルって実際
メイドとしてどうなの?」
「人間性以外は追随を許しません。」
「いや人間性こそ大切だろ!?」
「落ち着いてください お客様。」
「だから お前がそれ言う!?」
「それより良明殿。その先程から
良明殿の後に隠れているその子は…」
「これはクレアだ なんか出てきた」
「と言いますと?」
「私が魔術を教えた時に偶然
召喚されたようです。その術式は
覚えていないそうですが…」
「それは驚きました。
召喚魔術が偶然にも発動したとは」
「まったくです。術式さえ覚えていれば
世紀の大発見だったのですが…」
メリアルがため息をつく中
そういや俺って
自分から初対面の人と喋るの
苦手だったな…と良明は
思い直していた。そして
メリアルらが話しているのを横目に
良明はコールの選抜試験会場を
見渡した。クレアもその光景をみて
「すごい…」と呟く。
それは良明も同じだった。
眼前にはバルジオのとことは全く違う光景。
一糸乱れぬ隊列を組み
コールの支持をじっと待つ兵士らの
姿がそこにあった。




