11 運と力量
宣言どおり更新しました!
「メリアルよォ おまえさんまさか仕事
ほっぽってきたんかァ? 悪い子っちゃな」
ゲタゲタと笑いながらそういうのは
赤髪の巨鬼 バルジオだ。
「バルジオ様。大丈夫です。
これはあくまで仕事ですよ。お客様が
どうしてもここに来たいと
言っておりましたので
仕方なぁく来たのですよ。」
「いや あんたが提案したんだろ」
「あらあらお客様 やかましいですよ?」
「ブハハハハハ!!
坊主!すっかり玩具になってしまっとるのォ」
「いや…えっとバルジオさん?
やっぱりおかしいですよねこのメイド」
「こんな奉仕精神のないメイドは
ひとりで充分よォ!」
「やっぱり…」
メリアル以外のメイドとはあまり
関わってないため分からなかったが
どうやらちゃんとこの世界のメイドは
普通でありメリアルだけ例外のようだ
よかった…? これってよかったのか?
「それよりどうじゃい坊主
眼前の大乱戦はァ」
血走ったギョロりとした目をこちらへ向け
バルジオは問いかけてくる。
ー眼前の光景 それはもう凄まじいものだった
しきりに飛びかう炎や雷 鳴り響く鋼の音
罵声 歓声 悲鳴 目の前だけ気温が違うようにも感じた。そして良明たちのいる物見櫓は
地響きによりしきりにぐらつく。
「…まさに戦場って感じですね
全員がバルジオ軍に入ろうと懸命に
戦っている。」
「ブハハハハハ!
なんと嬉しいことを言ってくれるのォ
どうじゃ坊主は参加しないのか?
特別に参加許可をやるぞ?」
「いやいや僕なんかじゃとてもとても」
「そうか… 坊主 いいことを教えてやろう
強さってのはな 筋力と知力も大切だが
一番 大切なのは…」
そこまで言うとバルジオは急に良明の
脇を両手で掴んだ。
「痛っ…くはないけど…
あのバルジオさん?これは」
「一番大切なのはなぁ『運』なんじゃ
自分の強さなんてそう簡単に
分かるもんじゃあないぞォ!!」
「え…ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!?」
良明はそのまま目の前の柵の中へ
ー大乱戦の中へ投げ込まれたのだった。
「げふ!? 」
良明は地面に叩きつけられる。
とてつもなく痛いが今はそれどころじゃない
良明は焼けるような擦り傷や打撲の痛みを
我慢し立ち上がった。どうやら戦いは
終盤戦にかかっているようで
柵の中の人は大分 減っていた。
だが減っていただけでゼロではない。
「なんだ貴様どこから飛んできた!」
「なんか弱そうだなお前」
「ボロボロじゃねぇかやっちまうか!」
「うわぁぁぁぁ」
良明に気づいた数人にたかられる
前になんとか逃げ出すことに成功したが
「やべぇ柵の外 遠すぎんだろ…」
先の方に小さく見える柵めがけて
走り出す良明だったが
「ぜぇぜぇ」
単純に体力が足りてなかった。
受験期で鈍っていたのもあるが
そもそも良明は運動は得意ではなかった。
「ドォォォン」
「ぬわぁ!?」
すぐ後ろから爆音が聞こえる。
…まて ほかの参加者の人たちは
鎧きてるからいいけど俺とか
あれ喰らったら即死じゃねぇか?
やばいやばいやばいやばい…
「おい あいつめちゃくちゃおせぇぞ
さっさと倒そうぜ!!」
そうか…倒されれば柵の外に自動的に運ばれんのか…てかまてあの人 剣持ってる剣!
極力 痛い目は会いたくない良明は
ひたすら走った既に意識は朦朧としていたが
無事にこの地獄から抜け出すために
ただひたすら重い足を動かし続けるのだった。
ー同時刻 物見櫓。
「バルジオ様 流石にお客様…死にますよ?」
「なにおうメリアル 男にはなァ
そう簡単に死なねぇんだよ 足掻くんだぜェ
魔法でも何でもぶっぱなして
必死に足掻くんだぜェ
あの坊主は筋力はなさそうな感じだったけど
ひとつくらいは魔法は使えるんだろ?」
「たしか二つほど使えたかと」
「なら大丈夫だろォ」
「いや重力系と圧力系でどちらも
まだ初級レベルですが…」
「そりゃァやばい。やっちまったなァ
俺が言った方がいいかァ お客なんだろォ
悪いことしちまったな…
くたばってなきゃいいが」
バルジオが顔を曇らせて今にも
櫓から柵の中へ飛び込もうとしている時だった
「安心なせいバルジオや その必要はないぞ」
櫓の下から声が聞こえた。
「この声は…ルーク様」
「ん? ルークか。どういうことだァ
一般人一人倒せないやつなんてこの
戦闘試験にはいないぞォ?」
確かに無傷で帰ってこれるほど
良明の置かれた環境は甘くない。
メリアルもそう思った。
櫓に上ってきた白髪のルークと呼ばれる
老人は自分の古びたローブの誇りを
払った後 バルジオの方へ向き直る
「いやはや『幸運』なお客様じゃ
文字通り あの中を掻い潜ってこられる。」
バルジオへ向けていた視線を
向かって右の方の柵へと移す。
その視線の先には
「あ…あ 死ぬかと思った…」
投げ出された時の傷以外には
まったく傷を追わないまま逃げ切った
良明の姿があった。
「お客様ー無事ですか?」
「無事なわけねぇだろこの野郎!
いてぇよ打ったところがぁ!
はやくてやてしやが…ー」
「お客様?」
「気絶したのだろうな」
「まさかそんなことが…
このような強運の持ち主は初めてじゃァ」
バルジオも驚きの目を隠せないようだった。
「のうバルジオ 運といったがあれは多分
半分は嘘じゃ」
「ァ? そりゃどういうことだ翁」
「お客様が投げ出された場所の周りには
超人的な力を持った戦士がいなかったということは運じゃがのぅ それだけじゃあ
傷を追わずに抜け出すことは確かに
難しいと思うてのぅ」
「どういうことだァ?」
「ーつまりもう半分はあのお客様の
力量っつうことになるのぅ」
「だが俺にはそんなふうに思えなかったぞォ」
「わしもじゃ…いやはや面白いお客様じゃ」
ルークは気絶した良明の姿を見ながら
ケタケタと笑うのであった。




