【特別編】決意のサイレントナイト
今回は良明主体ってことで
すこしは家庭事情がわかるかも
これは良明がまだ異世界に飛ばされる前の話。
「ただいまー
「「メリークリスマス!!」」
けたたましいクラッカー音とともに
そう言ってきたのは良明の両親だった。
「…あのー」
「あきちゃん!今日はママ頑張ったのよ!
腕によりをかけていっぱい料理作ったの!」
「よし! 父さんもプレゼント買ってきたぞ!
おまえは何が欲しいとか今年言わなかったか
らな…一番売れてる ゲーム機を買っちゃった
ぞ! 飯食ったらするか?」
「あのさ。」
「「ん?」」
「おれ。受験生ね今年 大学の!」
「「……それが?」」
「いや 何 受験生にゲームとか!
おかしいだろまじで」
「そうか? お父さんたちはなお前に
幸せになって欲しいだけなんだけどな?
楽しかったらそれでいいんだぞ?」
「またそれか…」
ー良明の家は少しズレていた。
この家での言うならば家訓とは
「人生楽しんだものがち」というような感じで
未来のことより今のこと。
未来のことはその未来になって考えろ
というようなものだった。
これは良明の両親が何不自由ない生涯を
送ってきたことが1番の原因である。
父の高田良輝はもともと天才肌であり
あまり勉強などをしなくとも常に成績は上位。
子供の頃から努力することを知らないまま
現在 王手IT企業に務めている。
母の高田明子は父親と打って変わって
これといった才覚はなかったものの
両親が地主だったこともあり
不自由はなかった。
ーそれが良明にとっては不都合であった。
高田良明という人間は母に似てか天才肌では
なかった。ただ少しだけ暗記力があるだけ。
それしか取り柄のない人間なのだ。
良明は男なので家柄が恵まれていたとしても
これといって有利ではない。
だから良明は両親のした事の無い「努力」を
するようになった。生まれながらの才能も
家柄も関係ない。全て努力で掴み取ってやると
もちろん両親はその様子ー自分らには
なかったその光景をみて心から感心した。
良明が努力することを応援した。
だが量の割に成績はなかなか伴ってこない。
そしてそのまま今に至る。
目標としている大学はC判定
(合格率50パーセント)を安定してだしている。
懸命に努力をしている良明だが
なかなか思うようにいかない良明をみて
ー必死に苦しむ良明をみて
少しでも気休めになって欲しいと
計画したのがこのゲリラクリスマス会
だったのだが…
「俺は凡人なんだ。男なんだ。自分の手で
しか将来は掴めないんだよ。」
良明はイライラを通り越し
悲しそうな表情を浮かべる。
そして自分の部屋へと向かっていった。
もちろん良明にも両親の善意であることは
分かっていた。わかっていたが
受験もまじかに控え日々増していく
プレッシャーに押しつぶされそうな日々
そんな日常のせいで刺々しくなってしまった。
ーそしてその事を部屋に帰ってから後悔した。
良明は机に座り込み空白のノートを開く。
だが10分たっても30分たっても
そのノートは空白のままだ。
集中できないのである。
「くそっだめだ。今から下にもどるか?
でも そんなんじゃ時間が…」
どうすればいいのか分からなかった。
勉強もおぼつかない。かといって
パーティは時間を無駄にする。
てか今更 戻れない。
そんなことをあれこれ考えてるときだった。
「ん?」
ふと自室のドアの下の隙間から紙が
でているのに気づいた。
良明はすぐさまその紙を回収し
それが手紙であることに気づく。
「なんだこれ…」
良明は思いのほか字数の多い
その手紙を読み出した。
ー拝啓 我が息子よ
メリークリスマス…って言っても
なんにも返答しないとは何事だっ!
…ってこの手紙読んでるってことは
やっぱりパターンB(クリスマス会を
無視して自室にこもる)だったか(笑)
勉強中すまんな。まぁでも
どうせ勉強に集中できてないんだろ?
悪かったなぁとか思ってんだろ?
そんなの予想済みだこの野郎。親なめんな。
どうしたらいいか分からないおまえに
ひとついいことを教えてやろう。
今 お前のドアの前にはご馳走が置かれてる。
ママが戻ってくるの気まずいだろうって
忍び足で運んだんだぞ?
ただそれを食べるためにはおまえに
ひとつ誓ってほしいことがある。
ゲームしようとかじゃないぞ?
おまえは今日のクリスマス会を台無しにした。
家族全員で食べたいっていうママの願いをだ。
お前にはその弁償をする義務がある。
弁償内容は 来年こそみんなで食べることだ。
こんな凄い会を台無しにしといて
おまえが受験に落ちて来年も
こんな感じになってまたママを悲しませんのは
許さん。いいか ドアの前の飯を食べたいなら
誓え。絶対に合格すると。
おまえの頑張りは知ってる。
だから わかったか? 約束だぞ。
もう一度 メリークリスマス!!
ーパパより
「ーっ」
嬲り書きの手紙なのにどうしてこう
心に響くんだろう。良明は
手紙を握りしめながらしばらく泣き続けた。
ー数十分後
「ガチャり」
上から聞こえてくるドアの音を
聞きながら
「来年こそ楽しもうな。」
「ええ。」
「「乾杯!」」
グラスを重ねる音は
小さくただ心地よいものだった。
ちなみにこのときワプは
ひとりで寂しい夜を過ごしています。
トムからもらった慈悲のショートケーキを
ちまちま食べてんじゃないですかね?




