2 満月下での出会い
紫髪の美青年の案内の元
フリードへの部屋へ向かう途中
「それにしても滑稽でしたよ。
久々にメリアルに振り回されるお客様を
見ましたよ。いや面白かったです良明殿」
「いや滑稽って…いやまて今殿っつった?
なんか違和感だからやめて欲しいんですが」
「そういう訳にはいきませんよ。
国王様から少し話を聞いております。
より長く壁の質を保つ技術をお知りだと。
それが本当なら相当大切なお客様ですので。
…まぁ嘘なら血も残りませんが。」
「いや怖いって怖いよ!真実だって!」
「それならいいのですが…
すいません挨拶がまだでしたね私は
『ストロン』に所属しているコールです。
お困りのことがあれば
何なりとお呼びください 」
「何なりと呼ぶ 勇気でねぇな!?」
「いえお使いください。
あっ着きましたよ。」
コールは眼鏡の位置を直しながら
1つのドアを指さす。
「国王様のお部屋です。」
「おっおう」
「ここからは僕はお供できませんので
ドアの外で待機しています。
…くれぐれも失礼のないように。」
「わかっ…わかりました。」
「ではどうぞ。国王様がお待ちです。」
ドアのノックを促され俺は慎重にドアを叩く。
「どうぞ。」
この声を聞いたコールは俺に頷き
ドアに入るようにジェスチャー。
「し…失礼します。」
木製なのに鉄製のように重く感じる
そのドアを開けるとその部屋の奥に
テーブルを挟んでフリードが座っていた。
少し先に1つだけ椅子がある。
…あれに座れってことか。
俺は入試のための面接練習を思い出しながら
姿勢を正し直線的にその椅子の元へ。
そして椅子の隣に立つ。
…たしか支指示されてから
座るのが礼儀だったはずだ。
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………「なんで先程から座らないのかね?」
あっそういやここ異世界だった。
日本の面接じゃねえわ。
「あっすいません。座っていいのか迷って」
「座るための椅子だろう?
準備してあると言う子は君を客人として
こちらから招いてるということを示す。
それなのに何故 私の指示がいるのかね?
君はもてなされてるのだよ?」
正論を返されてしまった。
「その通りです…」
顔を赤らめながら俺は席に着いた。
「ではいきなりだが本題に入ろうか。
…そのメッキというものは本当に
壁の耐久性を上げるのか…?」
「はい。メッキをしたら
今よりは長持ちするかと」
「ふむ。その言葉を信じよう。
してメッキとはどのようなものだ?」
「メッキとは…そうですね。簡単に言うと
金属を別の金属で覆うことです。」
「…それが耐久性向上になるのか?」
「あ。はい。例えばある鉄球を
そのまま放置してたらその球は
酸化するじゃないですか。
でもその球にそうですね亜鉛…
あ 亜鉛ってこの世界にあります?」
「亜鉛がどうした?」
「あるのか。よかった…
で その鉄球を亜鉛で包んだら
あら不思議。鉄球は錆びることなく
長持ちというわけです。」
「なるほど亜鉛が変わりにサンカされ
中の鉄球のサンカを防ぐのか」
「はい。」
「聞けばとても単純な仕組みだな。
逆にどうして気づかなかったのか…
不思議なものだよ。」
「確かにそうですね。
あ ちなみに錆びた亜鉛が剥がれて
鉄球の表面が空気中に出ても
ある程度なら亜鉛が酸化皮膜を作るので
すぐに傷口は塞がれるんです。」
「ほぅ…それは興味深い。
その構造について聞きたいが
今日はもう遅いみたいだ。」
そういって窓ごしに月を見るフリード。
今日は満月か……
「このことは明日の城内会合で話をしよう。
早急に話をつけようと思う。
一応君には結論が出るまでここに留まって
貰おうとおもう。すまないな…」
まだ拉致られるのか…
「それどのぐらいですかね…」
「多分だが このメッキは採用されるだろう。
反対をするものは出ないと思うから
…だから早くて3日で済むと思う。」
「3日程度なら大丈夫ですよ。」
「そういって貰えると助かる。
一応無断で連れてきていたからな。」
フリードはそう言うと部屋に戻ってもいいと
促してくれた。よし帰ろう。
…緊張でこれ以上 縮めたくなかったし
ということでドアを開け帰ろうとー
「うぉ!? まだいたのか!? 」
「お話は終わりましたか。では僕はこれで」
そう言って一礼をするとコールは
すぐに次の仕事でもあるのか去っていった。
…まじか本当にずっといたのか。
少し感心もとい引きながらも
俺は自分の部屋…まぁ客室に移動する。
しばらく長い廊下を記憶を頼りに
進んでいるとき。それは起こった。
「バリィィィィィィン」
急に自分のすぐ前の壁にある窓が割れ
外から巨大な黒いなにかが突っ込んできた。
「うぉぉぉぉぉ!?」
あまりのことで状況が
はじめはわからなかったが次第に
その黒い何かがなんなのかを脳が理解する。
ーーーそれはよくゲームとかに出てくる
「悪魔」にそっくりなモンスターのーー。
「うわぁぁぁぁぁぁ首ぃぃぃ!?」
首だった。良明もここまで生々しい死体を
見たことがなかったので…
「おぇぇぇ」
その不気味さとグロさに嘔吐していた。
パニックから解放されはじめ脳の活動が再開
今の状況の判断が始まる。
突然割れたガラス。入ってきた生首。
…いやこんなんで判断なんかできない。
どうしよう……!!
「そうだっコール!!」
「全くなんてことだ…」
「うわぁぁぁ!?」
呼んだと同時に背後からコールが現れる。
なんでこうこの城のやつらは
こう登場が唐突なのだろう…やめて欲しい。
「これはなかなか…はぁー
派手にやらかしましたねウルガルド殿」
「ほんとに誰だよって感じって…
ん?ウルガルド…誰ぇ!?」
再び生首の方向を向くといつの間にか
ウルガルドと呼ばれた新しい奴がいた。
「全くやっちまったぁ…
これ何とかしてくれないか?
まさか逃げられた方向が城とか最悪だぁ」
そう言いながら先程まで深々と
被っていたフードを脱ぐウルガル…
「はぁぁぁ」
「ん?どうした小僧…見たことない顔だな。
客人か?」
「はぁぁぁ」
良明はただただ感動していた。
そのウルガルドと呼ばれる者が
獣人でありモデルが狼だったことに
「やばい。素直にかっこいい…」
「良明殿。いくは貴方でもウルガルド殿を
無視するのはいただけない。ウルガルド殿は
この国一の強さを誇る方だぞ。」
「ますますかっけぇぇ」
狼で国一強いってその設定がやばい。
「ダメだこの小僧 どっか飛んでってる。
コールとりあえずこの首の片付けは頼む。
国王にバレたら減給されちまう…」
「僕の力では首は跡形もなくできますが…
ガラスの再生は無理ですよ。」
「あれっそうか。
おまえ運搬しか無理だったけ」
「まぁ。」
「まじかぁ減給かよ…このガラス
高そうだよなぁ…」
「仕方ないですウルガルド殿諦めましょう。
それより一旦ここから
離れていただかないと…」
「そうか。俺もどっかおさらばになるな…
じゃあ頼んだ。…そこの小僧は?」
「まだどっかに飛んでますけど
大丈夫ですメリアル!」
「はい。コール様 彼を客室まで運べば
宜しいのですね。」
「よろしく頼むね。」
「了解です。」
急にあらわれたメリアルになぜか
お姫様抱っこされ運ばれる良明。
彼はまだ想像の世界にいるが
数分後 この状況を理解することになる。