第三話 「テリブルスクール」
友達の家で、友人のDVDに編集されていたアメトーーークの「ジョジョの奇妙な芸人」を見て以来、作者はジョジョが大好きです。好きなのはそりゃもう確実です。コーラを飲んだらゲップが出るくらい確実です。
昨日は日曜だったが結局忙しい一日となり、結局俺はゆっくりとすることができなかった。
そんな疲れを感じながらも、今日も今日とで俺は目覚ましの音を効き目を覚ます。
「今日は平日か……とうとう待ちに待たない学校の日だな……」
愚痴りながらすぐに着替えを済まし、一階に降りて簡単な朝食を作ることにした。
若干約一名この家の住民が増えたが、たった一人前増やすことくらいわけない。ハムエッグとトーストを作り、皿に並べ、コーヒーを入れ、朝食の用意が完了だ。と、ここで俺はフライパンとお玉をもって二つをぶつけまくった。気が狂ったわけじゃないぞ、こうしないといけないんだ。
「起きろ!!朝だぞ!!」
なんか漫画のような起こし方だが、親父はこれじゃないとすぐには起きない。平日は出勤が早めなのだ。
「浩介君、もっと静かにはできないかな?」
不機嫌そうに親父は台所にやってきた。ならさっさと一人で起きろよ。
「何十分も起こすのに時間はかけれないからな。さっさと座って食え。」
早起きさせても用意が遅いんじゃ意味がない。さっさと親父を席につかせると、俺は親父のシャツにアイロンを欠け始める。
そして親父が席について朝食のトーストをかじり始めるとほぼ同時に、亜衣も二階から降りてきた。
「浩介くん、おはよ……さっきの音、何?」
「気にすんな。毎朝行ってるから、しばらくすれりゃ慣れる。」
亜衣も席に座り、朝食を食べ始める。俺もさっさと親父のシャツにアイロンをかけ終え、エプロンをはずし席に座り朝食を食べ始めた。
朝食も食べ終わり、玄関で亜衣が仕度を終えるまで待った。どんな不測事態が発生するかわからないので、いつもより10分早めに出れるようにした。7時には亜衣が用意を終え、俺たちは玄関にて靴をはき外へ出る準備をする。
「親父、鍵閉め忘れんなよ!」
「い、行ってきます。」
「は〜い、二人とも、気をつけてね〜。」
玄関を出て、普段どおりの道を歩こうか、知り合いのあまり通らない道を通ろうかで迷ったが、今日は普段より早めに出たので知り合いとは遭遇しないだろうと考え、普通の道を歩くことにした。
蒼月学園までは早足で30分はかかるが、道を知らない奴もいるのに早足で行くのはちょっと気が引けたので普通の歩行速度で向かった。
まあ、普通に歩いても50分でいける。学園へは8時までに行けばいいので、ほぼ100%遅刻は無いだろう。
なんやかんやで、つくまでに55分はかかったが結果オーライだ。辺りに知り合いはいない。
「んじゃ、職員室はあそこだから。そろそろ遅刻になりそうだから俺はもう行くぞ。」
半ば突き放すように背中を押してやって、俺は下駄箱へと向かった。誰にも見つかっていませんように、と祈りながら――――――――――
「浩介、下で一緒にいた子、誰?」
純に見つかっていた。迂闊だった。そりゃそうだよな、教室は2階だから校庭がしっかり見渡せるもんな。
「……なあ、純。今から早退するのとコンマ1mmの疑問ももたずにこのまま学校生活を続けるの、どっちがいい?」
「OK、聞くなってことね。美咲ちゃんとかは気づいてないから、秘密にしておいてあげるよ。でも、よっぽど大事なことだったら後でちゃんと話してよ?」
キーン、コーン、カーン、コーン。チャイムが鳴った。
「んじゃ、また後ほど。」
純も席に戻った。
俺の席は窓際の列の前から2番目で、純は廊下側の窓の列の前から3番目で、結構席が離れている。ついでに、美咲の席は俺の隣の列の前から3番目、つまり俺の斜め後ろだ。
都合よくさっきの会話の時は美咲はいなかったようだ。
(流石に亜衣と同じクラスにはならないよな。10クラスあるんだから、同じクラスになる確率は10%、多分違うクラスになるだろう。)
「何ぶつぶつ言ってんの?」
美咲の耳に俺のぼやきが聞こえたようだ。
「なんだ、お前見えないのか?ほら、ここにいる妖精。」
「ごまかすならもっとまともな言い訳をしなさいよ。答えられないなら答えられないでいいんだからさ。」
あきれたように言い放つ。まあ、呆れるわな。
「お〜す、みんな、朝の時間だ!!」
口にタバコをくわえた学生っぽい奴が教室に入ってきた。目は前髪で軽く覆われていて、目つきが見づらい。
あいつは決して不良生徒ではない。このクラスの担任、伊藤 樹だ。教室で堂々とタバコを吸う、クビ寸前の教師だ。
しかし、生徒から人気があるためクビになってないのだ。
「よ〜し、さっそくだが緊急ニュースだ野郎ども!聞いて驚け!今日は転校生が来るぞ!可愛らしい女の子だ!」
「ブッ!!」
吹き出してしまった。
まさかな、まさかとは思うけど違うよな?あれだよな?赤っぽい髪の毛の女の子じゃないよな?別人だよな?亜衣じゃないよな?神様俺のこと愛してくれてるよな!?
頼みます、別人であってください、別人だったら今日神社に1万円御賽銭しますから!!
わ〜!という大きな歓声の中、俺は机に突っ伏して祈るように手を汗握る。
「おいこら、野郎ども!ひとまず、落ち着け!好みのタイプだったら後で告れ!!いいか!?」
「「「YES!!」」」
クラスの野郎どもはのりのりだ。でも俺はのりに乗ってる場合じゃない!
もし別人だったら不細工でも告ってやる、だから別人であってくれ、広瀬亜衣じゃないといってくれ!
「よ〜し、んじゃ、広瀬 亜衣さん、ご入場〜。」
………………
はっはっは、もうどうにでもなれ、もう俺の人生の約半分は終わった……終わるには早いがするが、もうそんなもんは知ったことか……
「……くっくっく、フフフハハハハハハ!!」
俺は、無意識のうちに小声で笑い声を上げていた。隣の席の奴と美咲は俺の精神崩壊(?)に気づいたようだが、怖くて話し掛けられなかったらしい。
(ねえ、浩介、あの子って校庭で浩介と一緒にいた子だよね?)
純からのアイコンタクトが届いた。
(ああ、そうさ、そうとも、この俺を哀れな愚者へと変えた魔界からの使者だよ。)
(頭大丈夫?)
むかつく返事が来た。まあ、そう思われても仕方あるまい。
「んじゃ、広瀬さん、自己紹介よろしく。」
「え、えっと、はじめまして、広瀬 亜衣です。えっと、こ、これからよろしくお願いします。」
かなり緊張しているらしい。だがそのおかげで俺にもまだ気づいていない。ここで気づかれたらなんかやばい展開になりそうなので、顔を伏せておく。
「んじゃ、席は清田の後ろが空いてるな。そこでいいだろ。」
美咲が立って手招きしてる。このままばれずにいけば、どうにか休み時間にでも騒ぎを立てないように亜衣に忠告できる。
さあ、何事もなく俺の横を通り過ぎていくがいい!
「あ、浩介くん!!」
神様はそこまで私が嫌いですか……いや、普通銀髪は目立つからな。ちゃんと髪黒く染めてきたらよかったよ……
「ん、なんだ荒神、知り合いか?」
やばい、本格的にやばい。樹がなんか「久々にいじる面白いネタ見つけたぜ。」って顔をしていやがる!だめだ、こいつにエサを与えたら後でどれだけいじられるかわかったもんじゃない!
「もしかして、荒神って広瀬さんと知り合いなのか?」
「そんなレベルじゃないだろ、呼び方が「浩介くん」だぜ?すでに親しい仲と見た。」
「今日転校してきた子を口説くとは、流石は荒神。」
そこらでぼそぼそとそんな会話が聞こえてきた。そろそろ精神的にもマジやばい、限界点突破寸前だ。
「おい、荒神、先生に言ってみろ?どういう仲なんだ?」
「……腹痛いんで保健室行ってきます!!」
すぐ横の窓を開け、この教室から飛び降りた。たかが二階、俺から言わせりゃ飛び降りるくらい、わけない!
「あ!あの野郎、逃げやがったぞ!」
教室内からクラスメイト達の大声が響く。
「伏見!教師命令だ、奴を追え!」
「へぁ!?りょ、了解!!」
純も追ってきた。あいつも俺と同じくらい身体能力が高い。あいつもまた飛び降りるくらい、わけないだろう。厄介だな、パワーは俺のほうがあるんだが、スピードに関しては純はとにかくすごい。50m走のタイムは6秒フラット、スピードはかなり上級レベルだ。あ、ちなみに俺は6秒4だ。まあまあってくらいか?
(だがまあ、やり方しだいだな。純一人だけなら、どうにかすれば撒けるかも……)
と甘い考えを抱いていると、不意にもう一つ新たな影を俺の目が捉えた。
「待てぃ、浩介!!」
ここでさらに一組の窓からも女好きの代名詞、先日で遭ったあの斎藤 孝昌が窓から飛び降りてきた。もしかして一番クラスのはなれた10組の会話が聞こえたのか?
「浩介、この陸上の全国大会で100m1位の俺から逃げられると思ったか!?」
すぐに俺の前に回りこまれた。後ろからは純がやってきて、現在はさみうちにされてる状態。
どうする、俺!?どうする!?どうすればいい!?ああ、駄目だ、うまく頭が回らない!!こうなったら、強行突破だ!!
回れ右をすると、俺は純のいる方へと走った。
「強行突破はさせないよ!!」
純は戦闘体勢を整えた。残念だったな、俺は戦闘はせんさ。
「力ずくではいかねぇよ!!」
右から純をぬこうとする。それに気づき、純はそちらの道をふさごうとする。
「はっはっはっ!引っ掛かったな、フェイントだ!」
右足を軸にしてクルッ、と一回転して大きく開かれた左側をすばやく通り去っていった。
「待て!浩介!」
後ろからハイスピードで孝昌が追ってきた。怖いのはこいつだ。孝昌は俺よりも純よりもかなり足がはやい。
「俺から逃げられると思ったか!?」
俺との距離が約10mになった辺り。そこで俺はバッと振り返り、孝昌めがけてスライディング。
「うおぁ!!」
孝昌も勢いが激しかったので、急に止まれなかったのだろう。スライディングを喰らい、転んでしまった。
「残念だったな!!俺の勝ちだ!!」
そのまま俺はすぐに立ち上がって走り、校舎へと戻った。校庭からはだいぶ距離をおいて二人が追いかけてきている。が、そんなもんは校舎で巻けるだろう。
校舎内――――――――――――――――――――
ひとまずクラス前を通ってみた。ある程度事態が収まっていたらとりあえず言い訳をして済まそうと思っていた。
しかし……
「よし、野郎ども!こうなったらあの二人と協力して、何が何でも荒神を探し出すぞ!行くぞ!」
「おう!!」
教師が普通そんな行動を煽りますか!?てかお前らも乗るなよ!野郎どもって言いながら女子もやる気満々だしよ!
「あ、いたぞ!荒神だ!」
「囲め、囲めぇ!」
速っ!なんだ、こんな時だけ発揮される無駄な統率力は!!担任の樹を中心に、奴らは完全に俺を捕まえる気でいやがる。
「ふん、これだけの人数は倒せないだろう、荒神!流石のお前にも策はないだろ!観念するんだな!」
自信たっぷりに樹が高笑いをしている。ふん、だが残念だったな。
「たった一つだけ策はある!」
「な、なんだと!」
俺が人差し指を立ててそう高らかに宣言すると、流石の樹も驚いているようだ。
「いいか、息が止まるまでとことんやるぜ!」
「息が止まるまでだと!?どういうことだッ!」
「フフフフフフ……」
俺は敵を見下すように見回す。そして、とある一点を見つけて狙いを定めると、そっちを向いて一言叫ぶ。
「逃げるんだよォォォーーーーーー!」
こうなりゃHRの時間まで校舎内を逃げ続けてやる!
続く