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第二話 「明日の空は晴れるかな?」

 翌日の朝、前日のことがあったので良い目覚めとはならなかった。だが、毎朝の日課をサボるわけにもいかん。すぐに身体を起こして着替えをすませ、朝食をつくりに一階に降りた。


すると……


「あ、おはようございます。」


 一階に下りると、赤い髪の女の子が台所に立っていた。一昨日家に来た広瀬 亜衣だ。どうやら朝食を作っているらしい。


「ああ、おはよ……結構うまく作れるんだな、飯。」


 まだ作りかけだが、うまくできていることだけはわかった。


「はい、料理は得意なので……」


 そう言いながら顔を赤らめながら目をそらす。やっぱり昨日のことを気にしているのだろうか?気にしないほうもおかしいか……


「……親父起こしてくる。」


 なんか気まずいので、この場から立ち去ることにした。











「起こしにいったんだからさっさと起きろよ。」


「う〜、浩介君、あと五分、あと五分だけ〜。」


「うっせぇ、さっさとおきろ!」


 親父を起こそうとしただけで、なんで起きるのに10分もかかりやがるんだ。それだけ時間をかけたおかげか、朝食はすでに出来上がっていた。


「朝ごはんはオムレツとサラダか〜。」


 親父はまだ寝ぼけたような面でうつらうつらとなりながらテーブルの上に並べられた朝食を見る。


「うまくできてるか、ちょっとわかりませんけど……」


 メニューはご飯に大き目のオムレツとサラダ。結構うまくできてたので、食欲はすぐに湧き食べるのにそう時間はかからなかった。











「それじゃ、パパは仕事に言ってくるね。」


「自分のことをパパとか言うな、気色悪い。」


 荷物を持って、親父が玄関を出ようとしているところだ。しかし、何で俺は見送りなんかしているのだろうか?あの子は食器の片付けをしているのに。


「そうそう、今日のうちにあの子に街のこととか教えてあげてね。結構この辺道が複雑だから。」


「まあ、ほぼ都心のあたりだからな。」


 ここは東京の都心近くの住宅街なので、結構家がたくさん並んでいるため道が要り込んでいるので、道を知らずに歩くとすぐ迷子になってしまうのだ。


「ああ。わかったよ。じゃあ、事故らないようにいけよ。」


「心配してくれてるのかい?浩介君はやさしいねぇ〜。」


「うるせぇ!さっさといけ!」


 そうどなりながら、親父が家を出るのを見送った。親父の車の音がなるのが聞こえてくると、俺は踵を返してリビングへと向かった。とりあえず、あの子に街のこととか教えないとな。


「あ、浩介さん。食器、洗っておきました。」


「あ、おう。サンキューな。」


 とりあえず、リビングにあるコタツの中に足を突っ込んだ。この寒い季節にコタツがあると結構助かる。


「あ、ちょいちょい。こっちきて。」


 亜衣にこっちに来るように促す。エプロンをはずし、パタパタとこちらに早足でコタツの前に座った。


「……足、いれてもいいぞ?」


 コタツが前にあるのに足を突っ込まないので、少し気になった。言われると、亜衣は少し慌てながら足を突っ込む。


「とりあえず、家のこととか街のこととか教えるから、覚えていってくれ。あと、難しいかもしれんが昨日のことはすぐ忘れてくれ。」


「あ、はい……」

 

 少し顔を赤らめながらの返事。


「とりあえず家でのこと。まず、敬語つかうな。」


「え?でも、居候になるわけですし、そんな堂々とするのは……」


 礼儀正しい奴だな。いや、普通の人はそうするものなのか?回りが非常識なだけに、常識というものが少しわからない。


「んじゃ、せめて俺には使うな。この家に居れるのは親父のおかげ。俺のおかげじゃない。同じ年齢に敬語使うのもおかしいだろ?」


「そうかもしれませんけど……」


 これも少し難しいらしい。でも、こっちとしては同じ年齢の子に敬語を使われるのは違和感を感じまくる。


「この事に関しては反論はなし。もう敬語をつかったら駄目。」


「はい、わかり……わかった。」


「それでよし。」


 この件に関してはこれにて解決。次は家に関してのことだな。


「この家の決まり(?)は、

 1、朝食は一日交代で俺とお前が作る。

 2、風呂は30分以内に出る

 3、水の無駄遣いはしない

 4、門限はPM10;00

 5、ゲームは一日一時間

くらいだな。」


 5は、少し(大分?)変に感じるが、まあいいだろう。


「10時まで帰ってこないこともあるの?」


「友達とつるんでそれくらいまでいるのが普通くらいだからな。」


 あの親父はああ見えて中々に忙しいので、帰宅するのは結構遅いのだ。純は親が居ないし、美咲の親は長期出張で家にいない。なので、遅くまでつるんでいるのだ。


 しかし、そのことを知らない亜衣は、少し怯えるような目で俺を見ながら質問してきた。


「浩介くん、不良なの?」


「喧嘩は好きだが、不良じゃないぞ。」


 テストの結果は不良並だが、決して不良というわけではない。服装もしっかりしてるし、授業もたまにしかサボらない。頻度は一週間に10回程度だ。……もちろん、授業を、だぞ?学校を10回も休むわけじゃないからな?いや、そこは普通にわかるか。


 ああ、ちなみに俺の通っている学校の制度が少し変わっているので、このサボり数はあまり多くは無い。


「じゃあ、次は街についてだな。ところで、お前はどこに通うんだ?姫織高校が近くにあるけど、そこに行くのか?」


 姫織高校とは、この家から約20分でいける女子高だ。


海斗かいとさんが蒼月あおづき学園に通うって言ってたけど。」


「はあ!?」


 蒼月学園は、俺の通ってる学校じゃねぇか!!あの親父、どこまで俺にこいつの面倒を焼かせるつもりだぁ!!


 だが、今怒っても仕方ない。親父が帰ってきてからぶん殴ればいい話だ。


「と、とりあえずその学園に俺も通ってるから、学園の説明は後でいいか。」


 コタツの上においていたお茶を飲み干すと、俺はスクッ、と立ち上がった。


「んじゃ、街の説明のために、ちょっと外出るぞ。案内とかするから速く用意しろ。」


「あ、うん。」


 リビングを出て、玄関に向かった。亜衣が来たのを確認して外に出て、ピッキング用の針金でかぎを閉める。


「んじゃ、いくぞ。」


「うん。」


 少し風が冷たい。まったく、今年は「暖冬だ」とかぬかしやがったのはどこのどいつだ。そんなことを考えながら歩き出した。


 …………


 純や美咲に会わずにすんだらいいな……











 家から出てしばらく歩いた。生活上使うことも多いので、まずは商店街へ案内からだな。


「生活で使う品とか、飯の材料とかはここで買う。色々なファストフード店とかラーメン店等、飯屋も多いから、そういうことでも使うぞ。」


「いろんなお店があるね。」


「そりゃ商店街だからな。」


 商店街を歩いて、結構使っている店を案内したりして午前の時間を全部使ってしまった。ここほど説明に時間がかかる場所は多分無いので、別にいいとは思うが。


「浩介くん、あそこでお昼食べようよ。」


 ちょっと前、純や美咲が俺の金で食いまくっていたラーメン店だ。店名は「虎鉄」。ここも結構使う。


 平日つるんでいる時だけでなく、休日にみんなで行ったり、一人で行って偶然2人にあったりすることもある。


「……」


 つまり、亜衣と一緒にいるところを2人に見られる危険があるかもしれないわけで……


「極力、他のところにしないか?」


「え……うん、わかった……」


 なんか悲しそうにつぶやく。ああ、なんかもう、こっちが悪いことしたみてぇじゃねぇか……


「……わかったよ、やっぱここでいいよ。」


「え、ホント!」


 実際のところ、こいつはなんでそんなにラーメン店で昼食を食いたかったんだ?行くっていったんだから、そんなことは後でいいか。








 流石に休日の昼間、虎鉄はなかなか繁盛していた。


「結構列できてるな。10分はあるな。場所はとっとくから、迷わない程度にそこら辺の店にでもいってこい。5000円やるから、その範囲内でなんか買ってきてもいいぞ。」


「ふぇ、ご、五千円も!?」


「お前はきたばかりだから小遣いとかもらってないだろ?やるからいってこいよ。」


「う、うん、わかった。あ、え、ええっと、ありがとう!」


 そう言って、亜衣は近くの店に入った。服屋に入ったようだが、それなら2万円くらい渡してやったらよかったかな……


 と、そんなことを考えていると、店の中から出てきたメガネの男が話し掛けてきた。


「お、浩介!お前もここで昼済ますのか?」


 彼の名は斎藤さいとう 孝昌たかまさだ。孝昌は、短めの黒い髪にメガネをかけたの男で、幼馴染ではないが、1年のころにみんなと同じクラスで、2年になってこいつは1組で俺らは10組とクラスが分かれたが、それでもずっとつるんでいる仲だ。放課後は、ナンパに行くことがあるので、たまにつるまず帰ることもあるので、金曜日は一緒に帰らなかった。


「よ、よう。ひ、ひさしぶりだな」


「どしたんだよ、木曜にも一緒につるんでただろ。お久じゃないだろ。」


 ちなみに、運動、勉強両方できて、男目からみても結構かっこいいほうなので、女子には結構もてる。ここで厄介なこととして、こいつの知能は半端ない。学年毎回トップを取るほどの知識、そして戦国時代の軍師かかなんかか?と思わせるほどに富んだ知略の数々と洞察力の鋭さ。


 もしこいつに亜衣のことがばれたら、あの手この手で俺をいじり倒してくるはずだ。学校でどうなることか、できれば考えたくはない。


「あいつを買い物に行かせておいてよかった……」


「うん、なんだって?」


「いや、なんでもねぇ!!」


「な〜にやってんだ、お前。今日のお前、結構変だぜ。あ〜、おもしろ。じゃな!」


 はっはっは、と笑いながらどうにか去ってくれた。あいつが帰った後、すぐに亜衣が帰ってきたので、本当に危機一髪だった。








「さて、飯も食ったしそろそろ行くか。」


 商店街をでて、後は近くの普段バイトしている喫茶店、公園、河原を案内した。全部俺たちがつるんでいるところだが、それ以外案内する場所を思いつかなかった。


 都心近くに綺麗な河原があるのは結構珍しいので、和むには結構いい場所だ。


「さて、一通り案内は終わったな。今日は晩飯でも作るか。晩飯は俺が作るけど、なにがいい?」


「……作れるの?」


 疑ってやがるな、小娘め。親父と二人暮らしの息子を甘く見るなよ、小学生のころから自分で一般的によく食べるものは作れるようになっている。


「分、どんなものでも作れる自信だってあるさ。さあ、言ってみろ。」


「えっと、それじゃあ、カレー!!」


「案外メジャーなもの要求してきたな。」


「浩介くんがカレー作れるかも不安だけど。」


「言ったな。お前の普段作っていたものよりうまく作ってやらぁ。」









 家につき、すぐにカレーを作り上げた。煮込む時間が少なかったが、その割にはまあまあなできだ。


「ん、おいしい!」


「言ったろ。それぐらい作れるって。」


 しかし、おいしいと言ってるわりには、少し悲しそうにしている。ニンジンが食べれないのか?いや、これはカレーのお決まり具材だから、注文してきた奴に限ってそれは無いだろう。


「私より、うまく作れてる気がする……」


 そんなことか。


「男は仕事、女は家事って時代はもう終わったんだよ。」


「でも……やっぱり、女としては悔しいよ。結構得意だったのに。」


「残念だったな。小1から朝晩作ってたキャリアにはそう簡単にかなわんさ。」


 食事を終え、皿を片付けコタツに足を突っ込みテレビを見るそれにつられてか、亜衣もコタツに足をいれ、同じくテレビを見る。


「……」


 二人でいるのに、黙々とテレビを見てるのもなんか変だな。あっちも何かを意識してか、テレビではお笑い番組をしているのに亜衣も笑わない。芸人さん、ホントごめん……。


「そういやさ。」


 長い沈黙を破るために、俺が口を開いた。


「え?」


「お前、服屋から出てきたけど何もかってなかったな。」


 服屋から出てきた時、亜衣は手ぶらだったのだ。


「お金が足りなくて……」


「悪ぃ、2万ぐらい渡してた方がやっぱりよかったな。」


「え、そんなにお金にゆとりがあるの!?」


「親父が結構稼いでるからな。小遣いはざっと20万はあるぞ。」


「え!?」


 一般人が聞いたら驚くだろうな。これを一ヶ月であいつらとつるんで全部使うと聞いたら、もっと驚くだろう。


 実際のところ、これを俺、純、美咲、孝昌で5万ずつに分けているため、すぐに使えるが。ちなみにこれは、俺の生活費全般も含まれているので、割と貧乏な生活にも近い気もしてくるけどな。


「お前も親父からもらえるんじゃないか?」


「すごい家だね……」


 暇つぶしにバイトをしているが、実際している意味は無いだろう。ちなみにバイトはこいつを案内した喫茶店で月、水、金でみんなで行っている。


 前の金曜のようにたまに休みになることもあるが。


「さて、そろそろ遅いし寝るか。明日から学校だから、お前も夜更かしするなよ?」


「浩介くんはしないの?」


「お前に色々教えないといけないから、しっかり睡眠をとっておくんだ。」


 そういって二階へあがり、自分の部屋に入りベットにもぐった。金持ちと入っても、ほとんど貯金しているため、家は割りと普通だ。


 玄関から入ると、左に親父の部屋、右に風呂があり、もう少し進むと左に階段、右に便所があり、そのままおくに行くとリビング、台所がある。


 リビングから客室につながっていて、親父が人呼んだときとかに使う。昨日、一昨日は亜衣が寝てたな。


 二階には俺の部屋と、今日から亜衣の部屋になった部屋があるくらい。一階の客室は少し一般家庭には無いか。


 部屋も、普通の家とさほど変わらない。何坪とか詳しく知らないけど。


 なお、現在の亜衣の部屋はもともと母さんの部屋だったのだが、もう死んでいるので亜衣の部屋にしたというわけだ。


「明日から、忙しくなるな。」


 亜衣が上がってくる足音が聞こえた。二階に上がるのはほとんど俺だけだったので、とても違和感を感じた。


 まあ、すぐに慣れるんだろう。


 今日は悩むことも特になく、すぐに寝ることができた。でもまともな喧嘩、これからできるかな、とかは考えてたけどな。



続く


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