第一話 「騒がしき日々の幕開け」
空き巣の被害に遭いまして、家の家具がそこそこ盗まれており、しばらくの間生活に不便さが生まれました。高校卒業してから一人暮らしでしたから(泣)犯人はまだ捕まっていないことが、非常に心残りです。しかし、ようやく新しいパソコンが変えましたので、再び更新を再開できます!いい機会なので、これまでの作品を見直し、訂正等を行って再度更新を始めます。少し丁寧(?)になった『非日常同居生活』をお楽しみください!!
……ここはどこだ?
………何にも見えない。真っ暗な暗闇だ。ああ、これってアレか。夢の中か。思い出したぞ、午後の授業が暇だったから居眠りしてたんだ。これがいわゆるノンレム睡眠ってやつか。
でも、これってどうやって起きたらいいんだ?夢の中なのはわかったんだが、起きたくても起きれねえぞ。
……っと、なんか声が聞こえてきた。ああ、なんか少しまぶしい光が……これが意識の覚醒の瞬間なのか?
ともあれ、俺の視界に満たされた黒は、徐々に光を帯びて白へと変わっていく――――――――――――――
「浩介!早く起きなさい!」
やかましい女の叫び声のおかげで、俺の意識は完全に覚醒する。視界に満たされた光は、徐々に形となって現れてきた。目の前に広がるのは、何の変哲もない見慣れた教室の放課後の風景。
……どうやら午後の授業を全部寝てたらしいな。せいぜい今休み時間くらいか?と思っていた自分の馬鹿さにビックリだ、こんにゃろう。
「ほらほら浩介、早くしなよ?今日は浩介のおごりなんだから、ね?美咲ちゃんは楽しみにしてるんだから。ああ、勿論僕もね。」
「ホントよ!さっさと帰る用意しなさい!」
教室の入り口へと目を向けてみると、そこには見慣れたつらが二つ。俺の幼なじみ兼親友の二人だ。
綺麗な黒い長髪を揺らして、偉そうに腕を組んだいる女が清田 美咲、先ほどから何かとうるさく叫んでいる女だ。非常に勝気な性格で、それを表しているかのような力強い印象を覚える目、そしてきれいに整った顔に綺麗な長髪、背もそこそこ高く、男女を問わずに人気がある。これでも昔はかなり控えめの可愛らしい性格だったんだけどな。
そしてその横で柔和な笑顔を浮かべている優男が伏見 純、男というにはきれいすぎる女顔負けの顔立ちだ。金色の短髪で、染めたような不自然さはまるでなく外国人のようにナチュラルな金色。背が一般男子よりも少し低いのだが、そこがまた年上のお姉さま方にうけるらしい。ちなみに顔に似合わず俺と同じでケンカ好き。でも荒っぽい性格というわけではなく、どちらかというとかんなり温和な性格だ。
おっと、自己紹介が遅れたな。俺の名前は荒神 浩介。喧嘩大好き高校二年生。特徴はこの銀髪くらいなもんだな。身長はそこそこ高め、自分でいうのもなんだが、足は結構長いぞ。普段は純と組んでそこらの学校の不良どもと喧嘩三昧な日々を送ってる男だ。
「言っとくけど俺もう金底尽きてきてるからハンバーガー程度で勘弁しろよ。」
ここで俺らの生活状況をば。俺たちは親が家にいないため(俺はいるんだけど)、晩飯は俺たちでじゃんけんで負けたやつがおごる、というシステムなのだ。そんなわけだから、大体20時くらいまではいつもこいつらとつるんでる。
「ちょっと、ハンバーガーはないでしょう?私前ラーメンおごらされたんだから!焼肉ぐらいおごりなさいよ!」
なんか半分切れ気味に美咲が怒り始めた。しかし、あきらかにラーメンで焼肉とは割りにあわねぇだろ、と心の中でそうつぶやく。
「ふざけんな。んなもん食ってたら、せっかくのご自慢のスタイルに傷が入るぜ。」
と、茶々を入れてみても、美咲は余裕そうに鼻で笑う。
「ふっふ〜んだ、心配無用よ、そんなこと!そんな一度の食事くらいで太ったりしないからね!」
「塵も積もればなんとやら……」
「あれぇ〜?純くん、何か言った〜?」
「……なんでもないです。」
弱いな純。もっと面と向かって言ってやれ、じゃないと調子に乗るぞ、こいつは。
まあ、いつまでもこんなところでゆっくりしていても時間の無駄ということで、とりあえずラーメンをおごることに落ち着いで、俺たちは学校を後にした。
「ちょっと、食べ過ぎたかな?」
純の会計、チャーシューラーメン大盛り餃子セット、炒飯大盛り、オレンジジュース、合計1920円。
「いいじゃない、浩介のおごりなんだから」
美咲の会計、激辛ラーメン大盛り×3、叉焼丼、ビール、合計3240円。
「よくねぇだろ!てか美咲!未成年がなにアルコール摂取してんだ!」
しかしまあ、有り得んほどにしっかりと金は出さされたけどな。これだったら焼肉の食べ放題とかのがよかったかもな……
ラーメン店で飯を食った後、適当に町をぶらぶらと歩いていつものところで解散。家まではここから大体三十分。夜空を見上げると、星一つ見えない暗い空に若干のむなしさを感じる。
「家に着くころは9時だな。まったく、親として子供に家のかぎぐらい渡しとけよ。」
そう愚痴りながら、俺はポケットからピッキングセットを取り出した。……なぜそんなものが入っていんだ、という突っ込みはなしだ。OK?家庭にはそれぞれ他の家庭には理解できないもんの一つや二つはあるもんだ。
「よし、家が見えてきた……ってあれ、電気がついてるな。家出るときつけっぱなしだったか?」
誰もいない夜道を歩いていくと、俺の家が見えてきた。が、何故か電気がつきっぱなしだ。しっかり消したと思ってたんだけどな。もしかして、空き巣か?
「……まあ、とりあえず入っとくか。空き巣程度なら軽くボコせるだろうし。」
というわけで、先ほどのピッキングセットを使い、家の鍵を空けて中へと入ってみる。……なんでそんなことができるんだ、という突っ込みはなしだ、OK?
一応、光のもとに行ってみる。すると、そこには見たこともない俺と同い年くらいの赤い長髪の少女が床に座っていた。もしかして、これが空き巣か……?
「……だれ?」
しばらく沈黙した後、半分頭の回転がおかしくなりながらたずねた。しかし少女はその問いには答えず、顔を蒼ざめさせながらただ座ったまま後ずさりした。
「あ、あ、あの、わたし、その、この家にきたばかりですから、その、金目のものをいてる場所なんて知らないし……」
どうやら俺を泥棒か何かだと思っているらしい。俺は自分の手元に目をやった。
「あ……」
手にはまだピッキングセットを握ってあった。これじゃあ、確かに俺は泥棒にしか見えないな。
「あ〜待て、誤解だ。俺は泥棒でも強盗でもない。」
「わたし、ほ、ホントに、知らないんです〜!」
まったく聞いちゃいねぇ。ちょっとイライラしてきた。
「人の話を聞け!」
つい、大声で怒鳴ってしまった。少女は、
「ひゃう!!」
という声(悲鳴?)をあげて硬直した。
「とにかく、いったいあんたはだ……」
近寄りながら質問しようとしていたら、床においてあった枕(なぜここに!?)につまずき、転んでしまった。
その少女の上から落ち、少女と浩介の唇が重なった。
「……っ!?」
いきなりの状況にパニック状況に陥ってしまい、簡単な「のく」という行動を脳は神経に命令することができなかった。
「おや〜、邪魔だったかな?」
数秒後、不意にリビングの入り口からある男の声が聞こえた。
俺は今のこの状態がまったくよめん。しかし、俺の第六感が告げている。この事件(?)の犯人はこいつだと!
「お・や・じぃ!」
俺は一瞬で立ち上がり、そのまま親父めがけて鉄拳を振るった。しかし、こともなげにこいつは俺の拳をかわしやがった、畜生。
「しかし、会っていきなりの娘にキスをするとは、驚きだね〜。自分の感情をストレートにあらわすアメリカ人でもここまではしないと思うよ?」
「黙れ、クソ親父!大体こいつ誰だ!何が理由でここにいんだよ!」
絶えず何度も連続で拳を振るっては見るが、全部当たりゃしねえ。あ〜、畜生、むかつく!このクソ親父、返答しだいじゃただじゃおかねぇぞ。
「ん〜、話すと長〜い時間を必要とするから、とりあえずお茶くんで。」
俺の拳を交わしながら、事も無げにここから見える台所の棚の中にあるコップを指差しながらそんなことを言う親父。。てめぇが用意しやがれよ。とか思いつつも、そこで意地を張っても話が進まない。ここは俺が大人の対応をしようじゃないか。仕方なく拳を止めて台所に行き、コップにお茶を注ぎ親父に渡した。
「さて、軽く精神的に落ち着いてきたんで、ちゃんと話してもらおうか。」
「別にいいけど、その手の包丁は置いてきてほしいね。どっちかというとさっきより君の精神状態荒くない?」
手を後ろにして隠していた包丁に気づきやがった。くだらんところでまったく鋭い。いや、くだらなくは無いと思うけど。
「まあ、話そうか。その女の子は広瀬 亜衣ちゃん。親戚の子供だったんだけど、まあ、色々合ったことは省くけど、とりあえず両親が交通事故でなくなっちゃってね。」
普段とかわらんテンションで、まるで『今日自転車で転んじゃった。』ってくらいのことを告げるかのように身内の不幸を……って待て待て!テンション軽ッ!軽すぎんだろ!
「で、身内の中で、収入に一番ゆとりのある僕の家が引き取った、というわけなんだよ。」
ちなみにこの親父、むかつくことにとても優秀な人間なのだ。現在35歳だがすでにとある有名な財閥の幹部を務めているぐらいだ。その地位にたどり着いたのも、たった20歳のときなのだからもっと驚きだ。
なので、この家で金に困ったことは一度も無い。無論貯金だって大量だ。しかし……
「だからって引き取ることも無いだろ。そんな面倒くさいこと、ほかの親戚に任せりゃいいだろ。」
ちょっと冷たいことかもしれないが、俺は心の底からそう思う。まったく知りもしなかった娘の面倒を見るのが至極面倒くさい、という理由もあるが何よりこの家に一般人を置くことに賛成できない。俺が理由で酷い目にあう可能性なんてのはざらなのだ。
てかちょっと待て、親戚が死んだって、そんな話聞いた覚えないぞ?というより、俺は荒神家に居ても親戚が何人居るのか、とかほとんど知らない。せいぜい荒神 遙っていう従兄弟とその親が居ることくらいだ。
「君が考えていることももっともだ。確かに君には言っていなかったね、親戚が死んだこと。」
違う!俺の考えていることは実際そこじゃない!確かにそれも気になって入るんだがよ!
「まあ、落ち着きなよ。実際、ほかの親戚に任せなかったのにも、君にとってはとても意外なことに理由が……
「なんか、理由があんのか?」
「あったり無かったり。」
「いや、どっちだよ」
いいかげんこいつとくだらん漫才をするのもいやなんだよな。さっさと終わらして欲しいのだが……
「亜衣ちゃん、眠そうだから今日はとりあえずそこの客室の向こうにある部屋のベッドで寝てね。浩介君に自己紹介とかするのは明日でいいから。」
「あ、はい、わかりました。」
顔を赤らめて俺を見ながら言われた部屋へとはいっていく。
まあ、いきなりキスなんかされたら少し警戒のまなざしで見られるか。いや、決してわざとやったわけではないのだが。
「さて、本人がいなくなったところで、本当の理由を言おうか。」
親父が、珍しく真面目そうな声を出した。顔も、真剣そうな面構えをしている。
「実はね、親戚とかに関する情報に疎い君は知らないと思うけど、あの子の親はね、危険人物だったんだよ。人が苦しむことで快楽を得る、そんな人種。」
そう言ってから、そこからあの亜衣ってことの親父の様々な武勇伝を聞かされた。親父の話によると、あの子の父親はとても酷い男だったようだ。中学で傷害事件を起こしたり、高校でも同じようなことを何度も繰り返していたらしい。
話を聞いた限りでは、一生涯一度も会いたくないタイプの人種だ。一体どうしてそんな男が結婚できたかが疑問なくらいだった。
「それであの子を引き取るときも、実際は誰も引き取ろうとせず、孤児院に出そうとしたんだ。」
「なっ!?」
誰もあの娘を預かろうともしなかったらしい。実に残酷な話だ。
「そこで、ちょっとそれはかわいそうだから、世界で一番というくらい優しいこの僕が引き取ったのさ!」
「最後の発言が納得いかんがほかの事情はわかった。」
そこまで言うと、親父は不気味な笑みを浮かべた。なんだか、心の底まで見透かしているような、嫌な笑み。
「まあ、どうしても反対するというのなら孤児院に預けてもいいけどね、君では反対することはできないだろう?」
「っ!」
すべてを見透かすような目で親父は俺を見た。そのとおりだ、俺は反対できない。反対できない理由、それは哀れみの感情なんかではない。反対できない理由は……
「俺も寝る。」
「それは、肯定と受け取っていいのかな?」
「……好きにしろ。」
それだけ言い残して、俺は自分の部屋に戻った。しかし、取れないイライラが原因で、すぐに寝ることはできなかった。
せっかく明日は休みなんだ、寝るのが遅けりゃ遅くまでおきなければいいだろう。
続く