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ピンチをチャンスに (人外)変身モノ

作者: チル

 よくある日本の病院。

 そしてよくある病室にある名札は【細藤(さいとう) 龍也(りゅうや)くん】

 面会謝絶と書かれたプラスチック板がぶら下がった扉の向こうには夜中だというのに人の声が耐えなかった。

「ぐぅううっぐう!」

「リュウヤくんしっかりして!」

「脈拍安定しません!」

 苦しみに耐えるうめき声の主はベットに横たわり多数の管が身体へと伸びて薬液を投入している。

 白衣を着た数人は彼を囲んで慌ただしく動き最終的に彼を別のベットへ移し病室の外へ運び出した。

 その後一時間ほど病室は静まり返った。


 ベッドへと戻った彼、リュウヤは疲れ果てた顔をしていた。

 このような事は一度や二度ではない。

 この所毎夜繰り返されそしてこれからも増えていく事をリュウヤは知っていた。

 誰もが明るく言葉をかけてくれるが影で隠れて聞いた事をつなぎ合わせると自分はもう寿命は長くないのだという事も分かっていた。

 だから彼は実際の疲労以上に疲れた顔をしていた。

 人間は希望が無いときにも明るい顔を出来る者は少ないがそれがただの子どもとなればなおさらだ。

 リュウヤはまだ10に満たない年齢でこれから二桁の大台へと向かう頃だと言うのにどうやらそこまで身体は持たないらしい。

 苦しさが処方により紛れているうちに眠りにつこう、そして出来る事なら眠っている間に死んでしまいたい。

 そんな思いが頭の中を巡りさらに眠れなくなる。

 しがみつこうとする思いを振り切ろうと一度身体を起こすとそこに『それ』がいた。

 一度目は見間違えかと思った。

 薬には幻覚とかも見えるものが有るとか聞いたことがあったような気もするしとリュウヤは思う。

 何より暗闇だ。

 あらゆるものが意味を持った何かに見えてくる。

 二度目を合わせた時はまずは医者やナースを思い浮かべた。

 しかし明らかに白衣ではない。

 ただ、ここは普通の人はこれないようになっているし親ですらなかなか来れない。

 三度全身を見回すともはや夢でも見てると思うしか無い。

 暗闇の中に立つ『それ』は明らかに人ではない。

 人型の獣だ。

 それに青っぽい翼を背中から生やし溢れる全身の毛を緩そうな服装で覆い隠してる。

 そんな不格好とも言える姿は隠してるというよりはただ普通に着てるつもりなのだろう。

「あ……」

 なんだろう、なんと言えば良いのだろうとリュウヤが思っていたら変な声が出た。

 とりあえず、変な夢だ、ということで。

 ベッドへ潜った。

「おはようサイトウリュウヤくん。」

 爪の先でほっぺたをぐりぐりぐりぐり。

「いててててて!」

 リュウヤがおもわず目を見開いたらそこには近づいてきたそれがいた。

 手の先まで毛に覆われているのに人のように五本指で爪は若干人間のそれより太くするどそう。

 しかしそんな爪でグリグリされても痛いだけで傷はなく力を加減して痛みだけ与えたらしい。

「夢、じゃない……か。」

「はいモチロン。」

 さっと手をナースコールに伸ばす。

 名前の通り押せばナースが来てくれるスイッチだ。

「あ、あれ、くそう、壊れた?」

 カチカチと何度押しても反応しない。

 反応するとランプが点灯する仕組みなのだがまるで無反応だ。

「いえ、ちょっと仕掛けさせて貰ってね。今ここは外とは完全に分かれた場所になってるんですよ。ほら、結界ー!とか言うではないですか。あんな感じです。」

「なんだそれ……」

 漫画みたいなことが目の前で起こりすぎていてリュウヤはついていけなくなっていた。

 よくみると窓から覗けるはずの景色はどこまでも暗く闇になっていて感覚的にはまさに結界でもはられているようだった。

 リュウヤは少し考えた末それから目をそらし横になった。

「おや?」

「……知らない人とは話しちゃいけないって。」

「そうだね、賢い子だ。」

 リュウヤは目をそらしつつも背中でそれの気配を探る。

 足音がしてベッドから離れそのまま窓に寄りかかったようだ。

「最近の子にしては髪の毛も短いね?それのおかげで大きめのおでこが賢さを強調しているようだ。」

「…………」

「そう、そんな感じでリュウヤくんは話を聞いているだけでいい。何すぐ話は終わるさ。」

 リュウヤは何度か抜け出そうとはしているがこういう時に限って足は不調であまり歩けそうもない。

 走れなければ意味がない。

 それに不思議とそれに対しては恐怖を感じなかった。

 丁寧な言葉なのか優しげな声なのか原因は分からないが雰囲気というものだ。

「本題に入るよ。」

 リュウヤはそれの言動を逃さないように注意深くした。

「リュウヤくんは正直もう長くない。そしてそれをリュウヤくん自身も知っている。」

 ドキリ。

 全て正しい。

 正しいからこそ三つの意味で驚いた。

 一つは医者と親それに自分しか知らない体調をしっている。

 一つは改めてそれを面と向かって言われるのは初めてで理解していたはずなのに心は驚き恐怖した。

 一つはそのことをリュウヤが知っていた事はリュウヤしかしらない秘密だった。

「リラックス、リラックス。脈拍が乱れるよ。」

 リュウヤが深呼吸し終えてから話は続く。

「なんで知ってるかーとかはまあ頭の中が覗けるからとかそこらへんの理由で納得して貰おう。それでそんなリュウヤくんはこのままではあまりにもかわいそうだ。」

 突拍子な設定が出てきたがリュウヤにとって納得できないまま話は進む。

「リュウヤくん自身が生きる気力すら無くしてしまってもう死に任せてる。だけどね、私はリュウヤくんは本当は希望が欲しいだけなんだと思う。」

 窓辺からリュウヤのそばにあるリュウヤの体調管理する機械を覗き込む。

「こんなものつけることなく元気に過ごせる可能性。そんな可能性が藁ほどあればそれをつかもうとするはずだ。」

 言い回しはリュウヤには難しくてよくわからなかったが言いたいことは分かった。

「そのチャンスを私が託そう。」


 想像通りの言葉をそれは言った。

 一瞬強く息を吸ってしまったぐらいリュウヤにとって魅力的な話だった。

 しかしすぐに長くため息をつく。

 いくら意味のわからないそれでもそんな嘘のような言葉は信じられない。

 何がしたいのかわからない以上信用も期待もできない。

「あら〜……まるで信用がない。でもだからこそリュウヤくんは賢い。賢いから危険へ踏み込んでチャンスを得る機会を逃す。でも実際にこれは藁程度しか無いチャンスなんだ。その判断は正しい。」

「………」

 リュウヤは何も言わない。

 それでも会話が成立しているような様は本当に頭の中を覗かれている気分にさせた。

「デメリット。つまり悪いことはたくさんある。まず想像を軽く越える苦痛がある。耐える必要はないけれどそれを前にして踏み込めるような人はほとんどいない。」

 リュウヤは今まで散々の苦痛、主に病院での苦しみを思い出したがそれを越えてしまうという事なのかと身震いする気持ちになった。

「それに人を捨てることになる。あ、人としての生活は捨てなくて大丈夫、周りからは原稿ななリュウヤくんが見えるだけだから。」

 なんともぼやかした言い方でよくわからない。

 リュウヤはさらに話を聞き続けた。

「それに今度は死ねなくなる。これがデメリットかメリットかは人によって別れるけどね。」

 不老不死というものをリュウヤも知っている。

 だからこそリュウヤはそれが何を言ってるのかさっぱりわからない。

「メリット。つまり良いことはまずこの死にかけた状態から完全に回復し健康な肉体と精神で今後ずっと元気に暮らせるさ。それにとてもリュウヤくんは強くなる。とてもね。メリットはそのくらいだけど大きいと思ってくれると嬉しいな。」

 抑揚をつけ大きく話す声は普段なら病室の外へ響き誰かがやって来る。

 しかしそんな様子は一切無い。

 本当に現実なのかもう一度疑いたくなるぐらいだ。

「返事は明日聞かせて欲しい。大丈夫明日までなら生きれるから。私は詐欺師じゃないから言葉を急がないよ。それじゃあおやすみなさい。」

 ふとそれの気配が消えた。

 慌てて目をやるとそこにそれなんていなかった。

 窓からは月明かりが差し込んでいるし廊下からは巡回のナースの足音がする。

 本当に奇妙な夢を見た、と自分を無理やり納得させてリュウヤは眠りについた。


 次の日の夜。

 リュウヤはいつものベッドにはいなかった。

 リュウヤはとある一室で怒号が飛び交う中にいた。

 ベッドで寝かされ全身異常に汗をかいて呼吸はまともに出来ずリュウヤの耳に響くのは自分の心音だけだった。

 今までで最大の発作でリュウヤは自分でも命そのものの危機を感じていた。

 何が明日までなら生きられるだ、と夢の中のそれに愚痴を心中でぶつける。

 霞む視界と意識に心は沈みやがて夢との境界は消えていった。


「うっ……」

 リュウヤは不意に目を覚まし周りを見渡す。

 見慣れた天井だ。

 ナースが声をかけてきてそれにおぼろげながら応える。

 どうやら死なずに済んだが気絶していたらしい。

 すぐに来た医師によって今夜の峠は超えたらしいことを確認し再びリュウヤ以外が病室から出て静まり返った。

「……死ななかった。」

 本当に今日はまだ死ななかったらしい。

 嬉しいのかそれともまだ死ねなかったのか半々の気持ちが混じり合う中で一つ浮いた気持ちがあった。

 それが言ったとおり死ななかった。

 今はいないそれは夢の中のような存在で意味のわからないことを言い散らかして消えたが今生き残るという予言が現実となった。

 自分ですら死を覚悟するダメージだったのに他人のそれには昨日から生き残ることが見えていたということだ。

 もしかしからそれは詐欺師かもしれない。

 けれどそれは神に近いものかもしれないと思うようになった。

 そういえば日本の神さまは動物の姿をしているものが多いらしい。

 機会があれはわ調べてみよう。

 そんなことをリュウヤが考えていると不意に視界の端に何かが現れた。

 正確には何か見なくとももうリュウヤには分かった。

「死ぬかと思った。」

「でも死ななかった!」

 それの顔を見て初めて話した。

 長い犬みたいな口と鼻が動いて人の言葉を話すのはさながらアニメだ。

「今日は話してくれるんだね。」

「昨日知ったから。それで昨日の話のために来たんだよね?」

「モチロン。」

 藁ほどしかないわずかなチャンス。

 それを昨日聞かされ一日考えていた。

 本当は自分は生きたいのかどうかということを。

 それの嘘のような話を信じるかどうかを。

「もうずっと死ぬのなら生きてる意味なんてないと思ってたんだ。どうせ死ぬんなら何したって同じって。だけど昨日の話を聞いてわかったんだよ。オレだって生きたいよ!まだいっぱい遊びたいし!知りたいことだってある!こんな所にいるんじゃなくて、生きていたい……」

 昂ぶった感情は最後には落ち込んだ。

 力を出し切って少しすっきりしたし何より疲れた。

「良い子だ。リュウヤくんは最近鏡は見たかな。まるで死にかけのお年寄りのように疲れた顔で筋肉は痩せて動けないから身体は緩むに任せて……まあとにかくひどかったよ。それが今や良い顔をしている。決まったって顔だね。」

 そんなにひどい顔だったのかとふと思い浮かべる。

 リュウヤは鏡なんてみて生活するタイプではなかった。

「やるのならこの藁を掴んで。ただし起こる事はある意味死よりも酷いかもしれない。」

 リュウヤの前に一束の藁が差し出された。

 昨日の話になぞらえたのだろう。

 端をそれが右手で持ちリュウヤに反対側を掴むようにさせている。

「それでも、やらなくても死んじゃうのなら、オレは……やる!」

 震える右手を左手で抑え藁に手を伸ばす。

 本当は恐ろしい。

 怖くて何が起こるか分からないものになど手を出したくないのは本当だ。

 それにあそこまで警告されたものだからなおのことだ。

 それでもリュウヤは生きれるのなら、海中に漂う僅かな藁ほどしかない可能性でも。

 リュウヤは掴むことにした。


 耐える耐えないの話ではなかった。

 心の底から捻じ曲げられていった。

 あらゆる痛みが襲いあらゆる絶望がやってきてあらゆる死に方をした。

 どんな酷い仕打ちも越えたものが襲ってきて何十回何百回何千回カウントなんて出来ないほど心は壊れ新たな心に変わる。

 世界中の負を体験し宇宙中の終わりを体感した。

 感情も心も無くされ意志すら一片も残らず消え。

 その消えた事に次の絶望が襲ってくるあいだに気づいて恐怖する。

 もう自分が何で何なのかわからずなぜ永遠と闇を渡っているのかすら分からない。

 無限に無間の地獄を味わい無限のはずが気づいた時には次の死がやって来る。

 終わりがない終わりに自分は消え最後に体感したものは最愛の人をなぶり殺してしまった絶望だった。


「ぁはああああぁぁぁぁ!!!?」

「どうだったかな?私からすれば一秒もたってないよ。」

 まず彼は自分を思い出し。

 リュウヤは自分の身体を思い出し。

 そして自分が正しくここにあると言う事に震えがきた。

 徐々に感情が追いついて声が漏れ目からは涙が溢れ出た。

「うわあああああああ!!!あああぁああああっ!!ああああああ!!!」

 人目もはばからず全力で泣いた。

 リュウヤは嬉しくてこんなに泣いたのは生まれて初めてだ。

 産声を上げて泣いた時よりも強く強く泣いた。

 ひとしきり泣き終わるまでそれは待っていた。


 数分たって泣き付かれた頃にそれはハンカチとティッシュを差し出した。

 涙を拭い鼻を噛んで目は赤く腫れたままだが何とかおさまった。

「ごめんね、こうしないとリュウヤくんの精神はこの後耐えられなくなってしまう可能性が高かったからね。あ、これから酷いことするわけじゃないよ!?」

 顔を引きつらせたリュウヤにそれは素早く訂正を入れた。

「身体を変えるのさ。人で無くなるともいってもいい。だから人として産まれた精神では耐えられなくなる。だから完全に新しい精神に生まれ変わらせる必要があったんだ。じゃあ始めるよ。」

「始める?何を……?」

「リュウヤくんの身体を変えるためにはリュウヤくん自身が強く望む必要がある。どうありたい?どうなりたい?そうすればリュウヤくんは今なら変われる。そういう状態なんだ。」

 少し前までならリュウヤは半信半疑だっただろうが先ほどのこの世のあらゆる不幸を経験した後では信じるしかない。

 それが人智を越えた力を持っているのだと。

「オレは……強くなりたい。もうこんな生活は嫌なんだ。たくさん嫌なことを味わったからわかる、嫌なものは嫌なんだ。もう病気なんてなりたくない、いつも元気でそれに……どんな不幸からもオレも、オレの周りも、世界も全部守れるくらい強くなりたい!」

「良いね、その調子だよ。」

 リュウヤは願う。

 体全体が脈打つように響いてるように感じる中で。

 リュウヤは願う。

 まさに自分の名前、竜のように伝説のその存在のように強くありたいと。

 リュウヤは願う。

 あらゆる困難をはねのける力を。

 リュウヤは願う。

 足先が奇妙な感覚に覆われ手先が形変わるのを見つめながら。

 リュウヤは願う。

 息すら荒くなっても苦しくないが全身に奇妙な感覚が広がっていく中で。

 リュウヤは願う。

 いつの間にか服が壊れるように破れ奇妙な感覚と共にウロコが突き出ながら。

 リュウヤは願う。

 顔や頭すら奇妙な感覚と熱でどうにかなってしまいそうになりながら。

 リュウヤは願う。

 まるで何もかも赦されたような快感に包まれながら。

 リュウヤは願う!


「おはようリュウヤくん。」

「あ、あれ、オレは……」

「最後は仕方ないさ、意識がある身体の部分も変化したんだから気を失っちゃうさ。」

 それは部屋の明かりをつけてから何処からか用意した姿見をリュウヤに見せた。

 そこに映っていたのは人ではなかった。

 全身はウロコに覆われ足は太く爪が大きく伸び手は人のそれながら何かを掴むと傷つけそうな鋭い爪。

 緑と青を混ぜて鮮やかな色に仕立て上げたような全身に所々ウロコが変化したような白い毛皮。

 頭にもそれがあってふさふさと伸びているが同時に二本の角が後ろに反って生えている。

 目は人間のそれより遥かに大きくまたまん丸で口は恐竜のようにがばりと開き長い。

 後ろには太めの尻尾が生えてフリフリと自分の意志で動かせる。

「あ……これが……オレ……!?」

「気に入っていただけだようでなにより。」

 そういえばとリュウヤ身体の調子を探る。

 やはり先ほどまでの不調さはどこにもない。

 力がぐんぐん溢れ出して止まらないぐらいだ。

「新しい姿でかっこよさも可愛さも増してとても良いと思いますよ。」

「あれ、そういえばオレの股間の……」

「ああ、もう人ではないですから無くなってしまったんですね。性別というモノ自体が無いと思われます。」

 はぁーとかほぇーとか言葉にならないような感銘を口にしながら実感が湧くようなわかないような不思議な気持ちで姿見を見ていた。

 これが自分の新しい姿。

 ゲームの中にしかいなさそうなドラゴンの姿。

「先程もいいました通りリュウヤくんは周りからは今まで通りにしか見えません。まあ健康にはなりましたからそう見えるようにはなりますが間違ってもその姿では見えません。細かいことは後にして今は朝までその姿を楽しみましょう!」

 元気。

 活力。

 健康。

 今のリュウヤには溢れかえっていた。

 嬉しかった。

 ただ元気に慣れたということでも嬉しいが生まれつき弱い身体を呪っていたリュウヤとしては見違えた自分にとても嬉しい。

 それに尻尾は好きな方だ。

 小躍りしたりふりふりしてみたりその晩はそれと話しつつあっという間に過ぎた。


 翌日以降。

 スピーディに日々が過ぎた。

 奇跡の復活、医学を越えた人間の生きる力としてリュウヤはまるで健康となったその身体で精密検査の後しばらくして退院出来た。

 親は泣いて喜んでくれた。

 リュウヤは親はてっきり負担にしか自分のこと思えないのではないかと思っていたので喜んでくれたのはとても嬉しかった。

 学校にも元気に登校出来るようになり初めは馴染めなかったがこの身体のおかげなのか自然と周りと打ち解けれた。

 ただ人を捨て変化した事は誰にもわからない。

 どうみても周りからは人だし誰かに言おうとしても不思議な力で伝えようとした物は掻き消えてしまう。

 声でも文字でもだ。

 身体も尾も爪も人のものではないのに人として周りのものに触れれるため異常を悟られることすら無い。

 それの説明ではリュウヤの竜の身体が有る次元とリュウヤの人の身体の次元はほんの少しズレててごく自然に生活出来るように工夫してあるのだとか。

 とうぜんこんな身体になってしまったため服はまともに着れないが人の姿は自然に着れる。

 最初は不思議で仕方なかったが時期に慣れた。

 全裸にも。

 まわりからは男の子として見られるがリュウヤ自身は何となくだが別に女子に恋心はいだけそうにないしかと言って男にも抱けるわけではない。

 学校内ではたまに男と女別れて争うことや浮ついた噂もあったが少なくとも人に対して男や女で対する事が出来ないんだなと何となく理解していけた。

 リュウヤはこの身体はまだ使い始めたばかりだがもうきっと手放せないと思っている。

 リュウヤにとって大切な自分として認めれたから。

 そしてリュウヤは寝る必要すら無いこの身体で隠れていつも誰かを助けた。

 いざという時は竜の力も出せるのだがそれをするときは自分はまわりから見えなくなるらしい。

 それを利用して川に落ちた子を助けたりおばあちゃんガ車に轢かれそうになった時必死に車を止めたりした。

 少しでもあの味わった不幸が減るように。

 そんなリュウヤは『それ』をしばらく見ていないのに気づく。

 そして結局『それ』が何なのかは分からない。

 それでも『それ』にはありがとうの気持ちでいっぱいだった。

 そんなリュウヤが『それ』と再び出会うのは少し先の話。


おわり

読んでくれてありがとうございました!

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[良い点] TFモノ、ご馳走様でした。だいすき
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