おかんは強し‼
新婚ホヤホヤを思い出したけど、私……男前過ぎやろ。
私ら夫婦は仲良しである。
結婚して3年しか経ってないから、新婚と言えば新婚。
二人で出掛けるのが、楽しくて仕方がない。
買い物、ジム、散歩、個人懇談、運動会。
取り合えず手を繋ぐ。
理由はおかんが迷子になったら困るから。
幼稚園でも『仲良しやね。』と言われる。
そんなことはない、喧嘩も勿論している。
膝と膝を向き合わせて
おかん『ちょっと、そこにお座りなさい。』
とスタートするか
お腹魔神『お話いいですか?』
とスタートするか。
おかんも、お腹魔神も謝りません。
あまり感情的にもなりません。
多少の起伏が合っても、それはそれ、これはこれ。
おかん『◯◯って言われるとこんな気持ちになります。』
お腹魔神『◯◯っていわれると、いくらオレでもカチンと来る。』
てな、具合。
そしてお互い『それはすまなんだ。』『それはこっちが悪い、ごめんね。』
あっ、謝ってたわ。(笑)
お腹魔神は感情的にもなることもある。
そんな時はおかんを見て見ぬふり。ようはムシですな。
こちらも慣れたもので『お好きにしなさい』と、必要なこと以外話しかけない。
ほっとくと、その内落ち着いてきて話ができる状態になるんだそうな。
そして
お腹魔神『お話いいですか?』
に繋がるわけである。
こちらが感情的になったとしても、話している内にクールダウンしてくる。
感情がピークに達する前にクールダウンするのとは、訳が違う。
明らかに頭がスッキリ、爽快、物事がクリアに見えるのである。
話ながら頭の中が整理されてくる。
昔からこうあったわけではない。
感情的にぶつかって、『そっちが悪い』の応酬だった。
おかんも、お腹魔神も家を飛び出しては、こいつとは生活出来ん‼
何てこともしばしば……。
いざ、離婚の話になったときの話。
お腹魔神『もうムリや。離婚しよう。』
おかん『いいよ。お腹魔神が決めたらいい。一緒になるときも、別れるときも決定権は、そっちにある。』
お腹魔神『分かった。』
おかん『ほんじゃ、家にあるもの所有権と子供たちとはどうする?
会う?会わん?養育費は元々血繋がってないからいらないよ?』
お腹魔神『基本的には全部家財は持っててくれたらいいから、スピーカーと服だけでいい。すぐに子供たちと会うのは出来へんけど、気持ちの整理付いたら父親として接したい。養育費も気持ち程度やけど払いたいし、誕生日とか入学とかの時はお祝いもしてあげたい。』
おかん『いいよ。子供らもその方が嬉しいやろうし。家財はこっちでもらう代わりに、テレビと布団はお金出させてな。あと新居の敷金もこっちで用意するわ。』
と、細かいところまで話して、紙にまとめたところで。
お腹魔神『あのさ、言いにくいんやけど。別れるって決めたら、何か勿体ない気がしてたんやけど。これで本当にいいのかな?もっと努力出来ることあると違うかな?今でも好きやのになんで別れなあかんのかな?って』
おかん『そんなん、当たり前やん。結婚して数ヵ月で全て分かるわけないんやから。今まで違う生活してきてんから、そんな簡単にわかり合える分けないやろ?今までは遠慮してる所もお互い合ったけど、遠慮ばっかりしてられへんやん。分かり合うために喧嘩して仲直りしてを繰り返すんやろ?まだまだ努力するとこなんかいっぱいあるわ。』
お腹魔神『おかんさん、もしかして分かってた?』
おかん『どう転んでも私はいいの。別れようが続けようが。関係が変わるだけで、私はあんたを離すつもりはない。そりゃ、夫婦って関係が解消されると寂しいけど、友達でも繋がってたらそれでいいよ。』
お腹魔神は私と心の距離をとっているときは『さん』付けにして、猫っ可愛がりの時は『ちゃん』付け、横並びの時は『呼び捨て』である。
これほど分かりやすい、心の距離感を表現するヤツは珍しい。
お腹魔神『なんで、そんな風に思えんの?オレは夫婦関係が終わったら、友達にはなられへん。』
おかん『今までそんな経験あんの?申し訳ないけど、私は普通じゃないよ。例えあんたが家を出て一人で生活したとしても、あんたは居場所になってくれる人おらなやっていかれへん人間や。私の代わりを探すだけやろ?見つけて入り混んで、始めはよくてもその内おんなじ事が繰り返すわ。その時逃げ場になってくれる人がおらな、あんたはやっていかれへんやろ?だから連絡だけ適度に入れてたら、その内あんたから連絡してくるよ。』
お腹魔神『おかんさん、すごいな。』
おかん『私は今まで共依存やってん。依存されるのにはなれてる。でも同じことは繰り返さへん。ちゃんとあんたから学んだことは身になってる。この形じゃないとって、拘らへん。でも、今の私にも子供らにも、あんたは必要やからあんたの居場所はここに作ってあげる。失敗してもフォローはしてあげる。ほんで、本当に旅立つときが来たんやったら、寂しさはやっぱりあるとは思うけど、ちゃんと手を離してあげるから、安心し!それまで勉強したらええやん。』
お腹魔神『(泣)』
おかん『私ほどいい女はおらん!』
お腹魔神『まだ夫婦してもいいですか?』
おかん『あんたの居場所はここやろ?好きなだけおったらええやん。』
今だにその時の離婚届も、今後の約束ごとを書いた紙も取ってある。
大きな喧嘩した思い出だ。
大切な宝物みたいなものだ。
我ながらこんなに勇敢で、勇ましく、格好いいのに、なんでたまに不安になるのか不思議である。
きっと忘れてたからに違いない。
情熱は離婚届の中にある。
額に入れて見えるところに飾っておこうかしら……。
あれ以来私が感情的になったのは、1か月前の次のステージに立った実感はあるけど、何をしたらいいか分からなくなってしまって、途方に暮れて、思わずお腹魔神に八つ当たりしてしまった時だけである。
お互い学んだんであろう。
感情的になって喧嘩したところで、ロクなことない。