趣味ですっ!
こればっかりは仕方がないよな。
私こと『おかん』は心配性である。
割かし何事にも心配性を発揮するが、こと『子供たち』の事になると我を忘れてあたふたしてしまう。
こりゃ、もう趣味の域だ。
長男のキャタピラーの顧問との事然り、学校に攻め込む勢いだ。
お腹魔神の
『それもキャタピラーの肥やしになる。世の中理不尽なことなんて、社会に出たらそれこそ山ほどある。』
と言う言葉で、一応鎮火させたが許してはいない。
今か今かと呼び出しを待っている34歳である。
『23歳ごときが、分かった風な口を聞くな』
と笑顔で言いたい。今すぐ言いたい。
キャタピラーはさておき、前話の喧嘩の話で思い出したことがあって、書こうと思う。
今回の主役は『ガチムチ』だ。
ガチムチは中学3年生の受験生である。
先週、ようやく志望校が決まったところである。
我が家が居住する尼崎は、去年学区編成があり校区が広がった。
明石の方面までが通学圏内にある。ちょっとした日帰り旅行な距離だ。
そんな中、ガチムチの第一志望校は有馬にある。
旧学区では最底辺レベルの高校と同じ偏差値だ。
余裕だろ?と思うなかれ!
内申書は全く期待できない。
学力も残念極まりない。
この高校がダメなら、再募集する定時制か通信制、若しくは1年留年するしかない。
我が家のルール、行くとこないから私立高校は無い。
周辺の私立高校のトップは男子校の灘高校だ。
もし長男のキャタピラーが努力の末、灘に行きたいと言うなら専願で灘高校に大手降って送るだろう。
その為にお金も貯めるさ‼
キャタピラーと違いガチムチは、中学ではちょっとした問題児だ。
勉強が出来ないからでは、決してない。
少しばかり素行がよろしくない。
眉毛を剃って別室送りになり、現行犯ではないから一応セーフだけど、禁止されている自転車通学をする。
そして、夏休みに1度家出をした。
もう1度言おう。
私は子供に関して、行き過ぎた心配するのは趣味だっ‼
ある日、ガチムチは『お腹魔神コンプレックス』のくせにお腹魔神と喧嘩をした。
理由はどうやらくだらんことらしい。
内容は聞いたが、忘れた。
私は酉年生まれだから、鳥頭なんだろう。
3歩歩けば忘れるのかもしれない。
喧嘩をしたまま家を飛び出し、いつも帰る時間になっても帰ってこなかった。
10時になった。
帰る気配はない。
趣味、心配性は軽いタッチで発動している。
10時半になった。
そわそわが花を開いた。
時計をチラチラ見てしまう。
ガチムチのケータイに連絡を入れる。
『電波の届かないところに……………』
電波の届かないところってどこよ~(´д`|||)
おかん『ちょっとその辺見てくる。』
お腹魔神『前に家飛び出したとき、向かいのマンションに隠れてたで。』
おかんは情報を手に入れて、腰袋に入れた。
おかんは放置されている、おかんの鍵の掛からないチャリを手に入れた。
目付きの悪い目が夜目のせいで、更に険しくなる。
般若顔で辺りを調べる。
いない。
東にチャリを進めた。
パラララー
ガチムチのマブダチと遭遇。
塾帰りで友達と談笑している。
おかんの攻撃。
おかん『ガチムチ知らん?まだ帰ってないねん。』
塾帰りマブダチの顔に驚きが浮かんだ。
塾帰りマブダチの攻撃。
塾帰りマブダチ『7時頃まで一緒に遊んでたんやけど、それから帰るって言うてた。』
おかん、15のダメージ。
おかんの攻撃。
おかん『お腹魔神と喧嘩して、飛び出してったきりやねん。心当たりない?』
塾帰りマブダチは可憐に攻撃を交わす。
そして、塾帰りマブダチの攻撃。
って、もういいですか?
このRPG風に、疲れたよ~(´д`|||)
塾帰りマブダチ『知ってる。親困らしたんねんって言うてた。それやったらうち来る?って聞いてんけど、塾帰りマブダチに迷惑掛かるから、適当に時間潰して帰るわ。って言うてた。』
三時間帰ってきてないよ~(´д`|||)
見かけたら早く帰るように伝えてとお願いにしながら、変態が現れるかも知れんから自分等も早く帰るように伝えて別れた。
更に捜索範囲を拡げて、般若顔おかんは夜道を走る。
思い当たる所を詮索したけど、見つからない。
心臓はドッキンコドッキンコのまま、一時帰宅。
やはり帰ってきていない。
もう11時になると言うのに…。
一先ず、夜中にこっそり帰宅することを祈って、玄関の鍵は開けたまま寝ることにした。
勿論、私は寝れない。
趣味は心配することだからだ。
目を閉じても眠さがカモーンすることはない。
朝になり、早朝から詮索。
相変わらず見つかる気配はない。
そんな私の姿を見てお腹魔神は言う。
お腹魔神『そんなに心配やったら、警察に連絡したらいいやん。』
でも……と悩みながらも、体は飛び付くようにケータイを握ってコーリング。
連絡後数分でポリスメンは到着後、事情を話一足飛びで警察署へ捜索願いを出しに行った。
もう夜中中、余計なお世話なほどしなくていい妄想をしてしまい、帰宅後はポリスメンの指示通り友達やら、学校やらに連絡。
連絡入ってないか、見かけたり連絡あったら連絡くれるようにと、忙しなく動いてたら、ガチムチが帰宅。
10時過ぎのはなしである。
迷惑掛けたところに片っ端から、かけ直し帰って来た旨と謝罪のオンパレードであった。
そして、登校日にガチムチは再び別室のお世話になる。
我が家に新しいルールが出来た。
『家出するときはママに伝えること。ケータイを持って家出すること。』
連絡を入れてる時点で、もう家出じゃねぇ~。
新ルールと共に幕を閉じたかと思ったガチムチの家出だが、翌日再び帰ってこなかった。
お腹魔神とやっぱり喧嘩したからである。懲りないやつだ。
お腹魔神『今度こそ2日くらい帰ってこうへんのとちゃう?』
おかん『う~ん………』
私はこの時確信していた。
ヤツは日が回らん内に帰ってくると。
案の定いつもより、少しばかり遅めに帰宅したが家出ではないようだ。
そして、おまけが一つ追加された。
ガチムチの担任が過保護になったことだ。
ガチムチ、愛されてるなぁ~。




