第三話
だいぶ間があいてしまいました…。
誠に申し訳ありません。
拙い文章ですが、楽しんでもらえるとありがたいです。
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―朝6時。
県立和泉乃第一高校、体育館。
紅白の垂れ幕と綺麗に並べられた椅子の中に、1つの人影があった。
その人影は、1枚の紙を眺めていた。
「鹿野裕史…か……」
そう言うと、人影はどこかに行ってしまった。
薄暗い体育館を照らしていた太陽は、雲の向こうに隠れてしまった――。
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「っはあ〜、やっと終わった〜」
大希が背伸びをしながら言う。
「結構長かったね…」
「予定よりも早く終わってあれはないわ…」
そうなのだ。およそ一時間半かかった入学式は、もとは二時間の予定だったのだ。
「どいつもこいつも話長すぎなんだよ。大体、他人の俺らにかける言葉なんてないだろ」
「まあまあ。一応時間割いて来てもらってるんだからさ」
「そうだな。文句いってたって仕方ないしな!!」
そんなことを言いながら、僕たちは教室に戻った。
ようやく教室に着くと、そこには既に賑やかな空間が作られていた。
和泉乃第一高校は、部活動に力を入れていることで全国的にも有名な学校だ。
そのため、県外からの入学者も多い。
「すげーな!もうみんな仲良くなってる」
「僕もびっくりしたよ。やっぱり、部活頑張ってる人は社交的なのかな」
「まあ、部活は上下関係とか厳しいから、そういうところは自然と鍛えられるんじゃないか?俺なんか、家が近いからって理由で選んだからな」
大希は、地元のサッカーチームに所属しているため、部活には入っていなかった。
放課後は、そこで7時まで練習している。県内では強豪チームとして有名らしい。
「ヒロはどうしてここを選んだんだ?お前の頭なら、もう少し上のレベルでも受かっただろうに」
「…まあ、孤児院のためかなあ。それに成績上位って言ったって、碧には負けるしね」
「あいつは異常だろ。常に二位と大差をつけて一位とか、逆に頭おかしいと思うぜ。…でも、お前だって、いつも10位以内に入ってたんだから、少しは自信持てよ」
――自慢するわけではないけれど、テストでは、いつも10位以内に入っていた。孤児院に迷惑をかけないために、勉強には真面目に取り組むようにしていた。
碧も、同じ理由で勉強には力を入れていた。といっても、僕とはレベルが全く違うけれど。
「そういえば、碧はどうしてこの学校を選んだのかな?」
「それは…」
ガラガラッ。
突然、教室のドアが開いた。どうやら、担任の先生が入ってきたらしい。ついさっきまで賑やかだった教室も、一瞬で静かになった。
先生は、教卓にたどり着くと、話し始めた。
「今年一年間一年四組を担当することになりました、広野史織です!みんな、一年間よろしくね」
先生は、子供のような笑顔でそう言った。
教室に入ってきたときの真面目な表情には息を飲んだけれど、どうやらとても明るい先生のようだ。
僕は少し安心して、ふぅ、と息をはいた。
周りの人も同じ気持ちだったのだろうか、肩を撫で下ろしていた。
その後、もう少し広野先生の自己紹介が続いた。
それによると、先生は英語の担当で、部活は吹奏楽部の顧問だそうだ。碧はまた吹奏楽部に入るとか言っていたから、そこの間での関わりがありそうだ。
(…そういえば、なんか誰かに似てるような…)
ふとそんなことを思ったけれど、誰に似ているか、それとも僕の気のせいなのかは分からなかった。
僕は、これからの高校生活を想像した。
――きっと、楽しくなるんだろうな。
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あのあと、学年全体で学校生活についての説明を受け、解散になった。
長い間ずっと話を聞いていたせいか、どっと疲れた気がする。
「…あーー、疲れたー…」
大希がたまらず言う。
言葉は発していなかったけれど、碧も珍しく疲れている様子だった。
「碧が疲れてるなんて珍しいね。講義とかがあっても、くたびれてることなんて滅多にないのに」
「流石に1日に二回講義みたいなのがあれば疲れるわよ…」
碧は深くため息をついた。そして、なにかを思い出したような顔をした。
「そういえば、あんたたちの担任って広瀬先生よね?」
「え?うん、そうだけど…もう覚えたの?早いね」
「流石の碧でも、入学式の時だけで覚えられるわけないだろ(笑)」
「そ、そうだね…」
「…でも、どうして突然俺らの担任の話?お前の知り合いかなんかか?」
少し恥ずかしくなって黙っている間に、大希が聞いた。
「別に、私自身は直接の関わりはないけど、友姫のお母さんなのよ」
「あっ、やっぱり!なんか雰囲気似てると思ってたんだよな」
「大希気づいてたんだ。すごいね。僕なんか、誰かに似てる気がするなあ、くらいだったよ」
「二人とも気づいてたの?しゃべり方全然違うから、気づいてないと思ってたけど、それなら言う必要なかったわね」
どうやら、先生の自己紹介のときに気になったのは、この事だったようだ。確かに、雰囲気はそっくりだけれど、話し方はや振る舞いは全く違う。
「まあ、担任だし、一応知らせておいたから。明日改めて挨拶しといて。友姫とは何度か話したことあるでしょ」
「うん、分かった。じゃあ明日挨拶しとくよ」
「りょーかい。…はぁ〜、もう明日から授業か〜……」
「ホント、拷問よね」
「…ね…」
果たしてこんな調子で明日は授業を受けられるのだろうか。
さっきまで希望しか見えていなかったのが嘘のようだった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。最近とても忙しいので、定期的にあげるのは難しいと思われます。
時間があるときに投稿するつもりなので、次がいつになるかはわかりません。
楽しみにしてもらえるとありがたいです。