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冒険への切欠

きちんと推敲できていないので、その内書き直したりするかもしれません

 一応事前に軽く調べて置いたことだが、この世界でも宝石と言うのは価値の高い代物だった。加えて現代の地球より資源が豊富とは言え、採掘の設備などは明らかに劣っている。

 故に、発掘量と言うのはそれほど多くない。それ故に貴族たちは自らの富の象徴としてごてごてと水晶や宝石のついた貴金属を集めたり身につけたりするそうだ。

 鉱脈はどこかとか、誰が発掘したのかとか、そんな事情がある為大粒のダイヤモンドなぞ持ち出せば、その筋では割と大きな騒ぎになるらしい。


「どこからか盗んできたのかと思った」


 ニコルでさえ、最初呆れ顔でそう呟いたくらいだ。だとしたらこの金策は失策だったかもしれない。確かにお金は必要だが、それで危ない連中に目をつけられたらたまったものではない。

 調子に乗って作ったダイヤモンドを見下ろす。五ミリ程度の大きさが三つ、一センチくらいの大きさが二つ。どれも不純物など含まれていないと示すように透き通った輝きを放っていた。

 話を聞く限り、五ミリのほう一つで、一般家庭の年収に近い金額になるそうだ。大きいほど貴重故、一センチまでになると、値段が跳ね上がると言う。


「……どうしよう、これ」

「余り心配しなくても平気。商会で扱えば、そこまで大事にはならない」


 やっちまった感があって思わずそう呟くと、珍しく苦笑気味にニコルがそう断言した。

 何でも個人で扱えば色々と問題が発生するが、商会が買い付けたことにして売る分にはそこまで大騒ぎにはならないらしい。

 むしろ商会にとってはそれだけ高価なものを取り扱っているとして箔がつくくらいだと言う。


「それにどこで買い付けたとかの情報は基本的に出さない。出したらそれは相手に横取りしてくれと言っているようなものだから」

「……なるほどな」


 その言い分に納得して頷く。兎にも角にも自分より幼いニコルの世話にならなければまともに金を稼ぐこともできないとは、情けない話である。

 少し考えた後、大粒のダイヤ二つと、小さいほうを一つ、マルテール商会で買い取って貰うことにした。

 とは言え流石に動く金額が金額なので、一先ず大粒のダイヤ一つ分の金額を貰い、残りは売れ次第取り分を支払って貰うという形にした。相場で売れた場合の値段から仲介量などを引いた値段なのだが、それでも大金貨二十枚という大金だった。


「少し色をつけてある。でもそれだけ支払っても、きちんと利益が出る計算だから安心して。そこから繋がるコネクションを考えれば、こっちとしても悪い話じゃないから」


 思わず頬を引きつらせる俺に、事も無げに言いきる彼女の商才は、やはりとんでもない、の一言だ。既に実の父親よりもいっぱしの商人として名前を売りつつあるのだから、その才覚と判断力は計り知れない。


「それはそれとして、リア。これはどうやって手に入れたの?」

「あぁ、作ったんだ」

「作ったの? 本当に? どうやって?」


 本気で驚いている彼女に、俺は苦笑で返した。


「流石に秘密、だ」

「……むぅ、ケチ」


 口を尖らせる彼女に対して、心の中で謝罪した。

 だってこの辺りの情報を教えたら、彼女によって国すら左右されそうだったからだ。それくらい、俺の中で彼女は頼もしく、同時に危険人物であると認識されている。


「……ちょっとくらい、ダメ?」


 上目遣いに小首を傾げられる。可愛らしい仕草だったが、鋼の意思でもって首を左右に振った。

 再びむぅ、と唸る彼女から視線を切って大きく息を吐き出す。

 一先ずお金の使い道を考えることで目先のことから意識を反らした。もっとも、そのお金も大金過ぎて頭痛の種になりえるのだけど。

 とりあえず早いところここから脱出してしまおう。そう心に決めて、俺は空々しく乾いた笑いを上げながら、作業が残っていると嘘をついてあてがわれた角部屋に逃げ出した。



 翌日、朝食を食べながら事の顛末をシオンに話すと、彼女はその動いた金額を聞いて固まった後、しみじみと呟いた。


「なんていうか、やっぱりリアさんて普通じゃないんですね」


 物凄く感情の篭ったその言葉に、返す言葉が無かったので顔を顰めつつノーコメントで応対した。でも俺が異常なわけではない。俺を取り巻く環境が異常なだけだと思う。


「兎に角……とりあえずこれでお世話になった分を返せる」

「はぁ……そんなことを気にしてたんですね。別に構わないのに」


 呆れを多分に含んだ苦笑を浮かべつつ、彼女は朝食のパンを口に運んだ。

 ちなみに朝食は黒パンに川魚の身をほぐして入れたスープ、それに野菜サラダだ。やはり若干大味ではあるものの、中々美味い。フェルニアには魚介の類が無かったのでそこもありがたいことだ。


「そういうわけにもいかないよ。いつまでもお世話になるわけにもいかないし」

「……え?」


 パンをスープで流し込みながら、呟いた言葉にシオンが再び固まった。

 何か変なことを言っただろうか? 疑問に思い首を傾げると、彼女は慌てたように何度も頷いた。


「あ、えぇ、そうですよね。でも、その辺りは帰ってお父さんとも話してみないと」

「あぁ、それもそうだね。リムルにいられるのもあと少しだし……残りの日数は適当にぶらつこうかな」


 同意を示しつつ、今後の予定を考える。

ラオ先生には、こちらでの滞在は二週間ほどと伝えてある。既に十日が過ぎ、残すは今日を入れて四日程だ。行き来する馬車の数も限られているので、一度帰ったら暫くはリムルにはこられない。そう考えれば、こちらにいる間しか買えない物もあるのでそうしたものを買いにいくのもいいかもしれない。

 とりあえず昨日の内に銃をしまうホルスターとお金をしまう為の財布は、素材である皮を購入がてら商会の人に手伝って貰って作成してある。

 財布を作ったのは、こちらの世界の財布と言うのは、頑丈な麻袋にお金を突っ込むだけという形式が主流だったからだ。確かにファンタジーっぽくはあるが、それではジャラジャラと鬱陶しくて仕方が無い。

日本で売られている長財布を元にして、本来お札を入れる場所にスリットを作って大硬貨が八枚差し込めるようにした。大金はこちらにしまうとして、後は麻袋を小銭入れとして併用すれば良い。

 ホルスターのほうは西部劇に出てくるようなガンベルトを手本にする。商会の技術者も初めて作るものに四苦八苦していたが、流石はプロである。ベルト部分に予備の弾丸を入れられるところまで、こちらの要望に対し完璧に応えてくれた。


「一応商会を通して幾つか必要な素材を頼んであるけど、やっぱ色々お店見て何があるのか知っておきたいし……シオンはどこか行きたい店とかは無い?」

「えっと、私は……」


 と、俯きがちに彼女が口を開きかけた時、部屋の扉が激しくノックされた。その様子から、酷く切迫した空気が感じ取れた。

 訝しく思いながらも返事を返すと、勢い良く扉が開かれる。


「すみません! こちらに薬師の方がいると伺ったのですが!」


 部屋に入ってきた背の高い男は、開口一番にそう言った。肩で息をしており、ここまで走って来たのだろうということがわかる。

 しかし、明らかに余裕が無い。


「……とりあえず落ち着いてください。確かに薬師はいますけど、まずは事情を」


 男性の肩を押さえ、俺は近くの椅子に座らせた。幸い暴れるなどはせず、促されるままに座ってくれる。

 部屋に用意してあった水をコップに注ぎ渡すと、一息で飲み干して一つ大きな息を吐いた。どうやら少しは落ち着いたらしい。


「それで、何があったんですか?」

「はっ、はい。実は……」


 そうして彼はここまで来た事情を話し始めた。

 何でも彼の息子が原因不明の熱病に掛かってしまったらしいのだ。もちろん彼は町の薬師の下へと息子を連れて行った。しかし最初に言ったところでは原因がわからず、町一番薬師のところに連れて行ってようやく、その病名が判明したのだと言う。

 レーン熱と呼ばれるもので、どうにも現状では手出しができないものらしかった。


「えっと、レーン熱ってどういったものなの?」

「レーン熱は別名鉱山熱とも呼ばれているものですね。一部の鉱石に付着している苔が原因で感染するといわれています。感染力自体は低いんですが、感染すると他の病気を併発させやすくなるので……体力の無い子供やお年寄りだと、危険です」


たまに町に運び出される鉱石に苔が付いていて、離れた町で感染することもあるのだという。基本的に移動中に日差しやら風やらで苔がやられるそうなのだが、今回は不運にもそうなる前に届き、レーン熱にかかってしまったようだ。

 話を聞く限り、どうやら彼の息子は既に他の病をも患ってしまっているらしく、刻一刻と悪化しているのだという。

このレーン熱の怖いところは、こうして一気に病状を悪化させるところにあるようだ。


「それにこのレーン熱の特効薬は少し特殊な素材が必要なんです。鉱山のある町なら常備しているとは思いますが、この町だと恐らく……」

「はい……ないそうです。ですが、他の町から来た薬師がいると聞いてもしかしたらと」


 そう語る彼に返す言葉が無かった。彼が必死になって訪ねてきたのも頷ける。

しかし俺たちが来たフェルニアにも、もちろん鉱山なんて無い。つまり、そうした特殊な薬を持っているわけも無かった。

 俺とシオンの様子に、そのことを悟ったのか、男は力なく俯いた。


「そう、ですよね。いえ、良いんです。まだ商会の方を当たっていませんので、これから当たってみます」


 そう言って彼は立ち上がった。どうすることもできない無力感に、部屋を出て行こうとする彼に声すら掛けられない。


「……少し、いいですか?」


 だから、そこで彼を引き止めたシオンを我知らずの内に振り返っていた。


「この近くでその薬の材料を取れる場所に心当たりがあります」

「本当ですか!」


 シオンの言葉に男が大きな声を上げる。

 だが、そこで俺は彼女の表情が厳しいものであることに気がついた。ゆっくりと彼女が口を開く。


「ただ、問題があります。その場所と言うのがロックボアの生息地なんです」


 ロックボア。体の表面を岩で覆った巨大な猪だ。食性は植物から鉱物、死肉と何でも食べる雑食具合だ。厄介なのは、縄張り意識が強いこと。もし、縄張りにいる生物を見つけた場合、その頑強な体でもって弾き飛ばし、縄張りの外に出るまで追い立てる。

 もちろん、人間がそんなものに体当たりされれば一たまりも無い。


「見分けるのが少し難しいので、薬師の人か専門の知識を持った人が行かないとわからないと思います」


そして更にそう付け加える。

 実際にそうした知識を持つ人間は少ない。多少の薬草知識なら、冒険者と呼ばれる、人々の依頼をこなしながら世界を旅する人たちも知っているが、鉱山くらいでしか感染しない病気の特効薬の知識など、持ち合わせている人のほうが稀なのだ。

 そこまで語ってから、シオンは俺のことを見た。何かを迷うような感じだった彼女だが、俺と目が合うと、強い意思の光をその目に宿した。


「もし、護衛の冒険者を雇って貰えるなら、私が取りに行ってもかまいません」

「ほ、本当にいいのですか? いえ、ですが、その」


 男が目の前にある希望に縋ろうとし、しかしその途中で戸惑うように俺と彼女を見比べる。息子のことがあるというのに、他人を巻き込むことには抵抗があるらしかった。

 一度、俺も彼女の顔を盗み見た。こちらを見る彼女は少し申し訳なさそうだったけれど、どうやら一度言った言葉を取り消す気は無いようだ。

考える。自分はどうしたいのか。

正直、自分には他人を構っていられるような余裕はないと思う。それも下手をすれば、命を落とす内容だ。


「……構いませんよ。俺じゃぁ足手まといになるかもしれないけど、それでも多少は手伝えることもあるだろうし。それにシオンを一人で行かせるわけにも行かないじゃないか」


 それでも肩をすくめてそう言い切った。

自分を助けてくれた命の恩人が、誰かを助けようと決めたのだ。理由としてはそれで十分だ。それに幸か不幸か、戦う武器もできたところだ。怖いけれど、いつかは乗り越えなくてはならない事だと割り切る。

 男はまだ困ったように右往左往していたが、俺たちはそれを無視して採取に向かう準備を始めた。それを見てようやく覚悟を決めたのか、彼は深々と頭を下げた。


「私は、タウロ・タランと言います。この恩は必ず!」


 こうして俺は人生初の冒険に赴くことになった。


とまぁ、ようやく冒険する機会が訪れました。大分唐突でご都合主義ですが。

次回冒険回の予定。

更新日は例によって未定です

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