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異世界での生活3

やはり説明というか、描写が多いなぁ・・・早く、早く相棒的ポジションのキャラを作らなくてはっ!

 一刻も早く目的を達成するため、食事を胃袋に詰め込んだ俺はそのままニコルから約束のものを受け取って部屋を後にした。

 向かう場所は家の裏手。村を囲む柵の付近ということもあり、ちょっとした雑木林になっている。

 俺はここに薪として壊されそうになっていた古い椅子とテーブルを貰って運び込んだ。他にもちょっとした雨除けをつけたり、物を締まっておける小箱なんかも設置した。

 一種の秘密基地だ。けどここを作っている時、少しわくわくしたのは皆には内緒だ。

なにせ今では既にシオンやラオ先生はもちろん、ニコルや町の子供までこの場所を知っていて、時折占拠されていたりするからだ。

秘密でも何でもなかった。


「……さて、それじゃ始めますか」


 少し悲しい気分を振り払って椅子に座る。こういうのは余り引きずらないに限る。

手に持っていた物をテーブルに置き、一緒に渡された胴貨をポケットにしまった。

ニコルに渡されたのは布に包まれているが、ずっしりと重い。布を広げればつるつるとした光沢を放つ金属が二種類出てきた。

 一つは真鍮の塊だ。黄銅とも呼ばれるもので、日本だと五円玉とかがこれで作られている。もう一つは銀。こちらは真鍮よりもはるかに高額のため、大分小さかった。

 ちなみにもちろん無料じゃない。マルテール商隊がこの村に訪れるたびに荷降ろしや荷運び、それ以外にも使い走りや商品の手入れなどを手伝ったことに対する対価だ。

 ニコルの親父さんは恰幅がよく、それに比例するように思った以上に優しかった。

商人に対して持っていたがめついとかそういった悪感情を持っていたことに罪悪感すら覚えるくらいの人だ。

 ちなみに問題があったのはその娘のニコル方だったりした。普段はあんな感じでマイペースな彼女だが、商才はぶっちゃけ親父さん以上だと俺は睨んでいる。なにせ人使いが荒く、その支持が全て的確なのだ。その上で俺は他に乗り込んできていた他の手伝いの誰よりも働かされた。

 まぁ、その分はきちんと支払ってくれているみたいだけれども。

受け取った真鍮の塊は思っていたよりも大きいし、加えて子供のお小遣い程度だけど小銭も貰っている。

 おかげでようやく俺の計画を進めることが出来るというものだ。


「ようやく、第一歩だ」


 呟く。これは異世界に来たと知り、そして魔法という存在を知った時から決めていたことだ。


 元の世界に帰る。目的はただそれ一つ。


 そしてそれを支えているのが一つの持論。と言うよりは可能性だ。

 俺には魔力そのものが無く魔法を使うことが出来ないが、代わりとでも言うように魔法を“視る”力があるらしい。

 あの時隕石もどきに触れた際に広がった、極光色の魔法陣。あの光と紋様が、この世界で魔法が使用される際にも見えるのだ。

 シオンやラオ先生にも確認してみたのだが、二人ともあの光の線を見たことも無ければ、そういった話を聞いたことすらないと言っていた。

 状況証拠だけではあるが、ほぼ間違いは無いと思っている。

 ならば、と考えた。

俺が異世界に飛ばされたのが魔法なら、元の世界に帰る魔法も存在するのではないか、と。

幸い裏技的な感じで魔法を使う手段も見つけたのだ。

 となれば帰るための魔法を見つけるためにも、あちこち冒険しなければならなくなる。

その為の第一歩が……金策だ。

 言いたいことは色々あるし、思うところもあるが、これ、凄く大事です。

 現実とは、本当に非情なのだ。剣と魔法の世界という夢とか希望とか詰まってそうな世界でも、生きるためにお金は必要なのだ。

むしろ日本以上に貧富の差があったり差別があったりするので、余計に世知辛い。ほんともう、剣とか鍛えて最強! とかできたらよかったのに。

 とまぁ思わず遠くを見てしまうような話はこの辺で切り上げて、問題の工程に入ろう。

 まず俺がこの世界で金を稼ぐ方法。それは露天商とブランド品の立ち上げだ。

 本当は上手くいけば一攫千金の金策方法も考え出してあるのだが、失敗する可能性もあるため、まずはフォローが効きそうな方から挑戦することにした。

 俺が今回作るのはアクセサリー。この世界の装飾品は基本的にごつかったり宝石がごてごて盛られていたりと、装飾過多なものが多いのだ。

まぁ、基本的に貴族とかがつけるものなので、当たり前なのかも知れないが、そういうことならこちらはそれを利用するまでだ。

 大衆向けの比較的安価な、それでいて繊細な細工の装飾品の販売。その為にもまずは手に取ってもらい、買ってもらうことが大事だ。

 言うは易し行うは難し。だけどちゃんと成功のイメージは掴んである。少なくとも装飾品を作ることに関しては、問題なくクリアできるだろう。


「ふんふんふーん♪」


 鼻歌交じりで準備を進める。やはりあちらではできなかった魔法を使えるのはなんだか楽しいものだ。

まずはいくつか魔法陣の書かれた布をテーブルに広げる。ついで今日拾ってきた分も合わせて、魔晶石をテーブルに出す。

 この世界の魔法は、どうやらあの魔法陣に魔力を流すことで発動しているようだ。普通の人は自前の魔力を使うのだが、それが無い俺は外部から調達するしかない。

 本来魔晶石は足りない魔力を補う補助アイテムらしいのだが、俺はこれを直接魔法陣にあてがって使用する。

 後はイメージだ。色々と試してみてわかったのだが、明確なイメージを持つほどこの魔法の効果や効率は上昇する。

 何回も練習を繰り返したことが、自然と体に染み付いて行くのと似たような感じだ。

 後は効果を及ぼす規模に影響して消費する魔力や難易度が変わってくるみたいだが、その辺りはまだ詳しくは知らない。

 今回使用する魔法は“練成”。物質に作用して、その形状を変化させると言う魔法だ。残念ながら鉛から黄金を生むような錬金術ではない。

 この世界の人々は曲がった釘をまっすぐに直したり、刃こぼれした部分を一時的に補ったりと、基本的に修理に使用しているようだ。

 魔法陣の上に真鍮の塊を載せ、魔法陣に魔晶石をあてがう。

 練成を使って何かを作るという発想自体は、この世界にも存在している。だが、作るにもイメージが必要になってくる。

 新しいものや斬新なデザインなんていうものは、そう簡単に思いつくものではないのだ。

 俺のいた日本ではこうしたアクセサリーなんてどうやって考えているのかわからないほどデザインがあり、加えて妹が最近年頃だったこともあってプレゼントに何回か贈ってやったこともある。その際に何冊もそういったアクセサリー関係の雑誌を読んだ。

 だからはっきり言ってこの世界では、その辺の奴らに負けない位のデザイン案は頭の中に蓄積されていた。

 加えて今日までに何度もその辺の石材や木材で練習を積み重ねてきているのだ。

 自分に気合を入れて魔法を発動させる。

 塊から一部分が浮き上がり、それが切り離されて指輪の形になる。集中してその表面に模様を浮かび上がらせ、形を整えていく。


「……ふぅ~」


 こうして完成するまでは若干不安だったが中々満足の行く出来だった。

 その後も休憩を挟みつつ、幾つかのアクセサリーを作り出す。

作るのは指輪、ペンダント、ネックレスのトップを数種類ずつ。それからネックレス用のチェーンを作った。

 どれも現代日本で見られるようなデザインで、シンプルながら二つのリングが交差するものや複雑な細工の入ったもの、他にも盾や剣などをモチーフにしたものなど様々だ。

 次に別の魔法陣を取り出す。これには二つの魔法陣が無数の線で繋がったものが描かれている。

 その片方に既に出来上がっているアクセサリーを載せ、もう片方に余っている素材を載せる。

 使う魔法は“複製”。ちなみに元々はこの世界で紙や鉛筆など日用品を量産するのに使われていたものだ。

 ちなみにこの魔法、複製するものをどれだけ把握できているかによって使用魔力や複製具合が変わってくるのだが、今回は全て自分で作ったものなので問題ない。


「あっはっは、らくちん~」


 残っている材料を瞬く間に作り上げたアクセサリーの複製品に変えていく。正直楽しくて止まらなかった。

 魔法陣を覚えるために、村中の職人の家に見学や手伝いに行った苦労が報われると言うものだ。


「よし、後はっと」


 完成したアクセサリー群を傷がつかないようにきちんと布に包みつつ、テーブルを片付ける。

 次にやることには協力者がいる。しかしその相手に相応しい人物は既に決めてあった。

 問題は引き受けてくれるかどうかだけど、そこもあんまり心配していない。

 荷物を持ってラオ先生に尋ねると、目的の人物はまだ俺の部屋でシオンとお茶を飲んでいるという話だった。

 開けっ放しの扉をくぐり、そこでノックする。すぐに二人が振り返った。

 これからのことを考えると、期待感に思わず口角が持ち上がった。


「やぁ、ニコル。ちょっと儲け話を考えたんだけど、乗らない?」

「……へぇ。なんか楽しそうだねー」


 前置きも無く単刀直入な俺の発言に、しかしニコルはにんまりと実に楽しそうに笑った。


読んで頂きありがとうございます。感想、アドバイスはあると助かりますので何かあればお願いします

さて、出てきた魔法の補足でも


魔法:練成

作中で説明したとおり、形状を変化させる魔法です

あらゆる物質を粘土のように自在に変化させられると考えるのが一番近いです

他にも応用で複数混ざった材質を選り分けたりすることができます

この世界の人は修理や鉄の精製などに使っています


魔法:複製

これはそのコピーする元を詳しく知っている必要があります

例えばとても頑丈な剣があったとしますが、この魔法を使う人がそのことを知らずに複製した場合、見た目だけ同じでも頑丈さが大違いの剣になります

基本的に見た目を模造するための魔法です

ですが、そういった『頑丈である』と言った情報や、材質、作成の工程などを知っていれば知っているほど、より近いものが作れます

ちなみに知らずとも魔力を余分に注ぎ込めば勝手に完成度高く複製できますが、効率が凄く悪くなります


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