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ナナツヨの泣かない死霊術師  作者: いちい
泣けない死霊術師と違う世界
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魔法&異世界事情



どうでも良いことですが。

カスターたちのギルド『潜水者の街』。

潜水者の街→diver's city→diversity→多様性。




 




 私が帰れないことを知ってからしばらくして。


 私は宿の一室で、ディルに話を聞いていた。

 内容は主に、魔法のこと。


「___つまり、魔法には、基本3種類あるんだよ。

 どれも神の力に由来するんだけど、どの神に属するかが違うんだ。


 神聖魔法は、秩序の神からで、神が気に入った人間にだけ使える。

 どんなに信仰心が強くても、使えるとは限らない。

 論理魔法…魔法っていったらこれが一番有名なんだけどね。

 これは、混沌の神から。

 努力次第で誰でも使える、一番汎用性が高い魔法。

 現象が生じる原理を理解して、それを魔力で補って再現するんだ。

 最後に、精霊魔法。

 これは、自然の神の力に属する。

 自然から生じる7属性の精霊と契約して、魔力を対価に行使する。」


 魔法については、よくファンタジーであるような典型的な分類だ。

 説明を聞く限り、ここでは魔法とは、神の力を借りて使う、ということか。

 しかしそれにしても、3柱の神の性格の違いが露骨だなぁー。

 なんだか、秩序の神は物凄く感情的なのに対し、混沌の神はまさに来るもの拒まずな印象だ。

 そう考えると…自然の神は、中立…?


「死霊術や召喚術はどう分類されてるの?」


「死霊術は混沌の、召喚術は秩序の神に属するから、それぞれ論理魔法、神聖魔法の派生だって考えられてるよ。

 他にも、精霊魔法の派生としては歌唱魔法とかがあるんだ。」


「か、歌唱魔法…?歌でも唄うとか?」


 お神楽みたいなものを想像する。

 頭の中で、緋袴を穿いた巫女さんが鈴をしゃんしゃんと鳴らしながら、くるくると回った。


「うん。吟遊詩人(バード)十八番(おはこ)だね。踊りなんかで発動させるツワモノも時々いるけど。」


 だから…と、彼は前置きする。


「帰りたいならさっき言った通り、魔法陣を解析するしかないと思う。

 神聖魔法の中でも失われた魔法だから誰も術式なんか知らないし。

 論理魔法で解析すれば、もしかしてって感じかな。

 まあ、焦ったってどうしようもないよ。

 幸いボクたちはけっこう顔が利く方だから、もしナミさえ良ければ、ついてくれば手がかりを得る助けぐらい、皆してくれるはずだよ!」


 ディルの言葉はうれしかったけれど、私は復讐を忘れたわけではない。

 当面の目標は、力をつけることだ。

 あの時、私は一度死んだ。

 帰れるのかどうかはまだ分からない。

 だが、必ず私の人生を狂わせたツケは払ってもらおう。


「ん?…ナミか。」


 私が思考に耽っていると扉が開き、廊下からカスターが現れた。


「私たちは予定通り、現在の我々の拠点がある隣国に移動しようと思っている。

 貴女はどうするのだ?」


 ディルとカスターの視線を浴びながら、私は深く首を垂らす。


「私ついて行きたい。

 …お願いします。もちろん、道中は私も戦うから。

 お荷物には、ならないつもり。」


「…決意は確かなようだな。」


 頷くカスターの隣で、ディルは椅子から立って飛び跳ねている。


「やったぁ!

 これで異世界の知識、聞き放題だ!」


 私はそれを見て…微笑んだ。


「…お手柔らかに頼むよ。」









 私たちは翌日、宿を発った。

 3人で隣国の、水の国と称されるパティエンティアへと。


 道中モンスターが出現したこともあったけれど、私はディルに死霊術の基礎、論理魔法を幾つか教わりながら、進んでいった。


 危なげない、余裕を感じさせる剣戟の音が、緑の鮮やかな森に響く。


「ナミ、今だよ!」


 私のそばに控えるディルが言った。

 私たちは今、私が死霊術で使役するモンスターを求めて、森でアクアキャットを狩っている。

 怨念に魔力で現実への影響力を持たせるのだと場所をかなり選んでしまうため、死霊術師は大概1体は死体をアンデット化したものを従えるらしい。


 3体の群れだったのだけれど、2体は失敗したときのための予備としてカスターが引き受け、残りの1体を私が相手している。


 アクアキャットとは猫型の中位獣系モンスターだ。

 パティエンティアには水属性のモンスターがしばしば出没する。

 その内の一種だ。


 灰色の毛並みに薄青の瞳の、大きめのロシアンブルーによく似たモンスターなのだけれど、体に酸性の水のリングを纏っており、触れた物質を溶解する。

 反面、すばしっこい動きをかいくぐってリングの隙間から生身を攻撃すれば、一撃で倒せてしまうという。


 ディルからもらった使わない装備の短剣を構えて、アクアキャットと対峙する。

 不意にアクアキャットが跳躍した。

 狙いは、私の頭か…?


 私は死に物狂いで一撃を避け、アクアキャットの脇腹に短剣を突き立てる。

 カスターに習ったばかりの付け焼き刃の技術ながら、短剣は深くまで突き立った。

 もちろん、普段の私にそんなことができる身体能力はない。

 現在、私には、3人がかりで腕力強化(アタックブースト)敏捷強化(スピードブースト)器用強化(テックブースト)防御強化(ディフェンスブースト)魔法防御強化(マジックディフェンスブースト)と、これでもかというほどに支援魔法がかかっているのだ。

 ここまで来るともはやドーピングの域だろう。

 聖騎士のカスターに支援魔法が使えるのが意外だったけれど、本人曰く聖騎士とはひたすら盾になって味方を支援するものであって、補助・回復系も多少は嗜んでいるとのこと。


 ちなみに私は支援は支援でも、能力低下系しか使えない。

 死霊術師の適性だと、系統の近い呪術系の方が相性が良いそうなのだ。

 例えば、能力低下、持続ダメージ、状態異常付加。

 …ことごとくダークサイドすぎる。

 これを決めた存在がいるなら、文句をつけてやりたいところだ。


 しかもそれだけでなく、この短剣はディルから借りたもの。

 使わないから借すと言っていたけれど、刀身は真っ黒で、不思議と手に馴染む。

 そんじょそこらで買えるものではない。


 アクアキャットは1、2度痙攣すると動かなくなった。

 急がなければ。

 このまま放置しておくと、モンスターの死体は消えて、魔晶石とドロップアイテムになってしまう。


 モンスターを倒すと、素材系、例えば鱗、皮、角などと、魔晶石と呼ばれる石が残る。

 魔晶石はモンスターの強さによって大きさが異なり、換金できる。

 素材は文字通り、武器防具や、物によっては富裕層のアクセサリーになるらしい。

 モンスターの死体の一部なんて、気持ち悪くはないのかな?







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